第四章 誘い

 広希が登校を再開して、二週間が経過した。


 達夫を始めとするクラスメイト達のお陰で、比較的穏便な日々を送っていたが、これまでと比べて、大きな変化があった。


 その内の一つが、急激に広希がモテ始めたことだった。


 クラスメイトからではなく、別の生徒達からである。


 朝登校すると、度々、下駄箱にいくつかのラブレターが入っていることがあった。


 中身を読んでみると、広希との交際を求める声や、何やら含みのある文章があるものばかりだった。


 そのラブレターは、女子生徒からのものが大半だったが、驚くべきことに、男子生徒と思しき差出人のものも見受けられた。


 また、直接広希に告白を行う女子生徒もいた。それらは、上級生から、下級生に至るまで、複数の学年に渡っていた。


 今まで一度も広希は告白はおろか、ラブレターすら貰ったことがない。それがこのタイミングで発生したということは、つまり、広希が非感染者だという事実が、他生徒達に広まったということに他ならなかった。


 発信源は、クラスメイトではないはずである。クラスメイトの皆は、戒厳令とも言うべきか、広希が非感染者である事実をひた隠しにしてくれている。そこから漏れることはないと思った。


 おそらくだが、広希が非感染者だと発覚したあの時、他のクラスの生徒がいたのだろう。そこから広まったのだ。そう広希は推測した。


 クラスの皆は、相変わらず広希の身を案じており、たまに広希の姿を見ようとやってくる他生徒達を、それとなく追い払ってくれていた。


 それでも、廊下や通学路でクラスメイト以外の者とすれ違う時に、彼らや彼女達は、意味深な視線を向けてくることも少なくなかった。中には、非感染者だと隣の者に耳打ちする者もいた。


 だが、彼らの行動はそこまでであり、それ以上のアクションを取ってくることはなかった。あとはせいぜいラブレターや、告白を行うくらいで、広希はそれら全てを跳ね除けていた。


 様々な変化があったものの、広希は通学を続けている。今はもうダミーの血は飲んでおらず、ありのままに学校生活を送っていた。


 それは、これまでの生活では考えられないことだ。そして、それがどんなに恵まれているか、広希は自身の環境に感謝をした。 



 

 十月も半ばを過ぎ、残暑も鳴りを潜め始めた。朝晩は随分と冷えるようになり、過ごしやすくなっている。この後三寒四温へと移行し、やがて、秋から冬へと変化していくのだろう。


 衣替えにより、夏服からブレザー姿になった広希は、家を後にした。


 幾分か弱くなった朝日の中、高校へと向かう。涼しくなったため、もう汗ばむことはない。


 祇園地区から清見台地区へと入り、途中で合流した達夫と共に歩く。


 スマートフォン用のゲームの話をしている最中、達夫が不意に話題を変え、こんな質問を行った。


 「そう言えば、あの話、考えてくれた?」


 達夫の『あの話』とは、恐らく数日前に聞かれたことだろう。


 それは、達夫が所属するバレー部の話だ。そのバレー部に入部するよう、強く勧誘されているのだ。


 以前も同様のことがあったが、今回は質が違っていた。すでに広希が非感染者だと判明しているので、発覚を恐れての、部活動不参加は必要がない。そのため、かねてから望んでいた部活動参加が可能となり、広希がそのことを周囲に漏らしていた。それが広がったのだろう。


 そして、このように、本気の勧誘を受けるようになった。バレー部に限らず、もう二年だというのに、いくつかの部から、勧誘を受けていた。


 達夫からの勧誘は、実の所、達夫自身というよりかは、他の部員からの希望によるものだったらしい。特に先輩が、非常に広希を自分の部に入れたがっているようなのだ。


 広希は、その先輩の顔を知らない。にも関わらずである。


 「そのことだけど、バレーはあまり得意じゃないから、別の部活にしますって、伝えておいて」


 広希の断りの言葉に、チラリと達夫が悲痛な顔をする。達夫自身も、広希の入部を期待していたようだ。


 「お、おう。わかった。伝えておくぞ」


 その気持ちを悟られないようにするためか、達夫は明るく答える。


 しばらくして、高校へと到着した。周りを歩いている生徒の内の何名かが、広希に気が付くとじろじろと見てくる。その度に、広希のうなじがむず痒くなった。


 下駄箱に辿り着き、小さい扉を開ける。中には、何枚かの封筒のようなものが、突っ込まれていた。


 ラブレターである。色とりどりの、可愛らしいデザインが施されたものから、事務用封筒のような簡素なものまで、様々だった。


 「モテモテだな。羨ましいぜ」


 達夫が口笛を吹きつつ、囃し立てる。広希は、溜息をついた。


 「もう、そんなこと言って。こっちは迷惑してるんだよ」


 広希は、下駄箱の中のラブレターを全て、通学鞄に収めた。本当は捨ててしまいたい思いがあったが、衆目の手前、気が引けた。それに、ラブレターの内容はともかく、少なからず気持ちはこもっているようなので、あまり無下にもしたくはなかった。


 上履きに履き替えた広希は、再び達夫と並んで、二年三組を目指す。


 途中、他生徒からの注目を受けながら、教室に辿り着く。


 扉を開けて中へ入ると、すぐ側の席にいる千夏が、笑顔で挨拶をして来た。


 「おはよう。広希君」


 鈴を転がすような、綺麗な声。広希に向けられた笑顔は、女神のように美しかった。


 「おはよう。大里さん」


 広希も笑顔で返す。平常心を装ったつもりだったが、内心、ドギマギしていた。これほどの美少女から話しかけられることに、まだ慣れていないのだ。


 広希が登校を再開してから、千夏はよく広希へ声をかけてくるようになった。そのような生徒は他にもいたが、千夏はより顕著だった。


 「広希君のブレザー姿、とても素敵だよ」


 千夏は、微笑んで、広希を褒める。広希の心臓は、僅かばかり高鳴った。


 「ありがとう」


 広希は、礼を言い、逃げるようにその場を離れた。やはり学校のアイドルとの会話は緊張する。


 後ろについて来ている達夫が、からかうように、広希の背中を軽く小突く。やめろよ、と広希は、心の中で呟いた。


 その後、広希は、達夫や茂と自分の机で雑談を行っていた。


 そこへ、再び千夏が声をかけて来る。取り巻きの女子はおらず、一人だった。


 「広希君、ちょっといい?」


 千夏は、広希の目の前まで歩み寄った。整った顔が近付く。シャンプーの匂いだろうか。甘い香りが鼻腔をつく。


 「何?」


 広希は緊張を抑えつつ、聞き返した。千夏は、綺麗な二重の目を、やや上目使いにし、広希の顔を見上げる。千夏は、広希より、若干背が低い。しかし、女子にしては高めな方だ。


 「今日の放課後、私が所属する美術部に見学に来ない?」


 唐突な申し出に、広希は一瞬面食らう。


 「どうして?」


 広希の疑問に、千夏は、さらりと答えた。


 「あなたに美術部へ入部して欲しいから」


 広希は驚く。まさか、千夏からも部活の勧誘を受けるとは。芸術の分野なんて、微塵も縁が無いというのに。


 千夏の言葉を聞いていた達夫と茂が、羨ましそうな顔で、こちらを見た。目の端でそれを確認する。


 達夫や茂だけではなく、近くの席のクラスメイト達も、こちらの様子を伺っていた。皆、学校一の美少女と、非感染者のやりとりに興味があるのだ。


 「でも、僕、あまり絵上手くないし、入っても上達しないと思う……」


 「それは大丈夫よ。誰だって、初めはそうだから。私が一から教えてあげる」


 隣で、達夫が小さな溜息をつく。


 「うーん、でも……」


 煮え切らない広希に、千夏は天使のような笑顔で語りかけた。


 「入部を決めるのは、後ででいいから、今日は見学だけでも来てくれたら嬉しいな。駄目?」


 笑顔を崩さないまま、千夏は、甘えるような声を出す。こんな仕草をされれば、男なら誰でも従ってしまうだろう、というほど魅惑的だ。


 思わず目線を逸らした広希に、千夏は付け加えた。


 「今すぐ決めなくていいよ。放課後、また聞きに来るね」


 そう言い終わると、千夏は長い髪をなびかせ、自分の席へと戻っていった。最後まで、優雅な雰囲気を纏ったままだった。


 千夏が去っていく後姿を、広希はぼんやりと見送る。そこに、脇腹を小突かれた。あまり加減なしだったため、広希は、小さく呻く。


 見ると、達夫がうらめしそうな表情で、こちらを見ていた。


 「学校のアイドルから部活の勧誘とか信じられないぜ」


 広希は、小突かれた脇腹を擦りながら、答える。


 「そう言われても。僕も困惑してるんだよ」


 「で、行くのか? 放課後」


 茂が訊く。広希は首を振った。


 「まだ決められないよ」


 「俺の部への勧誘は断ったもんな。これでオッケーを出したら、親友より女を選んだってことになるぞ」


 達夫が悪戯っぽく笑みを浮かべ、そう言った。目の奥には、少しだけ、本気の気持ちがあるように思える。


 「なんでだよ。関係ないよ」


 広希が反論したところで、チャイムが鳴った。



 

 「広ちん、美術部に入るの?」


 昼休み、早紀がそう質問をして来た。手にはリサ・ラーソンの水筒を持っている。中身はもちろん血だろう。しかし、それを持ったまま、飲もうとはしていなかった。


 「入るかどうかはまだ決めてないよ」


 広希は正直に答える。しかし、なぜ早紀はこのことを知っているのだろうか。広希は疑問に思う。朝、その場にはいなかったはずなのに。


 早紀の隣にいた明日香が、口を挟む。


 「でも、千夏から誘われたら、その気になったでしょ」


 明日香も、勧誘の件を知っているようだった。


 「そんなことないよ。今、悩んでいる最中」


 おそらく、朝の千夏から受けた勧誘のシーンを見ていた誰かが、広めたのだろう。その場にいなかったこの二人が知っているのであれば、もしかしたら、相当その話が知れ渡っているのかもしれない。


 「だけど千夏からもアプローチを受けるとはねー」


 明日香が、ペットボトルから血を飲みながら、そう言った。飲んでいるペットボトルは、自身の物だろう。


 明日香は、あの時、広希が非感染者だと発覚したことの元凶と言える存在だった。あれから謝罪こそはなかったにせよ、明日香も、他のクラスメイト同様、気遣う行動を見せてくれていた。特に、発覚の引き金となった『他人の血液飲料を飲む行為』は控えているようだ。そのため、あれ以来、ちゃんと自分で血を用意しているようである。


 しかし、広希の目の前で血を飲む行為は、始めから控えなかった。もっとも、今では、ほとんどのクラスメイトがそうであったが。


 「広ちんは、何の部活に入りたいの?」


 早紀が訊いてくる。手にはまだ水筒を持ったままだ。指先で、落ち着きなく、水筒の蓋を弄っている。禁断症状のように見えた。


 「うーん、色々候補はあるけど、決めかねてる段階かな」


 「候補って言うと、例えば?」


 なおも、早紀は、水筒を忙しなく触っている。本人は無意識のようだ。


 「運動部だと、バトミントンとかかな。文化系だと、文芸部とか」


 「ふーん」


 頷いた早紀に、広希は言う。


 「諸井さん、僕のことは気にせず、血を飲んでいいよ」


 早紀は、ハッとした表情をした。今気付いたのだろう、弄っていた水筒から慌てたように手を離した。水筒は、手から滑り落ち、床に金属の不愉快な音を立てながら転がった。


 「もう、何をやってるのよ」


 明日香が、血液飲料のペットボトルを机の上に置くと、しゃがみ込んで、早紀が落とした水筒を拾った。


 「はい」


 明日香は、その水筒を早紀に手渡す。


 「あ、ありがとう」


 早紀はどこか戸惑ったように、水筒を受け取る。明日香は、様子がおかしい早紀の顔を覗き込んだ。


 「大丈夫?」


 「う、うん」


 「本当に、血を飲むのを遠慮しているの?」


 明日香の言葉に、早紀は首を慌てて振った。


 「そんなことないよ」


 「諸井さん、本当に気にしなくていいよ」


 広希は、やんわりとそう言った。


 「そうよ。もう誰も遠慮せずに、広希の前で血を飲んでるんだから、早紀も気にせず、いっちゃいなよ」


 だが、早紀はなおも飲まないようだ。こう付け加える。


 「大丈夫。飲みたくないから」


 早紀は、優しく、広希に笑いかけた。


 明日香が言った通り、慣れもあってか、今は皆が広希の前で、血液飲料を気兼ねなく飲んでいる。広希にとっても、必要以上に遠慮されるよりかは、そちらの方が気が楽だった。


 だが、思えば、早紀だけは、発覚してからも、血を飲んでいる姿を見たことがない気がした。


 広希は、ぼんやりとこれまでの早紀の姿を思い出す。


 その時、ちょうど、達夫と茂が広希の席へとやってきた。手に弁当と水筒を持っている。


 そこで、早紀達との会話は終了した。




 放課後になった。生徒達は各々の用事を行うため、三々五々、散っていく。


 これまで広希は、非感染者であることの発覚を避けるため、早々に学校から撤退をしていた。今では、その必要がなくなったので、学校に居座り続けることが可能だ。とは言え、部活動をやっているわけではないので、その必要性もなく、発覚後も、これまで同様、すぐに下校を行っていた。


 しかし、今日は、そうするわけにはいかない。広希は、SHRが終わってからも、席に着いたままだった。


 やがて、すぐに千夏がやって来た。背後に、二人、同じ美術部の取り巻きがいる。


 「広希君、答えは決まった? 私としては、是非とも見学に来て欲しいんだけど」


 千夏は、広希へ身を寄せるようにして訊く。近い。


 「えーと……」


 広希は恥ずかしさを紛らわすために、自身の頬を掻いた。


 「他の美術部員も、広希君が入ってくれることを期待しているよ」


 千夏は、背後にいる女子生徒に目配せした。二人は同時に頷く。そして、その内の一人が口を開いた。


 「先輩達も架柴君に会いたいんだって。千夏に勧誘してくるように言ってるから、断ったら、千夏が困っちゃうよ」


 援護射撃を受けた千夏が、さらにプッシュしてくる。


 「ね、これから一緒に行こう?」


 千夏は、媚びるような表情でそう言った。懇願とも取れた。


 広希は戸惑う。始めは断るつもりだったが、これでは、切り出しにくい。


 「わ、わかったよ。とりあえず、見学だけ」


 広希は、渋々了解した。あまり気が進まないが、無理に断るのも気が引ける。それに、頑なに拒否する理由もない。ここは、見学だけでも行っておいた方が良さそうだ。


 「ありがとう」


 千夏は、向日葵のような笑顔で、礼を言った。


 その後、四人は教室を出て、美術室へと向かった。美術室は、北校舎の一階にあり、広希達の教室がある南校舎からは、随分と遠い。


 千夏達と廊下を歩いている間、周囲の生徒は、何度もこちらを見てきた。学校のアイドルと、学校で唯一の非感染者が並んで歩いているのだ。普段より、注目度は高かった。


 その注目には、違いがあることに、広希は気付く。千夏へと注がれる視線は、憧れの色があることに対し、広希に向けられるのは、非感染者への欲望が混じった視線だ。


 お馴染みのものだが、こうして比較対象がいると、さらにそれが浮き彫りになった気がした。


 北校舎に着き、一階へと降りる。そして、美術室へと到着した。


 千夏を先頭に、中へと入る。


 美術室へ入ると同時に、石油に似た独特の臭いが鼻をついた。油絵の臭いだ。嫌う者もいるが、個人的には、さほど、不快には感じない。


 美術室の中は、すでに複数の美術部員がいた。キャンバスを前に、絵を書いたり、準備を行っている。ほとんどが、女子だった。


 千夏に気が付いた部員達は、口々に挨拶を行う。ここでも、千夏は、強く慕われていることがははっきりと見て取れた。


 そして、千夏の背後に広希がいることを知り、部員達は目を丸くする。


 「千夏さんの後ろにいる人って、もしかして例の非感染者の人ですか?」


 そう聞いたのは、大人しそうな雰囲気をした、お下げ髪の女子だ。幼げな顔付きと、言葉遣いから、一年生だろうと広希は推測する。


 「ええ。今日、見学に来て貰ったの」


 千夏が答えると、美術部員達は、お互い、顔を見合わせた。やはりこの美術部にも、自身のことが知れ渡っているようだ。今更驚くに値しないが。


 「紹介するわね。架柴広希君。私のクラスメイト」


 自身を紹介され、広希は頭を下げた。少しだけ、気恥ずかしさがある。


 こちらに視線を向けている美術部員の中から、明るい声が発せられた。


 「架柴先輩、美術部入るんですか!?」


 小柄で快活そうな女子生徒だった。右手を挙げながら、そう訊く。こちらも一年生だろう。


 広希は答えた。


 「まだ悩んでいる最中だから、これから決めようかなって思ってるよ」


 「これから、なんですね」


 質問した一年生は、納得したように、頷いた。そして、広希の頭から足先までを、舐めるようにして見やる。


 それは、この快活な女子生徒に限らず、先ほどのお下げ髪の一年生も、同様だった。こっそりと、広希の姿を上から下へと何度も目を上下させていることに気が付いていた。この二人だけではない。他の美術部員も同じようにじっとりとした目線をこちらに投げかけている。


 広希は、手で全身を撫で回されているような気分に陥った。掻痒感がうなじから、背中にかけて走る。


 「あなたが、架柴広希君ね」


 横から声がかかった。


 そちらに顔を向けると、スラリとした長身の女子生徒が、笑顔で立っていた。ポニーテールが似合う、のような雰囲気を纏った美しい女子だ。


 「えっと、あなたは?」


 広希の質問に、長身の女子生徒は答える。


 「私は冴島加奈子さえじま かなこ。三年で美術部の部長よ。今日は見学に来てくれてありがとう」


 加奈子は、にっこりと微笑むと、広希の目の前まで歩み寄った。そして、突然、広希の手を握り、胸元まで持っていく。


 「あ、あの……」


 困惑した広希は、加奈子の顔を見つめた。切れ長の気の強そうな目と合う。その目に光が渦巻いていた。


 「広君って呼んでいい?」


 「は、はい」


 「今回あなたを千夏に勧誘して貰ったのは、私のお願い。私、あなたに入部して欲しいの」


 加奈子は、広希の手を握ったまま、そう告白した。握られた手が、熱を持っている。


 「だから、後で入部届けにサインして?」


 加奈子は、手に力を込めた。痛いくらいだ。離してと、伝えようとした時、千夏の手が、握り合っている二人の手を覆った。


 「部長。先走り過ぎですよ。落ち着いて接するようにと、予め言いましたよね?」


 千夏の咎める言葉に、加奈子が、弾かれたように、広希の手を離した。


 「そ、そうだったね。ごめんね。広君」


 加奈子は手を合わせて謝った。目の奥に、少しだけ、怯えのような感情があるような気がした。


 美術室にいる者全ての視線が、こちらに注がれている。バツの悪そうな雰囲気を誤魔化すように、加奈子は手を叩く。


 「さあ、皆、作業に戻って!」


 加奈子の声が、響き渡った。



 

 美術部の活動が始まった。美術部員達は、それぞれ思い思いのやり方で絵を描いている。中にはキャンバスを持って、外へと出て行った者もいた。


 教室に残って作業をしている者は、当然だが、皆無言だった。しかし、広希が気になるのか、時折こちらに目線を向ける者もいた。


 広希は、それを気にしないようにしながら、千夏の隣に座り、そこで着々と進められる千夏の絵を見物していた。千夏は、正面にモデルとして座っている女子生徒の姿を描いているようだった。美術部員らしく、とても上手い。


 だが、よく観察すると、実物と違う点がいくつか見受けられた。


 モデルとなっている女子生徒は、おそらく下級生で、童顔な顔造りをした可愛らしい人物だ。中学生と言われれば、信じてしまうだろう。しかし、千夏が描く女子生徒は、それとは違い、どこか大人びた雰囲気を纏っていた。半分ほど仕上がっている背景も、青と黒を基調にした大人しい色合いで、全体的に静謐なイメージが漂っている。


 「結構凛々しい絵だね」


 「ええ。この子はこう見えて、クールな性格だからこの色調が似合うの」


 千夏はバターナイフに酷似した刃物で、キャンバスに傷を付けながら答える。


 千夏の説明を聞き、広希はなるほどと思う。


 以前美術の時間だったか、習ったことがあった。絵というものは、例え実物をモチーフに描いても、描き手の内面やモチーフに対するイメージが必ず投影されるものだという。それは油絵に限らず、水彩画やイラストなどでも同様らしい。


 童顔で幼げな容姿である人物でも、描き手がその人物にクールで大人びたイメージを抱いていると、自ずと絵もそれに準拠するようになる。その結果がこの描写なのだろう。


 そう考えると、同じモデルの絵を何枚か描いたとしても、その過程でモデルと描き手の間に変化があったり、抱いたイメージが変わった場合、その都度絵の構成も変化を見せることになる。なかなか面白い現象だ。


 広希が絵をまじましと眺めていると、興味を示したのだと思ったのか、千夏は解説を始めた。


 「肖像画はね、特に歴史ある絵画ジャンルの一つなの」


 バターナイフのような刃物をパレットに置き、続きを言う。


 「肖像画は、近代以前と以降では、その趣が違うわ」


 千夏の艶やかな唇から言葉が溢れる。


 千夏の説明によれば、こうだった。


 近代以前は、写真が存在しなかった時代だったので『その瞬間の人物』を切り取って保存するための媒体がなかった。そこで利用されたのが肖像画である。


 当時の肖像画は、ドキュメンタリー・フォトとしての側面が強く、ピカソやモネなどの抽象的な表現は求められていなかった。あくまでも、正確な写実性を必要とされていたのだ。


 だが、近代以降、写真が登場してからは、対象の姿を保存する目的としての絵画制作は需要がなくなったため、肖像画を含めた絵画はその芸術性を強く追求されるようになった。いわゆる絵としての独自性を確立し始めたのだ。


 そこで生まれたのが印象画や抽象画といったジャンルの絵画である。


 肖像画に限って言えば、今は対象を正確に描き出すよりも、自身の抱いたイメージや心情を絵画に押し出し、芸術性を表現することに重きを置いているらしい。


 「絵は描く人の心のフィルターだと思っているわ」


 千夏の説明が終わり、そう締めくくった。


 正面でモデル役に徹している女子生徒が、こう言った。


 「それじゃあ、千夏さんの絵を見れば、私をどう思っているのかわかっちゃいますね」


 女子生徒の言葉に、千夏は、優しく微笑む。その通りだという意味なのだろうか。


 そして、千夏は広希の方に向き直った。真剣な表情だ。


 「今度、広希君をモデルに、絵を描かせて」


 千夏の突然の依頼に、広希は耳を疑う。ここでモデルの催促など思いもよらなかった。広希は逡巡した。初めての経験だし、いかんせん、恥かしさもある。面倒とも思う。


 広希は反射的に断ろうとした。


 口を開きかけた時、千夏の強い眼差しと目が合う。


 広希は怯んだ。


 有無を言わせないその眼差しに、広希はつい、首肯していた。


 「時間さえあれば……」


 面倒なことを引き受けて、と、頭の隅に、自分を責める言葉が生まれた。


 だが、了承してしまった以上、仕方がなかった。


 広希の答えを聞いた千夏は、天使のような笑顔を見せた。



 

 美術室で過ごす時間は、淡々と過ぎていった。途中、広希は、千夏の側を離れ、他の部員の絵も見て回った。


 美術部員達は、千差万別の絵を描いていた。千夏のような肖像画から、抽象画なのだろうか、人物を崩れたように描いている具象的な絵や、国旗のデザインのようなアート的な絵画まで、多岐に渡っていた。モチーフも様々であり、中には何も見ずにただキャンバスに絵を描き続けている者もいた。


 さすがに風景画などは、外に出る必要があるため、それを描いている生徒は、ここにはいなかったが。


 そして、部員達は、熱心に画筆を走らせながら、時々思い出したように、血を飲んでいた。これは、授業中の風景と同じである。そして、広希がそばに寄って来たことに気が付くと、大抵の部員達は、広希を強く意識した行動を取った。戸惑っているような反応や、熱っぽい視線を向けて来る者など十人十色だった。


 そのような中、先ほど自己紹介を交わした部長の加奈子の元へ、広希は近付く。加奈子も、他の部員同様、キャンバスを前に熱心な表情で作業に取り組んでいた。対象は机の上に置かれた果物類である。


 加奈子は、元々、大人びた雰囲気を纏っており、こうして真剣な顔付きだと、凛々しさも相まって、さらに年上に見える。大学生のようだ。


 加奈子のすぐ側まで行くと、加奈子は広希に気が付いた。すぐに明るい表情になる。


 「どう広君。楽しんでる?」


 加奈子は、脇に立てた椅子の上に置いてあるパレットに、画筆を伏せながら、訊く。


 「ええ。お陰さまで。色々と勉強になります」


 「そう。それならよかった」


 加奈子は、薄手の黒ストッキングに包まれた足を組むと、こちらに顔を傾けた。ポニーテールが揺れる。


 「それで、どう?」


 「どう、と言うと?」


 「美術部に入る気になった?」


 加奈子の質問に、広希は肩をすくめて言う。


 「まだ決められないですよ」


 「私としては今すぐ頷いて欲しいんだけどなー」


 期待がこもった目が、広希を射抜く。


 「困ります。まだ待ってください」


 広希は、両手を振って、加奈子を宥めた。


 「私も架柴先輩に入部して欲しいです!」


 そう横から口を挟んだのは、最初に話をした快活な一年生だ。いつの間にか隣におり、手に血の入ったペットボトルを持っている。


 「多分、皆そう思っていますよ」


 そう言いながら、その一年生は、血を飲んだ。


 「こら美樹みき、広君の目の前でしょ」


 加奈子が、美樹と呼んだ一年生を嗜める。


 「我慢できなくて。ごめんなさいー」


 美樹は、舌を出し、惚けたように笑った。


 「僕はもう見慣れているから、気にしなくていいよ」


 広希は美樹にそう言う。だが、答えたのは、加奈子だった。


 「あら、そう。じゃあ私も頂くわ」


 加奈子は、足元のデイパックから、水筒を取り出し、蓋に注ぐ。そして、それを飲み干した。うっとりとした表情になる。


 「架柴先輩! 先輩って自分の血を人に飲ませたりするんですか?」


 美樹の不躾な質問に、広希は、面食らう。思わず息が詰まった。


 「美樹、失礼だよ」


 近くで話を聞いていたのだろう、お下げ髪の女子生徒が口を挟んでくる。


 「だって、小夜さや、気になるじゃん」


 美樹は、小夜と呼ばれたお下げの女子生徒に向かって、あっけらかんとした顔を向けた。


 「もう」


 小夜は、呆れたように言いながも、興味津々の様子は隠しきれていなかった。


 「それで架柴先輩、答えは?」


 美樹は、勢い込んで訊く。目が爛々と輝いていた。


 「飲ませないよ。今まで飲ませたこともない」


 広希は、戸惑いながら、答えた。


 「なーんだ」


 美樹は落胆した声を上げる。


 やはり、秘密協定が結ばれているクラスメイト達とは違い、他の生徒は、遠慮なく広希の血について、強い関心を寄せて来ていた。


 思えば、発覚以降、クラスメイト以外と長く接する機会はなかった。せいぜい、続々と行われている告白の時くらいだったが、それは即座に断っていたため、会話が長引くことがなかったのだ。


 だから、こうやって、自身が非感染者であることによる、質問攻めを受けるのは初体験と言えた。戸惑いが大きい。


 感染者にとって、やはり非感染者の血は、どうしようもなく魅力的なのだろう。興味を抑えることが難しいのだ。


 しかし、考えてみると、それはクラスメイト達も同様のはずである。にも関わらず、皆広希の血には関心を寄せていなかった。それは如何にクラスメイト達が気を使って、広希の血を気にしないようにしているかの証明でもあった。


 「でも広君、例えば、彼女が出来て、その人が血を飲ませてってお願いして来たら、飲ませるでしょ?」


 加奈子は、悪戯っぽい目付きで、広希の顔を覗き込む。


 広希は、加奈子の質問に、虚を突かれた気がした。これまで全く、想像もしなかった考えだった。だが、確かに、その状況は起こり得るのだ。正しくは、彼女に限らず『大切な人』からの血の要求は、いずれあるかもしれない。そうなったら、自分はどうするのだろうと思う。


 少し、想像したものの、答えは出なかった。


 「わかりませんよ」


 広希は首を振って、正直に返答する。


 「そう」


 加奈子は、立ち上がった。加奈子は、身長が高く、広希とほぼ同じだった。


 「ねえ、広君。私と付き合ってみない?」


 加奈子は、広希の肩に手を置いた。それを見ていた美樹と小夜が、同時に驚いた反応をとった。


 突然の告白を受け、広希は、息を飲む。表情を見ても、加奈子は本気だとわかる。


 広希は困った。断ろうと思うものの、これまで面識のない感染者の告白とは違い、加奈子とはすでに繋がりが出来ている。中々きっぱりと拒否し辛かった。


 困惑している広希に、加奈子は、微笑みかける。


 だが、その表情が、苦痛に歪んだ。


 誰かが、広希の肩に置いた加奈子の手を掴んだのだ。しかも、相当力を込めて。

 その手の主は、千夏だった。いつの間にか広希達の元へとやって来ていたのだ。

 千夏は、聖母のように、穏やかに微笑んでいる。


 「加奈子さん。何度言わせるんですか? 広希君に血を催促するなって釘を刺しましたよね。忘れたんですか?」


 「別に血を求めていないわ」


 加奈子の反論は、最後まで発せられなかった。途中で小さい呻き声に変わったせいだ。千夏は、握り締めている加奈子の手に、さらに力を込めたのだろう。


 「あなたが広希君に言った言葉は、血を求めることと同じでしょ? ふざけないでください」


 研ぎ澄まされた刃物のような鋭い口調に、加奈子は酷く怯んでいるようだった。後輩にもかかわらず、加奈子は千夏に頭を下げる。


 「ごめんなさい。もうやらないわ」


 加奈子の悲痛な感情が入り混じった謝罪に、千夏はようやく手を離した。千夏が握り締めていた部分が、赤くなっている。


 「あなた達も、不躾な質問はやらないこと。いい?」


 千夏は、隣で固まっている美樹と小夜に、毅然と言い放った。


 二人は、こけおどしのように、何度も頷く。


 「広希君、絵が進んだから、見て欲しいの。来てくれる?」


 打って変わって、広希には、優しそうな声で語りかけた。


 千夏はクラスメイトであり、広希の身を案じた末の助け舟であろう。と、広希はそう思った。


 しかし、抱いていたイメージとは違う千夏の言動に、面食らうばかりだった。


 広希は、大人しく千夏に付き従った。



 

 部活の終了時刻が到来し、美術部員達は、それぞれ美術部を出て行く。中には、キャンバスを持って帰っている者もいた。家で環境が整っている者は、そのまま続きを描くのだろう。


 帰宅を行う部員達は、大抵が広希に一瞥をくれていた。最後まで、広希のことが気になっていたようだ。


 広希は千夏と一緒に美術室を後にした。この時は、いつも一緒にいる取り巻きはいなかった。


 通学鞄を教室に残したままだったので、千夏と連れたって、二年三組へ戻る。


 教室の中に入ると、達夫と早紀が残っていた。二人は、広希達を確認し、共に嬉しそうな表情になる。


 「来たな。待ってたぞ」


 達夫は手を挙げる。


 「広ちんの鞄が残ってたから、戻ってくると思ってたよ」


 早紀はそう言いながら、広希だけではなく、千夏にも目配せをした。


 広希は訊く。


 「どうしたの?」


 「これからファミレスに寄って行かない?」


 「いいけど、どうして?」


 「明日休みだし、たまにはゆっくりお話したくてさ」


 達夫は、千夏に目を向ける。


 「千夏もどう?」


 達夫は誘う。どうやら、それが本命だったらしい。滅多に関わることのない高校のアイドルと、お近づきになれる機会を逃すつもりはないのだろう。


 千夏は、考える仕草をした。


 「広希君が行くなら、私も行こうかな」


 千夏は、広希を見ながら言う。


 「やった! それじゃあ早速行こうぜ」


 達夫はスイッチを入れたかのように、テンション高く歩き出した。


 「そう言えば、茂は?」


 「塾だって言って、先に帰ったよ」


 「そうなんだ」


 茂は勉学に忙しく、中々付き合えない時がある。可哀想な部分はあった。


 そして広希達は、揃って、学校を出た。




 四人は、木更津駅方面へ少し歩いた場所にあるファミリーレストランへと入った。近くに市立図書館があるため、広希も図書館に立ち寄った際に、何度か利用したことのある店だった。


 夕方なためか、人は多い。利用客は、学生から家族連れと、多岐に渡っていた。


 四人はかろうじて空いていた奥の窓際の席を選び、座る。


 店員がやってきて、それぞれ、フリードリンクを注文した。てっきり千夏はこんな庶民の店を利用したことがないものと思い、達夫が説明を行おうとしたが、千夏はちゃんと把握していた。何度もファミリーレストランを利用したことがあるそうだ。当然言えば、当然だ。漫画の中のお嬢様ではないのだ。ステレオタイプに考え過ぎだろう。


 それぞれ、好みの飲み物を注ぎ終わり、全員が揃う。


 達夫は、血液飲料のドリンクを頼んでいた。トマトジュースのような、ドス黒い色をした液体が、コカ・コーラのグラスを満たしている。千夏も同じだった。家畜の血を注いできたようだ。


 「ごめんなさい、広希君。もう血がなくなってて、どうしても飲みたかったの」


 千夏は、申し訳なさそうにそう謝罪した。


 広希は、わかっている、という風に、頷いてみせる。


 広希はメロンソーダを頼んでいた。早紀も同様に、メロンソーダだった。


 「お待たせ致しました」


 店員が、フライドポテトを持ってきた。これは、達夫の提案による、男性陣の奢りの品だ。


 テーブルの中央にフライドポテトが置かれる。広希はそれを見つめた。


 フライドポテト自体は、何の変哲のないものだが、ケチャップは違うはずだ。これには恐らく家畜の血が入っている。だから、ケチャップを付けては、食べられない。


 このように、血を混入させたメニューや、惣菜は至る所で見受けられた。感染者は気にする必要のないものだが、非感染者は違う。


 ここにいるのは、気を使ってくれるメンバーばかりだったが、細かい所は失念しているのだろう。だが、こういった些細な点は、どうとでも対処できるので、わざわざ口に出すことはしなかった。


 「ごめん。広ちん。ケチャップ、血が入っているね」


 早紀が事情に気が付き、心配そうに声をかけてくる。


 早紀に言われ、達夫も気が付いたようだ。ハッとした表情になった。


 「そうだったな。すまん。そこまで気が回らなかったよ」


 「ポテト自体は血が入っていないから、ケチャップを付けなければ問題ないよ。気にせず食べよう」


 広希は、二人を宥めた。何だか最近、ずっとこんな言葉ばかり使っている気がするな、と広希は頭の隅でチラリと思う。


 広希の説得もあり、皆はポテトに手を付け始める。


 ドリンクを飲みつつ、学校の話題に花を咲かせた。達夫は、今まで接点のなかった千夏と話をできるだけで、嬉しいようで、テンションが高めだった。


 そのような中、ふいに達夫が広希へ質問を行う。


 「そういえば広希、美術部入るのか?」


 急に話を振られ、広希は少し戸惑いながら答えた。


 「まだ決めていないかな。今思案中」


 広希が正直に話すと、千夏が口を挟んだ。


 「広希君には、モデルになって貰うわ」


 その言葉に、達夫と早紀は、同時に驚いた表情をした。晴天の霹靂といった具合だ。


 「ええ!? そうなんだ。何か凄いね」


 早紀は、大きな目をさらに丸くし、広希と千夏を交互に見比べた。まるで恋人であることを知られた時のような、恥ずかしさに似た感情に支配される。


 「まさかヌード?」


 達夫が冷やかし半分、嫉妬半分という感じで、下卑た笑みを浮かべた。


 「馬鹿」


 横にいた早紀が、達夫に脇腹に肘鉄を食らわす。達夫は痛そうに呻く。皆の中で笑いが生じた。


 その後、別の話題に移ったが、終始、千夏の視線を感じていた。はっきりと直視しているわけではないが、意識だけをこちらに向けているような気がするのだ。


 もしかしたら、気のせいかもしれない。モデルになるという話が頭に残っているため、千夏の視線を必要以上に意識し、錯覚を覚えた可能性もある。


 しかし、その感覚は、千夏と別れるまで続いていた。

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