第五十五回 O・TA・KU

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第五十五回ですが、宣言どおり前回に引き続き「オタクの国、日本」をテーマにお届けしたいと思います。


 では、早速お送りしますッス!




■それぞれの国での受け入れられ方 ~フィリピン編~


 フィリピンでの「OTAKU」文化事情を語るにおいてどうしても外せないのは、往年のロボットアニメ『ボルテスファイブ』の存在でしょう。



 それまではアメリカ産アニメしかなかったフィリピンの子どもたちにとって『ボルテスV』は衝撃でした。その衝撃たるや、最高視聴率58パーセントという数字が物語っています。以降、「メイド・イン・ジャパン」のアニメが次々輸入されることになりました。


 ですがその一方で、一部の大人たちの間で「反ボルテスV」的思想が浮かび上がります。定番の「暴力的」や「非道徳的」といった意見にあわせ、「夢中なあまり勉強をしなくなる」や「キャラクターグッズをせびられる」といった意見などががりました。


 その中でとりわけ特異だったのが、第二次世界大戦後の反日感情に由来する意見で、ボルテスVの必殺技「天空剣」がサムライソードを連想させるとか、旧日本軍の行為を正当化するものである、といったトンデモナイものまで飛び出します。そんなアホな……と思われるかもしれませんが、その流れは徐々にフィリピン全体を揺るがし、遂に時の大統領・フェルディナンド・マルコスは『ボルテスV』の放送中止を決定するまでに至りました。



 そして、皮肉なことに『ボルテスV』の放送が再開されたのは、エドゥサ革命によってマルコス政権が倒れたあとでした。この当時「ボルテスVを放映させるために革命が起き、マルコス政権は倒された」というジョークが生まれましたが、実際にはそのような背景はありません。


 ただ、これがまことしやかに語られるほど、フィリピンの人々にとっては衝撃だったのです。



 そして時は流れ、二〇二〇年のフィリピンで、テレビシリーズ『Voltes V Legacy』の制作が発表されました。実写版の大迫力映像は、拝見された方も多いかもしれませんね。


 また現在もフィリピン陸軍の軍歌は、堀江ほりえ美都子みつこの歌うオープニング曲『ボルテスVの歌』です。かつてライブでフィリピンを訪れた堀江美都子さんは、国賓こくひん級の歓迎を受けたそうです。


 ちょっと変わったアニメ史の1ページですね。



■オタクとエセオタク


 あとの国々に関しては、そこまでくわしくございませんし、特筆すべきことも見つからなかったので、話を国内に戻しましょう。


 自他ともに認める「OTAKU」であるこけばしとしましては、この「〇〇オタク」という言葉が一般化しすぎてしまって、本来の意味を失いつつあることを懸念しています。



「あー先輩、あたしーけっこーオタクでぇー」

「マジ? そうなん?」

「ワンピースとか観てますしー、この前、漫喫行った時なんかー鬼滅読破しちゃってぇー」

「うっそ! 意外じゃーん!」



 こんな会話を耳にするたび、断腸の思いでギリギリと歯ぎしりなんぞをしております。


 物凄い偏見であることが分かっていますけれど、こけばしはえてこう言いたい!



「ワンピースにハマっているヤツに、オタクはいない!」と。



 黒いコンパクトワンボックスカーに乗り、リアウインドウに海賊旗のステッカーを貼って、フロントウインドウにUFOキャッチャーで乱獲らんかくしてきたぬいぐるみを白いフェイクファーの上に並べているDQNドキュン連中が、軽々しく「オタク」を名乗るのは許せないのです。はい。


 これが、過激な論調であろうことは充分理解しております……。



 しかし!

 全面的に同意ではなくても、なんとなく共感いただける方も多いのではないでしょうか!


 オマエら、ゆーて「ワンピ」以外のアニメ観てないやん!

 健全な時間に、健全なアニメしか観てないやん!



 かつてはこれが『ドラゴンボール』だったように思います。


 純粋ピュアな(重複しとるぞ)こけばしは、「え! オタクなん!? なに好き!?」って喰いついてしまい、盛大に爆死した記憶がございます。



「えーw ワンピってwww あーし、ワンピース以外、? 知らないしーwww」

「あっ……(察し)」



 う……っ! 頭が……っ!

 くそくそくそくそぉおおおおお!



■決して開けてはいけないフォルダがあるかないか


 ……はい。

 ちょっと落ち着きましたでございますです(混乱中)。


 あぶねえあぶねえ。

 もうちょっとで、過激なBL話とかしそうになったじゃねえかよ(すんな)。



 極論、「オタク」という生き物は、生命の危機に瀕した時に、「パソコンの中のあのフォルダだけは……!」という絶対領域がない限り、名乗ってはダメです。しらんけど。


 前述のとおり、かつてのバッシングから立ち直り、奇跡的に市民権を得た「オタク」ですが、真の意味での解放はまだまだ遠いなぁ……というのが、こけばしの意見です。日本人特有の「謙譲の美」と言いますか、自分を若干卑下ひげすることで周囲からの評価を上げる、という妙なしきたりのせいで、「オタク」という便利なワードが利用されている感は否めないのですよね。


 うーん……。



■オタクカルチャーは日本固有の文化的財産である


 さまざまな国が「ジャパニメーション」や「MANGA」に触れ、それに憧れ、追随しようと奮闘していますけれど、これだけの歴史と時間があっても、それを成し得た国はありません。


 ということは。


 これらのオタクカルチャーは、もはや国有財産、唯一世界に日本が絶対的アドバンテージを取れる文化遺産なのではないでしょうか。


 この発想を飛躍させつつ、近い将来に来るであろう未来を描いたのが、



 ■お嬢様、未来のビジネスマンに「宅検」は必須資格ですよ! ~オタク・カルチャーは未来を救う!?~

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887662618



 なのです(ここ、とっても大事なところです)。


 一応、フィクションではありますけれど、気持ちや考えとしては超真剣な一作です。本気でこうなる未来を予想し、危惧しております。ですから、歴史や成り立ち、その背景などをくわしく語っています。


 ま、これも、かつて公募参加時に「あなたが書く必要ありますか?」と講評をいただいたんですけどね……。誰かが書かないと、のちの世に残らないから書いてるの! と言いたい。



 よく勘違いされますけれど。


 本作は「宅地建物取引士」資格試験、通称「宅」のお話ではなく、「オタク・カルチャー検定試験」、通称「宅」というまったく別モノのお話でございます。



 毎話、ラストに実際の「オタク・カルチャー検定試験」に登場する問題(クイズ)を掲載しておりますので、こちらに挑戦してみるのも乙かと。いや、ガチィで面白いぜい。




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。

 ではでは、次回は別のテーマにて。


 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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