桜と椛が出会った日

ユキ

桜と椛が出会った日


お父さんとお母さんがまだ子供の頃は春と秋っていう季節があったらしい


春と秋はとても過ごしやすい季節だったそうだけど、私が産まれる前に起こった異常気象で季節が夏と冬しか存在しない世界になったそうだ


そんな世界で私は生まれた


私の名前は桜、まだ春があった頃によく咲いた美しい花でお母さんが好きだったらしい


そこから取って付けくれた名前が桜


私は結構気に入ってる


だってお母さんが好きだった春に咲く花から取って名付けてくれたんだよ?最高じゃん


桜っていう花自体は写真でしか見たことないけど、世界そのものがピンク色になった感じがしてとても綺麗だった


その桜をもう見れないと思うと少し寂しい



------------------



お父さんとお母さんがまだ子供の頃は春と秋っていう季節があったんだって


春と秋は似たもの同士でとても過ごしやすい季節だったらしいよ、だけど私が生まれる前に起こった異常気象で季節が夏と冬しか残ってない世界になったそう


そんな世界で私は生まれた


私の名前は椛、まだ秋があった頃によく見れた景色で、お父さんがとても好きな光景だったらしい


そこから取って付けてくれた名前が椛


私は結構気に入ってる


だってお父さんが好きだった景色から取られた名前だよ?気に入らない訳が無い


椛っていう景色自体は写真でしか見た事ないけど、オレンジがかっててとても美しかった


だけどその景色をもう見れないのはとても悲しい



------------------




高校入学の夏



校内放送

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これより新入生歓迎の回を始めたいと思いますので、体育館にお集まりください」


学校に集まっている新入生を歓迎するための体育館での催しが終わり、昼の自由時間が始まった


私は少し風に当たりたくて体育館を出たすぐ横の中庭に出る


するとそこには私と同じ新入生だろうか?少し木陰になっている場所で涼んでいる女の子に声をかけた


「少し隣いい?」


するとその女の子がびっくりした表情のまま答えた


新入生であろう女の子

「え?ああ、どうぞ」


女の子

「それでは遠慮なく」


女の子は躊躇なくその子の隣に座る


新入生であろう女の子

「.......」


女の子

「.......」


新入生であろう女の子

「えっと、一応聞くけど私たち初対面だよね?どこかで会ったことあったっけ?」


女の子

「んーん、完璧な初対面だね!」


そう答えた女の子に対して新入生であろう女の子は笑いながら答えた


新入生であろう女の子

「ふふ、あなた面白いね!普通、初対面の相手に突然、隣いい?なんて聞く?」


女の子

「私は結構聞くよ?あと何故か分からないけどあなたのことが気になったから声かけちゃった」


女の子は笑いながらそう言った


新入生であろう女の子

「ふーん、まぁいいわ、ところであなた新入生?」


新入生であろう女の子がそう聞いてきた


女の子

「そうだけどどうしてわかったの?」


新入生であろう女の子

「上履きの色が同じだったから〜」


新入生の女の子は上履きに指をさしながら答えた


女の子

「あ!ほんとだ!一緒だったの気が付かなかった」


新入生の女の子

「あなたって結構鈍感なのね」


お互いに笑いあったところで女の子が切り出した


女の子

「そういえばまだ自己紹介してなかったね!私は桜!お母さんがつけてくれた大切な名前なんだ」


桜は誇らしげに自分の名前を語る


新入生の女の子

「とてもいい名前だね!桜って確か今はもうない春に咲いた花の名前だよね?」


新入生の女の子がそう答えた


「そうそう!よく知ってるね?私が生まれた時、家のお母さんが昔好きだった花からとって付けてくれた名前なんだよね」


桜は嬉しそうに自己紹介をした後、新入生の女の子に話を振る


「さてと!私の自己紹介も済んだことだし、次はあなたの番!さぁ!どうぞ〜」


新入生の女の子

「そうね、あなただけに名乗らせる訳には行かないよね」


そういうと新入生の女の子も自己紹介をし始める


新入生の女の子

「私の名前は椛、お父さんが付けてくれた大切な名前よ」


「椛...とってもいい響きだね、それに椛は昔あった秋によく見られた景色だって前に聞いたことがある」


桜がそう答えた


「うん、私が生まれた時にお父さんが好きだった景色からとって付けてくれた名前」


椛が自己紹介をし終わると、桜がこう言った


「ねぇ、自己紹介聞いて思ったんだけど、私たちって結構似た者同士じゃない?名前のつき方とかも似てるし」


「ふふ、そうかもね」


再びお互いに笑い合う


そして話し込んでいるうちにいつの間にか昼の終わりを告げるチャイムがなった


出会いは突然訪れる


それはまるで春に咲き最後は美しく散る桜のように...


それはまるで秋に色づき最後は枯れて儚く散る椛のように...


だからこそ出会いとは美しく儚いのである

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

桜と椛が出会った日 ユキ @SnowDome

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ