第3話 昇進と新しい武器
ラーシアからの声が頭の中に響く。スキル【気配察知】を手に入れたみたいだ。新しいスキルを手に入れたので試したくなるのが人の性。発動すると、
「うおっ!」
頭の中にレーダーのようなものが浮かび上がる。自分が中心の白い点で示されている。
そこから放射状に線が引かれていて、一秒に一回くらいのスピードで輪っかの線が広がっていく。
「!!」
気配察知に何かが引っ掛かったみたいだ。赤い点が左下から近づいてくる。おそらく魔物だろう。戦うと何かが起こりそうな気もするが、今回は戦わずに、逃げる。
どうやら思ったよりも時間が経っているようで、夜が近づいているのだろう。転移してきたときよりも暗い。今夜の寝床を探すために一旦辺りを見渡す。
すると、割りと離れたところに良さそうなくぼみのある大きな岩を見つける。銃を持って走るのは危ないので、ホルスターを召喚する。
その中に入れて岩場を目指して歩いて行く。もちろん、このときも気配察知を発動している。暫く歩くと、岩場についた。思ったより雨風しのげそうだ。
なんて思っていると、気配察知に赤い点が3つほど映る。それと同時に警戒度を最大まで上げ、銃を取り出す。
「ギッ!ギッ!」
「ゲギャ!ゲッゲッゲ!」
というあまり長時間聞きたくない声とともに、焚き火の薪が弾けるパチパチという音に暖かい光と熱を感じる。
物陰から、岩場の真ん中を見る。
そこには、緑色の体をした、小さな人型の魔物、ゴブリンがいた。姿を確認した瞬間、
「ギッ?ギギッ!」
「!」
どうやら、焚き火の光でできた影と、近づきすぎたことで自分たちと違う匂いがしたとわかったようだ。
急いで銃を構えると、三匹のゴブリンが槍、剣、弓を持って攻撃してくる。見た目はどれもボロボロで、剣に至っては折れたのだろう。短めだった。一番近くにいる槍を持ったゴブリンを撃とうとしたとき、奥から矢がとんできた。運良く当たらなかったがそちらに気を取られてしまう。その隙を狙って剣を持ったゴブリンが足を斬ろうとするが、切れ味が悪すぎて、叩きつけるような形になる。
「うっ!」
狼と猪との戦闘で足がボコボコになっていたところにいくら切れ味が悪いとはいえ、金属だ。痛くて声が出てしまう。
痛みを我慢して、何歩か後ろに素早く下がり、銃を構える。この三匹の連携を崩すために、まずは弓を撃ってくる個体を撃ち抜く。
パァン!
と音が響いて、頭から血を流しながら弓を持ったゴブリンが倒れる。その音と、仲間が倒れたことに驚いたのか、残りの二匹に隙ができる。
次は、リーチの長い槍を持ったゴブリンを撃ち抜く。こちらも弓持ちと同じように倒れる。
最後に剣を持ったゴブリンだ。もう後は簡単だ。今までやってきたことをもう一度やるだけだ。撃ち抜く。
パァン!
ドシャっ
しかし、急所を外れたようで、
「ギ…ギギ…ギ…」
と苦しむような声を上げる。外したことに驚いて、とっさにもう一発を撃つ。
パァン!
今度は命中して死んだ。剣を持ったゴブリンは、苦しそうな、俺を恨むような顔をしている。
このとき、俺は理解した。いくらゴブリンとはいえ、醜いとはいえ、知性を持ち、感情を持ち、意思を持ち、ついさっきまで生きていたのだと。人間となんら変わらないということを知った。そして、俺のしたことは人殺しと大差ないことを知った。
しかし、生きるとはそういうことだとも理解した。
こうして俺の異世界生活一日目は終わった。
一一一一一一一一一一
チチチチチチ…
鳥の声がする。目を開けると、どうやら朝のようだ。何事もなく一晩を過ごせたようだな。
さて、今日はどうしようかなんて思ってたところにラーシアの声がした。
(昇進条件:ゴブリンを3体討伐をクリアしました。階級が上がります。昇進:少尉→中尉
武器種解放:サブマシンガン)
ステータスがどうなっているか気になったので、見てみる。
「ステータス」
__________
名前:元谷将人 年齢:18 種族:人間
階級:中尉 武器種:HG SMG
体力 650
魔力 650
攻撃 650
防御 650
魔攻 650
魔防 650
スキル【兵器開発者】【不明】【気配察知】
__________
新しくSMGが召喚できるようになったみたいだ。ここは、俺の好きなベルギーの銃器メーカーFN社のSMG、というより厳密にはPDW になってしまうが、P90を召喚する。
この銃は、よくSMGで使われる9mmパラベラム弾ではなく、独自に開発された5.7×28mm弾を使用する。この弾は9mmパラベラム弾と比べて貫通力が高いという特徴がある。
また、この銃の欠点として、構造的に、弾数を増やせず、ワンマガジンで50発で固定されているところや、ブルパップ方式なので、重心が後ろによっているといったものがある。
SMGと弾薬を共有できるように、HGも召喚する。GLOCK17を戻し、召喚するのは、
Five seveNだ。この銃もFN社が開発したもので、P90と同じ、5.7×28mm弾を使用する。利点はP90と同じく、ボディーアーマーを貫通できるくらい貫通力が高いことだ。
欠点は、弾丸が9mmパラベラム弾と比べて長いので、マガジンが大きくなり、持ちにくくなる点と、マズルフラッシュが大きい点だ。
欠点こそあるが、基本的にFN社の銃は品質が高いので、信頼できる。
銃を召喚したので、せっかくだし試し撃ちをしようとしたところで、
ぐうううぅ〜
となんとも気が抜ける音がした。空を見てみると太陽?らしきものがちょうど真上あたりに来ていたので、お昼を食べる。基本的に軍隊に関係するものなら召喚できるはずだったので、海自の特徴でもある、カレーライスを召喚する。なんとスプーンまでついていた。
一口食べてみる。
「うんまっ!」
ほぼ一日中何も食べてなかったのもあるだろうが、今まで食った料理の中で一番うまかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
3話目です。
近況ノートの告知を忘れていました。
近況ノートを見てくださると、改稿したことなどが一目でわかるので、是非御活用ください。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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