第四十回 名作の法則と、やっちゃダメなタブー
はじめての方はよろしくお願いします。
お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。
さて第四十回ですが。
タイトルどおり、アニメや小説、映画において、これをやった作品はヒットする(している)という某マーフィーさんの法則じみたものと、これをやると読者・観客に嫌がられるよ! というタブーが存在しているようです。
「でも実際、それってホントなの?」
という疑問から、早速お送りしまーす!
■EDで走るアニメは名作ゥ!
これ、どこかで耳に、目にした方も多いと思います。
「勃起不全・勃起障害(Erectile Dysfunction)」ではありません。そう、アニメのエンディングで、スタッフロールと曲が流れる部分のことです(むしろそっちでどう走るのか見てみたい)。
日本アニメでは、エンディング・パートで登場人物たちを走らせることが多かったりします。
実はこれには理由がありまして、
・少ない作画数でエンディング・パートの約一分半を持たせることができる(背景すら不要!)
・走る動きはキャラクターを生き生きと見せることができ、躍動感が生まれる
・静止画でどうにかこうにか引き延ばすくらいなら、走らせた方がマシ
とまあ、割と制作側の都合によるものが多かったりするんですよね。
さてさて、このジンクスの真偽のほどは深くツッコんだら負けなのでスルーしますが、ことアニメ界において、この他にも名作の「決まりごと」のようなものがいくつかあったりします。
・野球回があるアニメは名作
・おっさんがカッコいいアニメは名作
・量産機がカッコいいアニメは名作
・ヒロインがゲロを吐くアニメは名作
・第三話にしてメイン級のキャラが死ぬアニメは名作
ホントかよ……と思いつつも、考えてみるとそれぞれ該当作がイメージできちゃうから不思議だったり。ただ、実際には、「名作アニメは○○であった」だけで、不可逆な気もするー。
さてさて。
では、一方ラノベの場合、こういうルールとか、ジンクスとかって存在するんでしょうか?
■プロローグがあるラノベは駄作ぅ!?
どん!
こちら、皆様もX(Twitter)ランドで見かけたこと、あるんじゃないでしょうか。
某Y!知恵袋にも「プロローグって書いた方がいいんでしょうか? 書かない方がいいんでしょうか?」という質問が寄せられており、ベストアンサーに選ばれた回答を見てみますと……ズバリ、「面白ければプロローグもアリ」という小並感漂う文章がありましたとさ。まる。
そりゃそうじゃろがい!
■神は「プロローグあれ!」と言われた。するとプロローグがあった。
さてさて、それはさておき、そもそも「プロローグ」――物語の序章、はじまり、発端を書くとしたら、どのようなパターン・内容が考えられるでしょうか。
・事件や謎、アクシデントの、一番はじめの犠牲者の視点で回顧録的に書く
・これから語られる物語の、壮大な世界観・設定を書く
・世界観・設定を印象づける目的で、読者へ語りかけるメッセージ・問いかけを書く
・映画「スターウォーズ」のオープニング伝統の「冒頭ポエム」を書く
・マザーグース的な、一見不可解ながらも、最大の謎の伏線として機能する散文を書く
・主人公のユニークな性格・特異な行動を印象づけるためのミニエピソードを書く
・のちの主人公の行動を描き(未来)、モノローグ的に本編へと繋ぐ(現在)役目で書く
まとめるの下手くそかよ。
こんな文章で伝わるかどうか物凄く不安ではありますが、ざっとこんな用途として「プロローグ」が用いられているように思います。毎度のことで恐縮ですが、映画で言うところの、オープニング・テーマとタイトルが出る前の冒頭部分、いわゆる「つかみ」というヤツですね。
■たとえば、こんな、プロローグ
たとえば「007シリーズ」であればどうか。
ジェームズ・ボンド(なお、ショーン・コネリー版もしくはロジャー・ムーア版だとなお良し)がとある街で(物語の舞台である場合と、ひとつ前の任務地、休暇中の場合がある)野良イケイケ女子とねんごろになり(この女子は単なる肉食系であって、本編とは無関係の場合多し)、突如降りかかったトラブルをスパイ道具を駆使しつつ華麗に回避して、MI6(イギリス情報局秘密情報部)の部長、Mの下へとスマートに出頭する――そこで、あの有名な「007のテーマ」ドーン! といった部分がプロローグにあたります。
すでに記したとおり、このプロローグは、
・ジェームズ・ボンドのカッコよさ
・ボンドは女性にモテて、ちょっとだらしない
・でも、やる時はやる! しかも、誰にも真似できないスマートさで!
・そこにシビれる! あこがれるゥ!(モブ並感)
という、主人公の「魅力」を最大限に引き立てつつ、「お約束」のパターンでスムーズに物語に繋げる、という役割を見事に果たしています。ただし、これは「誰もが知るシリーズ物」だからこそできることでもあり、無名作品の初っ端には不向きかもしれませんね。
■そのプロローグ。必要ですか?
よく聞かれる「安直なプロローグNG論」において、特にダメ! とされているのは、第十九回でこけばしが即興で書いたような「いきなり世界観語り」のパターンでしょう。
『ここは、幻想世界最大の大陸、ユーロレイシア。そのほぼ中央に位置し、大陸全土を掌握する大国こそが、かの「聡明なる賢王・ダロニス一世」が建国したグリッフェン皇国であった。
~(一〇〇文字ほど割愛)~
これにより強大な力を得たグリッフェンは――』
まあ、よほどこの手のはじまりがお好みでない限り、マジョリティの読者様がたはこの「プロローグ」を飛ばして一話に進まれることでしょう。結果、「なんだか良く分からない前提で話が進んでいる……」とギブアップしてしまいます。
これがダメ! とこけばしも言いたいですけれど、アリはアリです。ナクナイ。
ただし、ここで一気に語った後は、一切触れない、というのが絶対NGだと思っています。
この書き方、実に「脚本的」なんですよね。
別に褒めていませんので、誤解なきよう。
舞台やドラマの脚本においては、状況、風景、登場人物の心情や動作などを最初に記し、それがある前提で会話劇、役者の演技がはじまります。いわゆる「ト書き」というパートですね。
しかしこれ、ビジュアルありきだからこそ、はじめて成立するのです。
ということは、ラノベに限らず文字だけで伝えるしかない「物語」において、「オープニング世界観」はNGな構成だと言えるでしょう。
じゃあ、どういう導入、プロローグなら良いのか。
こけばしの個人的見解としては、「キャラクター(主人公)の魅力を引き出すもの」であるべきだ、と思っています。
なぜなら――。
おっと、そろそろお終いの時間ですね。
というワケで。
次回も引き続き、本テーマについてお届けする予定です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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