それは小さな

織祈

往復交通費で会いに来て

それは小さな願い事

わがままな願い事

神様どうかこの願いを叶えて


「久しぶり」

「最近多いんだよね」

「なんだそれ」

「なんだろう」


「面倒じゃない?」

「全然」

願ったり叶ったりだよと彼女は笑った



「いつだかわたしに言ったじゃない?」

「なにか言ったっけ?」

「辛くなったら自分を思い出してほしいって」

「そんな大層なこと、言ったかな」

「言ったよ。思い出して、なにもできないけどって。」

「なにもできないんじゃ、役立たずね」

「いいのよ。だってわたし、それを思い出してあなたに会いに来たんだもの」

「会ってよかった?」

「往復交通費くらいにはなったわ」

「ここの紅茶代は?」

彼女を見つめていた視線をすっと下げで、無言のまま紅茶をずっと啜った。

「それは割り勘」




「出会ってきた人たちみんなにわたしを思い出してほしい。1秒でいい、思い出して、あんなやつもいたなって死ぬ前に会っておきたいなって、思ってほしい」


それはとてもわがままな願い

けれど誰かを救う願い


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それは小さな 織祈 @nogii

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