第4話 尼崎リベンジ

 次の日、また地獄の練習が戻ってきた。しかし、不思議と以前の練習よりも体が軽い。いつもより少しだけ早いスピードで走っていると、少し前の方でへばっていた尼崎に初めて追いついた。尼崎はラストスパート体力的にも限界で減速しておりその機を逃さず、僕は尼崎を追い抜いきそのままゴールを迎えた。


「優…………お前……俺を…………ぬかし…………やがったなぁ」


 僕に追い抜かれてのに気づいて限界からスピードを上げた尼崎は、息苦しそうに僕をにらんでくる。ゴール近くにいたコーチが近寄ってくると。


「おー初めて黒川がビリじゃなかったのか、今回の罰ゲームは尼崎だな、今回の罰ゲームはそうだな、もう三周くらい走っとくか」


 さすがコーチこれだけ疲れている尼崎を見ても容赦なしにきつい罰をあたえた。


「はい!」


 尼崎は言われた通りの罰ゲームを全力で行っていた。


「よかったな優、必ずお前が罰ゲームやっていたのに。まさか尼崎もお前に負けるとは思ってもいなかっただろうなぁ。何か特訓でもしたのかよ」


「いや何もないけど…………」


 実際僕には、どうして体が軽かったか本当に心あたりがなかった。


「そっか…………」


 ようやく午前練習が終わると、いつもどうりクタクタで部室に戻った。部室で少し休憩していると


「お前らどんな今どんな感じ、俺はもう次のOFFに遊びにさそちゃったよ」


 さっき死ぬほど疲れていた尼崎はすっかりと回復し、いつもの調子いい状態に戻っていた。


「俺はとりあえずRINEで会話してるかな」


 さすがクールな九重、開始三日目にして着々と準備を進めている


「RINE交換してそれからなにもしてないや」


 省吾は、二人と違ってまだ交換しただけであったが、余裕な表情であった。


「じゃあ、優はなにかしたか?」


「僕?まだなにもしてないや」


 そもそも僕は本気でこのゲームをやっていないため、RINEの交換やましてや遊びの誘いなどなんの行動もしていなかった。


「やっぱ、そうか優はなにもしてないか、そうかそうか。なあ今日は午前で練習終わりだったよな」


 尼崎はなにか企んでいるのかにやにやしていた。


「うん」


「じゃあ、午後俺らでお前の手伝いをしてやるよ」


「…………へ?」


 練習が終わり九重は用事があるらしく早く帰ったが、三人は近くのコンビニに立ち寄った。


「よしまず恋愛の基本はコミュニケーションだ!」


 早速尼崎がなにかいってきた。

 

「そうだ……ね……」


「優もう言いたいことわかるな!RINEを追加しろ!」


「いやいやいやいやいや!無理だって、今まで自分で女子にRINE聞いたことないんだよ!」

 

 僕はこれまで誰も好きになったことがなく、連絡先も自分から聞いたことがない。そんな恋愛初心者がどうやって交換すればいいんだよ。尼崎はちかよってくると僕のスマホを奪い取ろうとする。うまい具合にかわしたが予想外のところから手が伸びてきてスマホを奪い取られた。


「省吾……お前」


 振り返ると、省吾が面白がって見せつけてくる。


「尼崎ー!パス!」


 僕から奪い取ったスマホを尼崎に投げ渡し。尼崎はしっかりキャッチした。スマホの画面はさっき僕が触っていたままであるためロックがかかっておらず尼崎は普通に操作してRINEのアイコンを見つけると、クラスのグループから鴻巣さんを勝手に追加した。


「おま…………本当にやったの」


 尼崎はスマホを投げて返してくるともう後戻りできない状態であった。

 

「ほらほら、もう追加しちゃったんだから、何かおくらないと気持ち悪いやつだと思われるぞ」


 尼崎はさっき僕に負けた悔しさをここではらしたらしく爆笑している。


「え~~~~」

 

 クラストップの女子に嫌われたら、イコールクラス全体に広がる。それだけが、絶対に嫌だ。アイコンをタップしてとりあえずメッセージを送ろうとおもったが、いきなりのことで動揺してしまいメッセージアイコンの隣の受話器のアイコンをタップしてしまった。すると画面が呼び出しの画面に変わった。


「えっ……えっえっ、これどうなったの!?」


 慌てた僕を気にかけて、省吾がちかよって画面を確認すると


「おいお前これ、電話かけてるぞ!」


 省吾もさすがに驚いたのか、焦っている。僕も焦り慌てて電話をきった。


「優お前いきなりなに電話かけてんだよー」


 尼崎は腹抱えながら笑っていた。


「お前が勝手についかしたからだろ」

 

 直後スマホから着信音がなった。


「やばい鴻巣さんから電話きたんだけどどうするどうする」


「早くでろよ、優から電話かけたんじゃん」


 恐る恐る電話に出れスマホを耳元に近づけた。


「もし……もし……」


「ごめんねーさっき電話でれなくてーいきなり黒川君から電話かかってくるからおどろいちゃったよ」


 電話越しではあるが初めてクラスのトップと会話した。


「あっ……えっと……いきなりRINE追加したんだけど、ごっごごめんなさい!」

 

 鴻巣さんは目の前にいないのに90°に腰を曲げて謝っていた。


「全然大丈夫だよー、えっとなにか伝えたいことあったの?」


「いや……あの……RINEを追加したことだけを伝えたかっただけです」


「そうなのね、うんわかった。じゃあまた学校でねー」


 こんな気持ち悪い電話がかかってきたのに、鴻巣さんは嫌そうな反応はせず会話をしてくれた。


「鴻巣さんめっちゃいい人だった」


「さすが、鴻巣さん一番人気だけあって男子からのいきなりの電話になれてるね。それにしても優きもかったな、めっちゃごもってんじゃん」


「しょうがないだろ」


 ほんと今回は鴻巣さんに救われた。それから、尼崎にアイスをおごらせて、家路についた。

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恋は嘘のはじまり @kamekichi58

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