第四十四回 原稿推敲伝

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第四十四回ですが、なにやら壮大なストーリーがはじまりそうではじまらなさそうなタイトルを見てお分かりのとおり(なるほど分からん)、やったぜ、脱稿! となった時からはじまるもうひとつの戦い、「推敲すいこうについて」をテーマにお届けしたいと思います。


 では、早速お送りしまーす!




■一匹見つけたら百匹いると思え


 Gではありません。レコンギスタ。


 何度も何度も、繰り返し確認しても殲滅できない憎いアイツ、そう誤字(これもGかw)。でも、もしかするとこの方法で解消できるかも……というヒントからはじめましょうか。


 そう!

 それはずばり、印刷すること、です!


 時代錯誤アナログな……という前に、ちょっと続きをご覧あれ。



■紙媒体と電子媒体での違いって?


 モノカキの皆様ならご存知かもしれませんけれどー。


 二〇一三年、トッパンフォームズ、ニューロ・テクニカ、国際医療福祉大学教授・中川雅文博士の三者による脳科学実験において、紙媒体で情報を見た場合と、ディスプレイを介して見た場合とで、脳の反応に違いが起こることがあきらかになりました。



 この結果、紙の印刷物を見た時には、ディスプレイを見た時に比べて、前頭前皮質が特に強く反応したのが確認できたのです。


 前頭前皮質は、脳において特に情報を理解することや、受け取った情報や思考の整理・判断をつかさどるといわれています。つまり人間は、紙に印刷された情報を目にすると、無意識にそこに書かれている内容を理解して、知識として整理しようとする、ということになります。



 一方、ディスプレイに表示された情報を見た時には、視覚を司る部分の反応は強かったのですけれど、情報を司る部分はそれほど強く刺激されない、ということが分かりました。


 これもあってか、Amazon Kindleはバックライト方式を使っていません。自発光せず、表面側から光を当てて表示が見られるようにする照明装置、つまりフロントライト方式をとっています。より読書に適したデバイスとして、です。



 紙媒体では、日光などの光を表面から受けて文字を判読する、いわば「能動的」な読書になり、対してスマホやパソコンでは、背面から液晶に光を当てた「受動的」な読書と言えるのかもしれません。



■その他にもこんな違いが


 また一般的に、読書をすると副交感神経が優位になって脈拍数が減り、リラックスした状態になるといいます。


 つまるところ、イコール夜の読書は寝つきを良くする、ということなのですけれど、これをスマホやパソコンなどで行った場合、ブルーライトによって睡眠ホルモンである「メラトニン」が抑制されてしまい、逆に眠れなくなってしまうことがあります。脳に負荷がかかるんですね。


 しかし、これらはあくまで「現時点での」お話です。


 やがて、これらを解消する新たな技術が生まれることでしょう。電子書籍の歴史は、まだまだはじまったばかりなのですから。



■コムツカシー話はさておいて


 で。

 肝心なテーマ、なんだったけな……。



 あ!

 そうだ!


 推敲の話でした!(わざとらしい……)



 前項までの話を踏まえ、さらに補足しますとー。


 Web小説・電子書籍の一番のデメリットは「パラパラ読み」ができないことです。


 本というものは1ページ目から順に読むのが当たり前、と思っていらっしゃるかもしれません。ですが、物語を読む時ならばともかく、誤字・誤用を探し出す時には少し事情が違ってきたりします。また、シノプシス(あらすじ)に沿っているかどうか、先と後とで矛盾が生じていないかどうか、こういった視点で「読む」場合には順を追って読む必要はむしろありません。


 こけばしの知り合いは、推敲の時、印刷した紙を逆さまにしてチェックする、と言っていました。ホントかよ……と思いましたが、この方が「文章として読めない」ので、単純に文字を識別してチェックできるんだそうな(注:雑誌編集者をしていた時代の話です)。


 また紙の利点は、前述までの「能動的読書」ならではの理解しやすさがあります。



 もちろん、電子データの場合にも利点はあります。


 執筆の際にWordなどの文書作成ソフトを使われている場合には、「表記揺れ」を探すことが容易になります。「表記揺れ」というのは「うなずく」と「頷く」とで言葉の「開く・開かない」が統一されていなかったり、「Word」と「Word」とで英語の全角・半角が入り混じっていたり、「一ヶ月」と「1か月」とで言葉の記述方式が異なっていたりすることです(この例では数字の記述ルールも異なっていますね)。


 Wordの場合であれば、



・「校閲」タブをクリック

・「言語」中にある[表記ゆれチェック]ボタン(右上の紙にチェックマークのアイコン)をクリック

・グループごとにチェックし、正しい修正候補を選択して[すべて修正]をクリック



 で実行可能です。


 これ以外にも、同じく「校閲」タブの「文章校正」中の「スペルチェックと文章校正」も便利です。ただし……こやつの場合、割と几帳面でキムツカシーので、広い目でお付き合いするのが吉です(「ら抜き」言葉とか……まあ、非常に細かいヤツなのです)。



■人間の目って割といい加減


 紙と電子、それぞれ得手不得手がありますけれど。

 一番の敵は、自分自身がワクワクしながら読んでしまい、チェックにならないことです!


 それでも、もうどうしようもなくなったら、他人にチェックしてもらうのも手ですね。


 日本語って、なぜかいい加減な文章でも読めちゃう、不思議な言語だったりしますので。それが、自分が書いた「一度熟読した文章」だったりしたら、なおさらです。


 こんなコピペ、ご存知でしょうか?



「こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。

 この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の

 けゅきんう の けっか にんんげ は もじ を にしんき する とき

 その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば

 じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という

 けゅきんう に もづいとて わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。

 どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?

 ちんゃと よためら はのんう よしろく」



 変なの……と思いつつ、結構スラスラ読めてしまいますよね。


 他の国の言語でもこの法則が通用するらしいのですけれど、ネイティブではないこけばしさんにはイマイチ分かりません。昔、洋書を読んで激しく後悔した、嫌な記憶しか残っていない……(ちなみに「風と共に去りぬ」でした!)。


 ですので、できればあなたの作品に1ミリも興味のなさそうな、赤の他人に読んでもらってチェックしてもらう、というのが最終手段です。それはそれで……へこみそうですけど。




 おっと、そろそろお終いの時間でーす。

 次回は別のテーマにて。


 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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