第五十三回 夢の中の……

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第五十三回ですが、前回に引き続き、需要があるんだかないんだか分からない「オカルティックなお話」をテーマにお届けしたいと思います。


 では、早速お送りしますよ……。




■既視感と未視感


 皆さんは「デジャヴ」という言葉の意味をご存知でしょうか。


 いやいや、愚問でしたね。


 モノカキさんなら一度は目にした耳にしたことのある言葉だと思います。日本語では「既視感」と書き、



「実際には一度も経験したことがないのに、既にどこかで経験したことのように感じること」



 を意味しています。


 ちなみに反対語にあたるものが「ジャメヴ」。日本語では「未視感」と書き、「日頃から見慣れたはずの光景が未知のもののように感じられること」を意味しています。うーん、言葉で書くのはカンタンだけれど、それって一体どんな感じなんだろ……?


 ちなみにこけばしは、しばしば「デジャヴ」を引き起こします。


 珍しい体質……かと思いきや、日本人の約六割が体験したことがある、と答えていますから、そこまで奇異な体験ではないのでしょう。ただ……あまりまわりにいなかったのは事実です。



■たとえばこんな、デジャヴ


 たとえば、です。



 ・はじめての北海道旅行で、レンタカー運転中にカーブを曲がる前から何があるか知っていた


 これ、「こんな感じの風景で~」レベルじゃなかったんですよね。そこに何のお店があって、店名は〇〇、ってところまで鮮明に浮かんでいて、思わず「あの、〇〇だ……」と呟いた時に、その看板が記憶の中のそれと重なるように「視えて」、ちょっとゾクッとしました。



 ・友人とレストランで食事をしている最中に、ウエイターがグラスを落とすのが分かっていた


 こういうケースの時って、ドライブレコーダーみたいに、数分前から気づくんです。ああ、来た……! みたいな感じで。隣のテーブルの老夫婦の会話も、店内のBGMも何もかも、記憶をなぞるようにリプレイされるんです。で、反射的に落ちてきたグラスを掴んでました……。



 他にも例を挙げるとキリがないのですけれど、そのたびこけばしは、ビクッ! として動けなくなります。凄く気持ち悪いんです、その感覚が。誰に話しても共感されないし、理解もされない。


 まあ、前回登場したA君だけは信じていたようですけれど……アイツは嫌だwww



 で。

 ある時、ふと気づいたのです。


 これ、「夢研ゼミ」でやったところだ……! と。



■実は……予知夢だった?


 かくいうこけばし、ある大病を患う前は、朝目が覚めると夢で見た光景をキレイさっぱり忘れてしまう体質でした。



 んー? なんだったっけなー?

 なーんか、タノシー夢だった気がするんだけど……??


 そんな感じです。



 ただ、学生時代のある時「髄膜炎ずいまくえん」という病気にかかりました。

 今調べると、ホント、ゾッとするのですけれど、



「この疾患は早期に診断され、治療が適切に開始された場合でも、8~15パーセントほどが症状発症後二十四~四十八時間以内に死に至ります。未治療の場合、髄膜炎菌性髄膜炎は致死率が患者の50パーセントとなり、生存者でも10~20パーセントにおいて、脳障害、難聴、身体障害などが引き起こされます」(厚生労働省HPより抜粋)



 という、かなりえらいこっちゃな病気でした(吐血)。


 幸いにも後遺症は残らず(残ってるだろって? お黙りっ!)、平穏な日々に復帰することはできたのですが、その時以来、突発的な片頭痛と見た夢が記憶に残る体質になったのでした。



 とはいえ。


 ある時ハッとひらめくまでは、その夢と、日常生活中にまれにしばしば起こる(どっちだよ)「デジャヴ」を関連付けて考えたことはなかったのです。夢が記憶に残る、といっても、特に意識をしていなければ三十分~一時間もしたらたちまち薄れてしまうようなのですね。



「『夢日記』をつけてみれば?」



 そうアドバイスしたのはA君でしたが、映画『メメント』や『パプリカ』を観たこけばしにはとてもそんな度胸はございません。だって……突如、「君ぃ! オセアニアじゃ常識なんだよ!」とか言い出すようになったら怖いですもん……。やべえッス。



■夢の中だけに存在する「六人」


 それでもそう意識すると、今まで「デジャヴ」だと思っていたものの大半は、深夜のお勉強、「夢研ゼミ」で事前に予習したところばかりだということに気づきました。それからみるみる成績がアップ……するワケもなく、気味の悪さだけがマシマシになります。



 で。

 またふと思ったのです。


 定期的に夢に登場するあの「五人」って誰なんだろう? って。



 思い起こせばこけばしは、人生の岐路に立つたびに、夢の中でその「五人」と会っていたのです。高校・大学受験の時、失恋した時、就職の時、大好きだった叔父が亡くなった時――必ずと言っていいほど、その「五人」はこけばしの夢の中に現れ、まるで前回の続きからはじめるように話すのです。



「ああ、やっと来たね」

「元気だった?」

「まあ、そんなに驚いた顔してないで、座りなよw」

「ほーら、ここー、空いてるよー」

「けっ、あいかわらずしけた面してんな」



 男の子が三人、女の子が二人。会うと、「ああ、懐かしいな……」と心がたちまち嬉しくなるのですけれど、その「五人」の姿形だけは、どうやっても記憶に留めておくことができないのです。会話の内容も、他の夢と違って、薄れていってしまうスピードが格段に速いのです。


 記憶には留めておけないけれど、たしかに同じ「五人」だと断言できます。今まで現実世界のどこかで会ったことはない、それもまたはっきりと言い切れます。


 けれど、それらを証明する術は、今のこけばしにはありません――。




 ひさびさにこんな話を思い出し、つらつらと書きました。


 最後に出てきた「夢の中だけの六人」の話は、どうやら「継続夢」という部類らしいですね。やっぱり時代が変わると、研究もそれなりに進むんだなあ、と感心していたりします。




 おっと、そろそろお終いの時間です。


 このテの話は、どうやっても創作感が拭えなくなりますので、この辺でお終いにしましょう。なお、こけばしはホラー系が苦手です!(大事なこと)。なので、前回、今回の話をネタに使いたい! と言う方はご自由にどうぞ。いないと思いますけどw


 ではでは、次回は別のテーマにて。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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