第2話 初めての戦闘と1つ目のスキル
鬱蒼とした暗い森がいきなり目の前に現れ、少し困惑していると、どこからともなく
スンスン…
と何かが鼻を鳴らしている音が聞こえてきた。そして、こちらに近づいてくる気配に気づくと同時に
グルルルル…
と喉を鳴らしてこちらに近づいて来た何かの姿が少しの日の光に照らされて、視認できるようになる。現れたのは、灰色の体毛を持つ、大きな狼だった。俺はその狼から出る、
言葉で説明しづらい圧迫感を感じた。逃げようにも、木の根が張っていて逃げられないだろう。どうしようか考えているとき、狼が
「ガウ!」
と言いながら襲いかかってきた。当然ながら、ただの学生が避けられるわけもなく、右足を爪で裂かれる。
「ぐぅっ!」
勝てない。殺される。あのクソどもが言っていたように俺は無様二食われて死ぬのか…
そんな感情が湧き上がってくる。
(本当にそれで良いのですか?)
「っ!」
突如として頭の中に自分のものではない声が語りかけてくる。
(このまま餌として喰われて終わり。貴方は本当にそれでいいのですか?)
「…嫌だ!いいわけ無いだろ!ふざけんな!
なんで俺が死ぬんだ!死ぬべきはあのクソどもだ!こんなんで終わってたまるか!」
(…スキル保持者の強固な意思を確認、スキルの発現を許可します。スキル名『兵器開発者』の発現成功)
何か言っているが重要なのはスキルが一個発現したことだ。名前からして武器が手に入るようだ。早く何か武器を…
「ガアァッ!」
「あぐぅっ!」
右足に続けて左足までやられた…考えてる暇は無い。
「うおおぉっ!」
パパァン!
「ギャウッ!」
ドサッ…
「え…?」
死んだのか…?手を見てみるとそこには、黒い拳銃、
GLOCK17が握られていた。
「うわぁっ!」
びっくりして尻もちをついてしまう。何で俺が銃を持ってるんだ?王城の中しか知らないが、おそらく中世ヨーロッパのような異世界になんで銃があるんだ?そうやって慌てていると、
(貴方の強い相手を殺害する意思を確認しました。生死を分けるような危険な状況と判断。スキルの意思により、GLOCK17を召喚しました。)
「っ!」
また別人の声がした。それよりも銃を召喚?どういうことだ?そしてあの狼は本当に死んだのか?狼を見ると、見るも無惨に頭部を吹き飛ばしていた。
「うええぇっ」
あまりにもグロテスクで吐いてしまった。
そうして十分ほど経ってようやく落ち着いてきた。そして次に確かめることはスキルの中身だ。さっきの戦闘でスキルが発現したようだし、どうなっているか見たい。
「待てよ…どうやって見たらいいんだ?」
(ステータスと唱えてください)
また声がした。
「ステータス」
__________
名前:元谷将人 年齢:18 種族:人間
階級:少尉
体力 100
魔力 100
攻撃 100
防御 100
魔攻 100
魔防 100
スキル:【兵器開発者】【不明】
__________
おそらく、念じるか、声に出すかであの声が答えてくれるのだろう。そう考えた俺は、分からないことを声に出して聞いてみる。
「スキルの声!お前は誰だ!」
(私はこの世界の神の一柱である、ラーシアです)
「神?神がこの世界にはいるのか?」
(はい。極稀に教会に神託を行ったり、人の魂を死後、安全な輪廻を送れるようにするのが仕事です。)
「…正直胡散臭いが信じよう。それから、この【兵器開発者】っていうスキルの詳しい効果を教えてくれ。」
(スキル名【兵器開発者】の効果は主に、貴方の世界で作られたありとあらゆる兵器を召喚できます。ただし、【階級】を上げないと、使える武器種が増えません。また、「兵器」という名前ですが、基本的に貴方の世界の軍隊が使うものなら基本召喚できます。)
「じゃあ、薬や食料、寝袋なんかも手に入るってことか?」
(はい。また、薬などは階級を上げずとも使用可能です)
「じゃあ、痛み止めと消毒液、あと包帯をくれ。」
(わかりました)
すると、手の中に痛み止めと消毒液、包帯が現れる。裂かれた両足に消毒液をかける。
なかなかに痛いが、少し我慢して血を止めないように気をつけながら包帯をまいていく。
次にすべきことは…やはり現在地の把握だろう。
「ラーシア、ここはどこだ?」
(終の森と呼ばれる、強力な魔物が多数いる地域です。また、この地域の魔物は同種でも、一つ上の強さを持ちます。円形の森で中心を見たものはいません。現在地は、終の森中心部付近です。)
やはり、魔物もこの世界に存在するようだ。あの狼もそうだろう。そして、中心部付近ということは、この森の中でもかなり強い魔物がいるということだ。どっちにいけばこの暗い森を出られるのだろうかと考えていた矢先、
「ブモオオッ!」
と雄叫びを上げて突進してくる猪がいた。とっさに体をひねって避ける。木にぶつかって気絶する!そう思ったとき、なんと急なUターンをしてきた。また突進されると思ったので全力で逃げる。こちらを餌だと思っているのか、
ズドドド…
とすごい勢いで追ってくる。段々と距離が縮まる。逃げられなさそうなので、ラーシアに、何が使えるか聞いてみる。
「ラーシア!猪に追われてる!使える武器は!」
(現在使えるのは、ハンドガンのみです。どれを召喚しますか?)
「なんでもいい!使えるならそれで良いから早く!」
(わかりました。GLOCK17を召喚します)
手の中にGLOCK17が現れる。距離は縮まったが、構えるくらいの時間はある。スライドを引いて9mmパラベラム弾を薬室に装填する。両手で銃を挟み込むように持ち、両親指を左側に出す。右足を少し引いて、前傾姿勢になる。両目を開いて照準を合わせる。
トリガーに人差し指をかけてゆっくりと引き絞る。最後まで引くと、
パァン!
ドサッ…
という音がして猪が倒れる。
はぁはぁ…
俺の荒い呼吸が耳に届く。また魔物が来るかもしれないので、いそいで逃げる。方向はどっちでもいい。とりあえず遠くへ逃げる。
十分ほど走って立ち止まり、此方へ近づく気配がないかを探す。すると、
(スキル【気配察知】を獲得)
というラーシアの声が頭の中に響いた。
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