第五十四回 ここがヘンだよ、日本人!

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第五十四回ですがー。

 こけばしは特段愛国者でもなければ、国家転覆を狙う思想もございません。


 ただ、洋行帰りのお友だちとお話しする機会が多く、そのたびに「日本人って変わってるんだなぁ」と深く感じましたので、それをテーマにしようと思います。


 では、早速お送りします。




■これが日本人だ!(解剖図はナシ)


 の国――日本に住まう者たちは皆、メガネをかけた出っ歯で、カメラを首からいつも下げているが、その実態は、ちょんまげに刀を下げた空手のブラックベルト(黒帯)持ちのネイティブ・アサシンある。また、何もなくても年中お辞儀をしている実に奇妙な人々である――。



 第四十三回で登場しました、いわゆる「ステレオタイプ」の日本人像がこちらです。


 さすがにこんなイメージはないでしょw とお思いの方がいるかもしれませんけれど、それはメディアのチカラと、幼い頃から慣れ親しんできた「世界地図」の影響が強くあります。



 いわゆる「スタンダードな世界地図」においては、日本は一番右端にぽつんと書かれています。より東に位置するのは、ぐっと目線を下げてオーストラリアとニュージーランド、あとは上の方にロシアの最東端があるだけなのです。しばしば日本のことを「極東」と呼ぶことがありますけれど、これがその理由のひとつです。


 逆に言えば、どうして「日本人にとっての端っこの国」スペインが、大航海時代に植民地を獲得したのか、なぜ遠く離れた(ように思える)ブラジルにおいて今でも公用語としてポルトガル語が使われているのか、その理由は「グローバル版世界地図」を見れば納得がいきます。ヨーロッパと南米って距離ありすぎじゃね? という錯覚も見事に解消します。


 だから冒険家・マルコポーロは、世界の果てを見たいと願い、ようやく念願かなって最果ての地、世界の一番端にある「黄金の国・ジパング」に辿り着いて歓喜したんですね。だって、その先はもう海しかないんだもん。


 アメリゴ・ベスプッチも、クリストファー・コロンブスも、西を目指せば、世界の反対側、つまりアジアに着くと信じ込んでいました。だからこそ、「西インド諸島」なんて命名しちゃったんです。実はカリブだったのに……。アメリカ先住民族が「インディアン(インド人)」と呼ばれたのも同じ理由でしたよね。



 話を元に戻しますとー。


 いまだに日本は「世界の端っこの国」ではあるのです。

 ですから、あまり馴染みのない人々がいるのは、ある意味当たり前のことなんですね。



■日本人の特殊性(癖?)


 それでも、日本はたびたび世界に名を轟かせることになります。


 最初の波は、やはりSONY。

 いえいえ、千葉真一しんいちではありませんよ?


(脚注:千葉真一のハリウッド・ネームは「Sonny Chiba」。当初は「ソニー」と名乗っていましたが、ソニー社よりクレームが入り、「サニー」に変更した経緯があります。「Sonny」とは「~ちゃん」的なニュアンスの言葉で、俳優界での「千葉ちゃん」という愛称を英名にしたとありますが……まあ、意図的ですよねw この頃、一九七六年当時は、ソニー社が家庭用VTR「ベータマックス」を発売した時です。画期的な発明となった「ウォークマン」はもう少し後で、初出は一九七九年、百五十万台を超えるヒット商品となります)


 そして今は、「OTAKUの国」として広く知られています。


 矢野経済研究所(東京)の二〇二三年度の調査によれば、国内で最も多いオタク人口は「アニメオタク」の約六百八十五万人です。ついで「漫画オタク」(約六百四十八万人)と続きますが、世界的にはおおむねこの二つのジャンルを総合して「OTAKU」と呼んでいます。


(脚注:我々日本人からすれば(今や※)特定のジャンルに対するフリークを指す言葉となったので、「鉄道オタク」やら「アイドルオタク」、「美容オタク」に「ディズニーオタク」など、そのジャンル・範囲は多岐にわたります。ちなみに言語学的には、「オタク」は「ひとつの物事にしか興味を持たない人」で、「マニア」は「ひとつの物事に集中する人」だそう)


(脚注:元々「オタク」とは、一九八〇年代のサブカル時代に広まった言葉です。「コミケ」などに集う若者たちが、同志を呼ぶ際に使う呼称を揶揄やゆして「御宅おたく」と命名したのは中森明夫あきお氏でした。そして既出の宮崎つとむが起こした「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」をきっかけに、図らずも一般人が知る蔑称べっしょうとなっていったのです。それに比べたら、今は平和ですよねー)


 世界に目を向けると、オタクが多い国として次に名を連ねるのは、アメリカ。以下、フランス、フィリピン、シンガポール、台湾と続き、韓国、ブラジル、タイ、オーストラリアがトップ10となっています。


 アメリカなんて、アメコミがあるし、アニメといったらディズニーだし、ゲームだってあるのに……と思いますけれど、そこには「越えられない壁」があったりします。


 ちょっとここで、各国の背景をこけばしになりに分析してみますよー。



■それぞれの国での受け入れられ方 ~アメリカ編~


 まずアメリカですがー。


 アメリカ人にとって、「ジャパニーズ・オタク・カルチャー」はとても魅力的なようです。アメリカ人の「アイドル・オタク」だってフツーにいます。一番近年の「オタク」文化を理解している国、と言えるかもしれません。


 元々アメリカでは、同様の閉鎖的でマニアックな人種のことを「Nerdナード」や「Geekギーク」と呼んでいました。違いとしては「Nerd」がいわゆるアメフト部キャプテンのイケメンとチアリーダーのモテ女に代表される「Jockジョック」の対義語、ネガティブなイメージを伴った否定的な呼称なのに対し、「Geek」は卓越した技術・知識を有した者という肯定的な呼称だということです。正確にはどちらも「オタク」に適した訳語ではなかったのですね。


 今や市民権を得たアメリカの「OTAKU」は、『ポケモン』と『ドラゴンボール』が大好きです。


(脚注:いまさらすぎて聞けない話として、アメリカでは「ポケットモンスター」の名称は使用できません。そのまま訳すと「僕のポケットの中の(その隣くらいにいる)モンスターだよ♡」というちょっとおセンシティブなワードになるためです。「ジョイ・スティック」も同様)


「OTAKU」はもちろん、「MANGA」などもそのまま通じます。おかげで「HENTAI」というのも通じるんですけど……(美少女えちちアニメのことを指します)。


 名優、ハリソン・フォードが、来日するたび息子のためにガンプラを大量に購入するのは有名ですし、クエンティン・タランティーノ監督は、二十二歳の頃に働いていたビデオショップで日本の任侠にんきょう映画などをむさぼるように視聴しており、その憧れから『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』のヒット作を撮影したと言います。


 ちなみに、コスプレ文化についても元々ハロウィンなどの下地があったアメリカでは大人気のようで、ニューヨークでは毎年、大規模なイベントが開催されています。


 ある意味、最も日本人に近い「OTAKU」なのが、アメリカ人と言えるかもしれません。



■それぞれの国での受け入れられ方 ~フランス編~


 次にフランスですがー。


 フランス人は、特に漫画が大好きです。漫画消費国として日本の次に挙げられるほどで、これは元々「バンド・デシネ」という漫画文化があったためです。日本の漫画、アメリカのアメコミ、そしてフランスのバンド・デシネで、「世界三大コミック産業」だって知ってました? エルジェの『タンタンの冒険』という作品を知っている人もいらっしゃるかもしれません。


 二十一世紀に入ってからは、フランス語オリジナルの日本風「バンド・デシネ」が登場し(ややこしいな……)、「マンフラ」、「フラマンガ」と呼ばれていたりします。「フランス」と「漫画」を合成した造語なんです! 面白いですよねー。


 フランスでは、『ドラゴンボール』、『キャプテン翼』、『シティハンター』が人気です。日本のアニメも頻繁に放映されており、小さな子どももそれを見て育つ、というほどです。


 また、コスプレに関しても、二〇〇〇年より「JAPAN Expo」を毎年開催しており(二〇年、二一年はコロナ禍により延期)、二十五万人を超える参加者で盛り上がっていたようです。すげぇ!




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。

 ぜーんぜん語り足りないので、次回もこのテーマにてお会いしますわ!(フランスの影響)


 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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