第44話 『寛ぐ』とは……?

 自身の備わる機能の異常性に気づいてしまったカエは、つい考え込んでしまっていた。



「マスター……? どうか致しましたか?」

「——ん!? あぁ…何でもないよ……フィー……」

「——? そうですか………ッあ、今からお茶をご用意しますね。マスターは寛いで待っていてください」

「ああ……お願いするよ……」



 しかし……こんな時に決まって、顔を覗き込んで来るのはカエのサポートのフィーシアだ。

 至近距離に覗き込まれ……驚いて距離をとる——ここまでが一連の流れなのだが、今回に限っては至って冷静な対応を見せるカエ……フィーシアの扱いにも徐々に慣れつつある様子が窺えた。

 そんなフィーシアに、カエは問題が無い事を伝えると、彼女はインベントリー内から茶器を取り出しお茶を入れ始める。

 それを確認すると同時に周囲へと意識が霧散し始めると、カエは先程まで頭の中にあった疑惑を一旦打ち切りにする事にした。

 結局、自身に備わった能力がどうあれ、今考えても仕方ない。それよりも、折角フィーシアが“寛ぎ空間”を用意してくれたのだ——それを享受するのが礼節であろう。

 一旦この件は考えるのをやめて、取り敢えずカエは目の前のイージーチェアに腰を落ち着けた。 

 内装デザインで家具が浮いている事も指摘しても、今カエが必要としているものは“癒しだ”。

 それなら、より寛げる方法を取るに越した事はなく、デザインなんて二の次で今は必要としていない。であるなら、調度品を引っ張り出したフィーシアには驚いたが、コレが『寛ぎ』を体現するベストな選択——勿論、この部屋を引き払う時には元の状態に戻しておく積もりだが……ただ、騒ぎになると面倒であるため、この部屋の状態が人目に付けない事の方が良い。


 その点に関しては注意する必要性が……



 トテトテトテ——ッバン!!


「カエおねーちゃん!! フィーシアおねーちゃん!! ご飯の用意ができたってママがね〜〜言って……いたか………ら……」



 ……と、考えていた矢先に速攻で人目に付いてしまう。



「ふぅああ〜〜……なにコレ〜〜!!」



 いきなり部屋の扉を打ち開いて突撃してきたのは、この宿屋を営む夫婦の娘【ミューリス】だ。

 この少女は、カエ達を宿屋まで案内してくれた恩人的存在なのだが、その過程で秘密にしておきたい“光学迷彩”をミューリスに見られてしまっていた。

 そしてまたしても……こっそり? と——とはちょっと違うが、様変わりした一室を見られてしまったことになる。

 果たして宿屋の娘として、この子は一体どんな反応をするのだろうか……?



「——ッわぁあー!! すごいすご〜〜い! 部屋が変わってる〜♪」



 急に変な声を上げたかに思えたが、次の瞬間には彼女の顔からは好感が溢れ出たかの喜色満面さを顕にし、部屋の瞬間模様替えイリュージョンに嬉々として驚いた。



「ベットも……ふぁあ〜〜ふかふか! ——ッとぉ〜う!! ははは……ふかふか〜〜!!」



 そしてその部屋で1番目立っていたであろう、フカフカ高級羽毛布団のベットに近づき、衝動的にベットへダイブ——ッボフンッボフン、と音を立てて飛び跳ねては大喜びではしゃぎだした。

 実に子供らしく、可愛らしい反応に、それを見たカエは思わずホッコリである。

 勝手に家具を入れ替えたことで、何か言われるかとも思ったが……そこは幼さ故か、変化に興奮して大いに楽しんでいる様子だ。



「マスターどうぞ、カモミールティーです」

「——ッん……ありがとう〜フィー」



 と——ここで、フィーシアの準備が整い、お茶を手渡される。



「……ッ——うん! 美味しい……」

「……マスターのお口にあったようで、何よりです」



 そのまま口にお茶を含むと、口内全体にカモミールの独特な香りと苦味が広がり、気分が落ち着く。まったく……フィーシアは良い仕事をしてくれる。実に良い癒しである。

 と、先程から凸り少女には、不自然なほど触れていないのだが……既にカエは全力で寛ぐ方針を固めてしまった為、ちょっとやそっとではブレない。ブレイクタイムに突入してしまっている。

 カエは別に子供が嫌いな訳ではなく、寧ろはしゃいで飛び跳ねる猫耳少女の傍観も一種の“癒し”の一つと捉えられなくも無い。


 ただ、そんなミューリスを見ていると……



「あれ? そういえばフィーって、ミューちゃんに対しては怒らないんだね〜?」



 部屋ではしゃぐミューリスの姿に、フィーシアが憤るのでは——? と思ったのだ。

 しかし、フィーシアを観察してみてもそんな素振りを見せていなかった。

 彼女の性格なら子供だから、どうこう——とは言わない気がする。それに、ギルドや、ストーカー男に対しての反応を知っている反面、この状況に怒り出しても不思議ではないと思ったのだが……



「彼女は、マスターの素晴らしさを分かっている“良い子”です。ですので、ちょっとやそっとのことでは不問としてあげましょう」

「——ッへ……何それ?」



 カエには何とも理解不能な答えが返ってきた。彼女の中ではカエのことが全てなのだと言わんばかりな発言。


 カエをすごいと認識=良い子。


 カエには、ちょっと何を言っているのか分からなかった。



「ねーねーカエおねーちゃん! この部屋って——どうやったの〜〜さっきはこんなんじゃなかったのにー!?」



 そこで、ベットで飛び跳ねてたはずのミューリスの方から質問が飛んで来る。今のミューリスは行動を一旦中断してはいるが、彼女の状態がまだ興奮状態だということが分かる。その証拠に彼女の猫耳が——ぴょこぴょこ、と激しく反応している。



「——ッ……えっとねぇ〜〜…………ま、魔法だよ〜〜(裏声)」



 ただ、そんな困った質問にも——ここは動揺せず、即答してみせる。大体、このようなパターンは「魔法」と言っておけば問題無いであろうことが分かっているからだ——と言うよりは、カエはもう思考の殆どでは考える事を放棄しているのだとも言えた。



「魔法ってこんな事もできるの〜〜!? カエおねーちゃんは、と〜てもすごい魔法使いさんなんだね!」


「ははは……そうだね~……」



 と、そんなミューリスの無垢な瞳が、カエには眩しく映る。



「……………」

「……あの〜……フィーシアさん? その〜…… “ほらね”って言いたそうに、こっち見つめるの……やめてくれませんか?」

「……………ほらね(ドヤッ)」

「……………………」

「ふふふ……」



 そんな、おバカなやり取りも有りつつも——また、一口お茶を啜っては思考を放棄していく……なんとも可笑しな である。


 と、そんな中で——



「——ッ……そういえば……ミューちゃんは何しに来たの?」



 ベットではしゃぐミューリスは何故ここに来て居るのか——? カエは疑問を少女に投げかけた。

 確か、部屋に突入した段階で何事か話していた気がしたのだが……



「——ッふぁ!? あ〜と……えっ〜とね……ママがね、ご飯の用意ができたから、呼んで来てってぇ——ッぁあ!! そうだ他のお部屋にも、言いに行かないと!」



 ミューリスは、はっ——と驚きベットから飛び退く。どうも大切なお手伝いの途中だったらしく、その事を思い出したようだ。女将のミュアンが、夕食の用意ができ次第、声を掛けると言っていた。恐らくそのことなのだろう。



「私、行かなきゃ! ママに怒られちゃう〜〜!」



 そして、ミューリスは大慌てで扉の方に駆け出す。



「——ッあ! ちょっと待って、ミューちゃん!?」



 が、カエはそれに待ったをかけた。



「——ッふぅえ?」


「あの……この部屋の事は、ナイショにしてほしいな~って……私達だけの秘密にしてくれないかなぁ〜って……」



 カエは人差し指を口にあて、ミューリスには秘密にするように釘を刺した。

 子供に対してだと、どうしても一抹の不安を禁じ得ないが……言うだけ言っておいた方がまだマシではあろう。



「……ッう……うぅ〜〜ん〜〜? ………うん! 分かった!!」



 元気なお返事が何とも可愛らしいが……返事の前の“唸り”と“間”は一体……


 それにはどうも、カエの不安が消えない。



「じゃ〜あたし、行くね? またね〜おねーちゃん! 今度はもっと、い~〜〜ぱい……まほう! 見せてね!」


「——うん? ん…うん……こ、今度、ね〜……」


「ふふふ……約束だよ! バイバイ!」

 


 そう言ってミューリスは去っていった——

 

 子供の頼みは断りづらいのか……思わず、果たすとも知れない約束までかわして……

 カエの抱えている悩みは兎に角多い。そして、どうやら悩みのタネの1つに、今し方扉から出てった純真無垢な“あの子”との約束も悩み筆頭として軒を連ねる。



 頭の痛い案件だ。

 


 (——不安だな〜……)



 そう脳裏で呟くと……カエは再び、手にしたカップを傾ける。



「……………フィー、おかわり……」 

「はい、マスター」





 ここで、問題解決とは直接関係ないのだが、補足を……


 『カモミール』のハーブには鎮痛作用があり——頭痛、神経痛、生理痛を和らげ、炎症を抑える抗炎症作用にも期待できる。

 ここ最近直面する問題、事件、人物……多岐に渡りカエにとっては、と〜ても頭の痛〜〜くなる事案の数々……

 

 フィーシアは、もしやコレを気にして………


 だが……だとすればだ、これって………“皮肉”……? 



(ま、まぁー! フィーシアがそんな事思うはずない! そうに違いない! はず……)



 心の中で自身にフィーシアの無実を強く言い聞かせ——彼女がこの時の疑問の答えは永遠に知ることはない。




 

 そして、その後は——


 

 特にコレと言って特筆する出来事は起こらなかった。


 一階の小ぢんまりとした食堂で夕食を食べたのち、部屋に戻ると——今日あった出来事の総括と考察……そして、明日の行動をカエとフィーシアで軽く話したのち……

 


 床へと就いた。





 転生して2日目——

 

 本格的に街へ進出、人との接触を図ったのは今日になってとなるが……カエは困った事に、本当に多くの出来事、災難に見舞われてしまった。

 それは、もう目まぐるしいほどに……まるで、ゲームプレイ中にイベント、メインストーリー、サイドストーリーを複数抱えて同時に処理するかのような状況と言えば良いのか——?

 いくら何でも、これほどまでにイベントの応酬に会うとは、予想外にも程がある。もう呪われているのではと思えるほどに……

 もしかすれば、女神ルーナに対して心の中で悪態をついたバチにあったのかも知れない。


 だが……そんな、事は今更——


 それよりも、今の状況をどうするかが肝心。起こってしまった事をとやかく言っても仕方がない。

 しかし……何も悲観する事だらけと言う訳ではなく。当初のカエの目的は、街を目指す事だった。これに関してはこのエル・ダルートに無事に入ることもでき、尚且つ本日の宿屋を見つけるにまで至った。

 最悪、街や人に出会うのには何日も掛かるのではないかと、思えたぐらいだ。

 その点に関して言えば、運に恵まれていたと言えよう。

 

 では、今後の方針をどうするのか——?


 当初、このエル・ダルートの街ではもう少し情報とお金を集めておきたいと考えていた。しかし、ここで問題視されるのが『カエが見舞われた災難』となってくる。

 ギルドでの強請り女との一幕……それと喫茶店でのストーカー男の告白劇……と、それらを目撃した人々——と……少なからず、目立つ行動を取ってしまったのはカエにとって不本意であった。

 結果的に逃げ出してきてしまっている訳で——明日以降、街の中を探索するとなると、今日の出来事の関係者と会う恐れがどうしても懸念されてしまう。特に、“強請り女”と“変質者(アイン)”にだ。それでいて、正直に言うとこの街に居づらく感じてしまっている。

 本来なら、ギルドで数点毛皮を売って、様子を確認してから、後日再び残りの毛皮を売りに出して、旅の資金を確保。その折で情報を集めてから別の街に立つのがベストではあった。

 しかし、今の状況ではその方法は悪手であるとしか考えられない。

 まず、“グリーンウルフの素材”……コレが思った以上に高価なものであったと言う事——

 ここまででカエの感じ取った金銭感覚というのは大体……[(日本円で)金貨:一万円 大銀貨:千円 銀貨:百円]といったところだ。それと恐らく日本に比べて若干物価が安いのではとも考えている。

 それを踏まえて、グリーンウルフの毛皮は一頭で金貨1枚。つまり約一万円相当……そして、グリーンウルフの素材は何も毛皮だけにあらず——牙だったり、爪だったり、何の物質でできているとも分からない“魔石”なる石だったりと……一頭丸々売るとなると金貨一枚では済まないのではないかと思えてしまう。それをただの旅人だと語る人物が気軽に何十頭分も売り出していいのか正直分からない。それに、売るとなると……どうしてもギルドを訪れる必要がでてくる。

 カエは今日の出来事からこの街のギルドにはもう二度と訪れるつもりがない。よって、そもそも素材が売りに出せない。第一、ギルド嬢のシェリーの話しを聞いてしまっているので、ギルドを信用できないのもネックだ。

 別の所で売るにしても、その情報を得るには街を歩いて聞いて回る必要がある。そうすれば要注意人物に出会う確率は当然高くなる。

 これらの観点からしてみると、これ以上この街での目立った行動は慎むしかない。最終手段、若干の情報収集ののち早急にこの街を後にするべき——これが、フィーシアと話した最終結論となった。

 情報については、この宿の女将ミュアンに聞けば、近隣の街や村の大体の距離と位置ぐらいは分かるはず……


 よって、明日の方針は『無理せず情報収集』最悪の場合は街を出るとした。


 そう何度も不運とは重なるモノでは……逃げ道もしっかりと用意している。なら、何も難しい事は決してない。

 

 カエはそう方針を固めると、明日がより良い1日である事を願いながら瞼を閉じ……意識は、今日を後にする。


 カエの異世界の旅は始まったばかり……悲観するのは、まだ早すぎるのだ。




 だが——




 物事では、「煩雑には至らない」と希望を、口に——思考に——顕とせれば、大方……噂は、現実へと昇華する傾向にあり——



 つまり……どういう事かというと……



 “旗”が……立ってしまう……という事……



「スースー……」



 静かに寝息をたてて、心地よく眠りに着くカエは、まだ知らない。



 明日以降にも——更なる厄介事に見舞われてしまうという事を……



 まだ……知らない……








 ——翌日——



「——起きて下さい、マスター……」



 カエは、覚醒し始めた意識に対してフィーシアの声が刺激を与えたことにより、目を覚ました。



「……んん? ——う〜ん……お、おはよう、フィー……」 


「はい、おはようございます。マスター……」



 その瞬間のカエは、若干の眠気が残るものの……気怠さは一切感じていなかった。これは寝具のおかげだろうか——? フィーシアの家具の急遽取り替えイリュージョンには驚いたが、結果——その行為は正解だったと身を持って感じ得た。

 そして、カエは一晩を快適に安眠できた事実を実感しつつ、上体をベットから起こそうとする。


 だが……


 彼女は不調こそ感じないが——何やら体に伸し掛かる重さがある事に気づく。



「……ッ——何してるの、この子……?」

「………スースー……むにゃむにゃ……」



 上体を起こした所で、目にしたものは布団の上に丸まったミューリスの姿である。いつの間にか、この少女は部屋に侵入した挙句、カエの上に乗っかる形で寝入ったようであった。



「……むにゃむにゃ……あー…おねーちゃん……コソコソ隠れて………ズルい……むにゃむにゃ……」



 お客の部屋に勝手に入り込むのはどうなんだ? と思うものの、気持ち良さそうに寝息を立てる姿は可愛らしくあり、起こす気は躊躇われたカエ……

 と、そんなミューリスは何やら寝言を呟いている。



「隠れているのは……思考に疾しさを兼ねてるの……むにゃむにゃ……利己的な思想を捨て……慎みをも持って……私にも……教えて……見せて〜むにゃ〜〜……」



 この子は、どんな夢を見ているのか謎だが……所々に忍ばせる単語は少女の口から出るにしては可愛げの無いものばかり……夢の中のカエはミューリスに叱られているのか? いったい子供とは、どこで言葉を覚えるのだろうか……?



「マスター……申し訳ありません。本当はもう少ししてから、起こすつもりでしたが……どうやら、マスターにだそうです」

「ええ……? 俺に……お客……?」



 だが、フィーシアはそんな眠り少女に触れる事なく、話を切り出してくる。まるで、居ない者のような態度で……

 「少しは触れてくれよ」とカエは思うものの、それ以前に『お客様』とのフィーシアの言が気になってしまい、意識はそちらへと向く——



「先ほど、この旅館女将ミュアンより“マスターを尋ねて来た者がいる” ——と事を預かりまして……私では判断しかねた次第です」

「尋ねて……来た…者……」

「はい、マスターを起こしてしまうのは心苦しかったのですが、判断を仰ぎたく……」

「いや……フィーは正しいよ。ありがとう相談してくれて……」

「いえ……マスターの寛大なお心に感謝します」

「そんな大袈裟な——まぁ、そんなことより……一体誰が——」



 フィーシアの話しを聞いた瞬間、カエの中で警戒心が生まれる。

 

 カエを尋ねて来た者とフィーシアは言うが、カエ達がこの街を訪れたのは、つい昨日のお昼直前……知り合った人物なんて数える程しかいない。

 それに、情報も早すぎるのも気になる。この宿に転がり込んだのも偶然でありそれも昨夕の事だ。

 ピンポイントでカエ達を探し出すとなると、どうも来訪者の異常な執着心が感じられてならない。

 それが、一層カエの警戒心を強固なものへと変質させる。

 まだ早朝だと言うのに……また、厄介ごとか……? とため息を吐きたい気分である。


 

「うーん……仕方ない。ちょっと確認してくるよ」

「——ッでは、私もお供します」

「うん。お願いするよ」



 だが、宿屋に対して迷惑が掛かる為、この件を放置する訳にもいかない。

 取り敢えず、来訪者の正体を確認しない事には始まらないと判断。最大限の警戒を持って当たる事を決めた。

 そのため、フィーシアの同行もカエは快く認める。


 そして……



「——マスター? その子も連れて行くのですか?」

「……スースー……」



 その後、手早く簡単には身支度を整え、部屋を出ようとするカエ——

 ただ、彼女の背中には、寝息を立て起きる気配を微塵も感じさせないミューリスの姿があった。



「うん。ついでにミュアンさんに預けてこようと思って——」 



 それというのも、部屋にミューリスを1人残して行くのは、どうかと思ったからだ。

 それに彼女が居なくなった事で、その両親が心配していてもいけない。なら、どうせミュアンのもとへと赴くのなら、ミューリスを引き取って貰おうと考えての行動であった。



「——ッでは、私が……」

「いや……これぐらいなんてことないよ。ミューちゃん軽いし——よっと……」



 そして、少女を落としてしまわぬよう再びミューリスを担ぎ直すと、カエはフィーシアと共に宿入口のカウンターへと向かった。


 

 そして、そこには——




「——ッ……よお!」


「——ッうげ!?」


「良かった〜……また君に会えた!」





 本日最初の……厄介事の訪れ……



 だが、これもまだ序章に過ぎない。


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