第82話 対峙

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


本日ジャンプTOONにて

『契約婚約ですがどうやら愛されているようです』

連載開始されました!

現代社会人ものです!


『病弱な悪役令嬢ですが、婚約者が過保護すぎて逃げ出したい(私たち犬猿の仲でしたよね!?)』

小説2巻は7/5発売です!

よろしくお願いいたします!

(詳細は近況ノートにて)


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ああ、そうだな。……大事な転生者として、その知識を奪ってやるさ」

「――え?」


 自分の予想と違う反応が返ってきて、ミリィが固まった。


「私のこと、お妃様にしてくれるんじゃ……」

「転生者ごときが何を世迷言を。反乱軍の動きを教えただけで妃になれたらこれほど楽なことはない」


 皇帝はミリィの腕を引き剥がした。


「お前はその辺にあるゴミと結婚できるのか?」


 皇帝にとって、ミリィとは……いや、転生者とはそういうものだということだ。同じ人間なのに、なんて酷い。


「ふむ。だが、お前なら多少遊んでもよい」


 皇帝が楽しそうに私に近づく。


「中々綺麗な顔をしているではないか。これなら楽しめそうだ。しばらくお前を私のオモチャにしてやろう」

「……冗談じゃない!」


 私は後ろ向きに手を動かした。

 そう、機械の最後の一手を。


「っ! 貴様!」


 私の行動に気付いた皇帝が、私を殴るが、すでに遅い。

 機械は作動し、シャッターは開いた。一気に反乱軍が押し寄せ、今頃皇城は混乱に包まれているはずだ。

 人々の大きな声が聞こえる。

 皇帝が私を睨みつける。


「なんということを……この女!」


 皇帝がブルブルと震えている。怒りか恐怖か。その両方か。

 私は彼に向かってにこりと笑った。


「死ね、クソ野郎」


 私の言葉にこめかみをピクリとさせた皇帝は、持っていた銃を私に向ける。


「死ねこのゴミめがぁぁぁぁぁ!」


 私は目を瞑った。

 ああ、帰れなかった。でも私の選択は間違っていないと思う。

 転生者を救って、この腐った帝国を潰せたんだから、頑張ったわよね、私。

 ふと、私の脳裏にルイスが浮かんだ。


 ――帰れなくてごめんね。


 しかし、急に腕を引かれ、誰かに抱きしめられた。


 そして大きな銃声が聞こえた。でも私は撃たれていない。

 私はパチリと目を開く。

 痛みはない。間違いない、今撃たれたのは、別の人間だ。


「ゴミはお前だ」


 耳にルイスの声が聞こえた。

 私は恐る恐る顔を上げた。


「……ルイス?」


 そこにいたのは、ルイスだった。

 ルイス? 本物?

 私はそっとルイスの頬に触れる。確かに温かな肌の感触がする。夢じゃない。


「ルイス?」

「遅くなってごめん、フィオナ」


 ルイス。ルイス。ルイス!

 私はルイスに抱きついた。


「こ、怖かったぁ!」

「そうだよな、ごめんな」

「が、頑張ったぁ!」

「そうだな、偉いな」


 今まで我慢していたものが、全部溢れ出したように、涙が止まらない。

 ズビズビ泣いてルイスにしがみつく。ルイス、本物だ。私のことを守ってくれる手だ。

 ルイスはハンカチを取り出すと、私の顔を拭ってくれた。


「ほら、鼻水まで出てるぞ」

「うっ」


 鼻水まで拭われてしまって、少し冷静になった。


「あの、皇帝は?」


 私は皇帝がいたであろう場所を見ようとしたが、ルイスの手に遮られた。


「見ないほうがいい」


 ルイスがそう言うということは、撃たれたのは皇帝で、おそらく撃ったのはルイスだ。


「ルイス、いつ銃なんて?」

「ここに来る前に習った。帝国と戦うなら必要だと言われて」


 手に持っていた銃をルイスが仕舞う。


「そもそも、どうやってここに?」

「フィオナがいなくなって、帝国に連れて行かれたんじゃないかって。それでエリックの協力のもと、最短で帝国に来れるルートで船を出して、なんとか追いついたんだ。それで、反乱軍の情報を聞いて、彼らと協力して帝国を倒すことにした」

「エリックが?」

「エリックはこの国出身だろう? それにエリックも、父親が転生者だったらしい」


 ルイスの口から転生者という言葉が聞こえて驚いた。


「転生者について聞いたの?」

「ああ」


 ルイスが私の手を握る。


「フィオナもそうなんだろう?」

「……うん」


 知っているなら、もう嘘をつく必要はない。だけど、転生者であることをルイスにどう思われるか。私は不安になった。


「そうだったら説明が付く。フィオナは前世の知識で健康になろうとしたんだな」

「うん……前世の記憶を取り戻したのが、あの、頭を打って何日か寝込んでいたことあるでしょう? あのときで……」

「そういえば、あのときから、フィオナの行動は変わったな」


 あのときから変わったことに気付いていたらしい。

 どうなるんだろう。元のフィオナとは違うと言われるのだろうか。初恋のフィオナを返せと思っているだろうか。




「でもフィオナはフィオナだろう?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る