第五十二回 霊感なんていりません!

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。



 さて第五十二回ですが、ちょっと眉唾まゆつばなオカルティックな話題です。



 しばしば「霊感がある/ない」というのが話題に挙がると思いますけれど、皆さんはいかがでしょうか? ちょっと時期は外れましたけれど、夏になると決まって「肝試し」や「心霊スポット」に行かれたりする方も多いかもしれませんね。


 かくいうこけばしさんは、ホラー関係が大の苦手です……。


 洋モノ(言い方!)は案外大丈夫なのですけれど、とにかくもー和風テイストが苦手なのです。ウッディ・ハレルソンの『ゾンビ・ランド』なんて大好きで、続編の『ゾンビ・ランド:ダブルタップ』も大変楽しく拝見しました。でも、『貞子』とか『呪怨』は予告ムービーすら観れません。なのに、とある理由から『心霊スポット』巡りには必ず参加させられました。


 てなワケで、今回は「霊感なんていりません!」をテーマにお届けしたいと思います。


 では、早速お送りします!




えないのに感知できるスキル保有者・こけばし


 見出しから「えーw」という声が聴こえてきそうですけれどー。

 困ったことに、こけばし、いわゆる「霊感」というのがあるらしいのです。


 ただし、まったくもって「視えた」ことはございません。

 なのに、いわゆる「いわくつきの場所」に行くと、身体が勝手に反応してフリーズします。


 このことに気づいたのは、神奈川県・鎌倉市にある――いや、かつて存在していた、一軒の廃屋に友人の車で連れていかれた時です。あまりくわしくは場所を記しませんが、数年経った頃に再訪した際、そこがすっかり取り壊されていて、ステキな小道のある低層マンションになっていたのには驚きました……。目印のファミレスがあるのですぐに分かるんですよね……。



 経緯と詳細を記します。



 友人のひとりに、とてもとても「心霊スポット」が大好きなヤツ――A君としましょう――がおりまして。普段は仲が良いのですけれど、真夏の深夜に電話がかかって来る時には大抵「ソレ系」のお誘いなので、殺意すら感じておりました(不穏)。



「ドライブしようぜ!」

「いいですけど……アッチ系はヤですからね!」

「行かない行かないwww」



 で。

 気付いたら現地でした(血涙)。



 総勢四人の乗った車は、すぐ目の前のファミレスの駐車場には入らず、その少し先の小道を曲がりました。で、鬱蒼と草木、主に竹が生い茂った、いかにもヤバそうな一軒の廃屋の裏手に停車しました。そこで事前情報として、A君はこのいわくありげな廃屋の背景を語るのです。



■謎多き廃屋――鎌倉市・某所


 ――昭和初期頃に建てられた腕の良い外科医の家で、軍にもツテがあった名医らしい。表からの入口は潰されているけれど、裏からなら屋敷の中まで入ることができる。かなり広い屋敷だけれど、不思議な点がいくつかあるんだ。


 まず、屋敷のカタチがロの字型をしていて、外から見えない位置に中庭がある。そして、中庭には見たこともない奇怪な姿のブロンズ像が建っていて、その隣には井戸、そして鉄板で塞がれた地下室への入口が隠されてるんだよ。


 地下室には何があるかって? 僕はまだ見てないけれど、そこらじゅうの畳が腐っていて、あるカップルがそこから地下室に落ちたことがあるらしい。鉄の扉の外からは、厳重に鎖と南京錠で施錠されていて、一晩出れなかったみたいなんだ。ようやく助け出された時には発狂していたそうだよ。なんでも、軍の依頼で、人体実験なんかを裏でやっていた、ってウワサがあるんだ。今日、いけたら行ってみようと思ってるけどね――。



 こいつは馬鹿か――こけばしは思っていました。

 ……と言いたいところですが、実はそれどころではなかったのです。



 そんな解説を嬉々として語るA君を尻目に、こけばしの身体はいわゆる「金縛り」にあったように、ぴくり、とも動きませんでした。まぶたすら開けられない有様です。声は出ず、隣に座っていた友人のB子にも合図すらできませんでした。その場所に停車する直前からそうなってしまったのです。



(ちょ――置いてくなぁああああああ!)



 と声にならない叫びを上げているうちに、「なーんだ、寝ちゃってるのかー」と笑いながら、友人たちはこけばしを車内にひとり残し、鬱蒼と生い茂る竹藪の中へ消えていったのです。



■こけばし、再起動す


「でぇえええええい!」



 ようやく身体の自由が利くようになったのは、彼らが探索から帰ってきて、その場から500メートルほど離れた頃でした。



「もう! ホント、ヤだ! どうして助けてくれないのさ!」

「……はぁ!?」



 そこでこけばしは、自分の身に何が起きていたのかをすっかり話しました。B子やC君はたちまち震え上がります。廃屋の中は、A君が話していたほぼそのままの状態だったようで、無謀にも地下室のある通路を降り、行けるところまで行こうとしたらしいのですけれど、膝くらいまである流れ込んでらしき来た雨水に阻まれ、やむなく諦めたそうです。行くなよ……。


 ただその時、A君だけは、にやり、と笑っていたのを覚えています――こいつは使える、と。



■非道なA君の所業――語りかける写真の中の女


 それからしばらく経ったある日、いつものようにつるんでいたこけばしたちはA君の家に遊びに来ました。その頃、恒例となっていた徹夜のゲーム大会です。


 ただ、「ついでに面白いモノを見せてあげる」とA君が言っていたのが引っかかりました。



「はい。こけちゃん、どう?」



 A君にはお兄さんがいました(安心して下さい、今もいますw)。手渡された写真には、お兄さんと仕事の仲間らしきメンバーがBBQを楽しんでいるシーンが写し出されていました。



「いいなー、楽しそう!」

「これ、どこ? 河原っぽいけど」



 B子とC君は深夜にありがちなテンションで盛り上がっていましたが、こけばしは違いました。その時点で見る前から「写真に不審な点」があることを察知していたのです。



「ほれ?」

「あ……う……見れ……ない……。こっち……近づけるな……!」

「……やっぱりマジなヤツだ、これ」



 不思議そうなB子とC君とは対照的に、A君だけは確信を得たかのように、にやり、と笑いました。そして、状況の分からないふたりに、写真の左上隅の方を指さして教えます。



「ここ……なんか顔みたいなの、映ってない? で……良く見ると……」

「うわっ! ……なんか動いてない?」

「喋ってる……のか……? 嘘……だろ……!?」



 そうなのです。到底信じ難いことなのですけれど、お兄さんの左隣りに立っている男性の、さらにもう少し左上に、セミロングの女性のような顔が写っていたのです。そして、その口元が、不規則にもごもごと蠢いていたのです――何かを伝えようとでもするかのように。


 残念ながら、その写真はもうA君の手元にもありません。

 除霊をするために、とある霊能力者の方に預けてしまったそうです。



 それから数日間、A君の家のベランダ――団地の一階でした――に、こんこん、と深夜ノックする音が鳴り続け、「怖いから来て」と頼まれたこけばしが、なぜかその状況下で『バイオハザード』クリア耐久をさせられたりという、実にファンキーな後日談があるのですが――。


 思い出したくもないです、はい。

 ガチィでもう……嫌すぎるぅううう!(涙)。



■「心霊スポット」なんて大嫌い!


 その後もA君は、いわくつきの場所を見つけてきては、こけばしをいわゆる映画『ゴーストバスターズ』の「PKEメーター」代わりに連れて行きまして、「こけちゃんが平気そうなので、ここはガセ」だの「ここはガチィだ! いひひひ!」だのと一喜一憂しておりました。


 ……お前も行くなって?

 毎回、「ただのドライブだから」って言いやがるんだよ、アイツ!!(怒)。


 ホントに夜景スポットだったりすることもありましたし、当時はまだ免許もなかったので仕方なかったのです、はい。


 B子には、



「こけちゃんって……ホント好きだよね、心霊系……」



 って言われてたけどな!

 違うから!




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。

 なんだか昔を思い出してぐわぐわしてきたので(謎)、次回もこのテーマにてお会いしましょう。


 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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