第三十五回 人気最底辺の自称・カクヨム中級者が流行りの長文タイトルを書いてみたらいつの間にかジャンルトップにランキングされていた件(願望含む)

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第三十五回ですが、タイトルを見てお分かりのとおり、昨今の小説投稿サイトを席巻している「長文タイトルについて」をテーマにお届けしたいと思います。


 普段、書き慣れていないのがバレバレな件。んがー!


 では、早速お送りしまーす!




■長文タイトルってつまりはこういうこと?


 はじめに、個人的な解釈からです。



「長文タイトルとは、なろう系発祥の『様式美』であり、物語の簡潔なあらすじである」



 これ、合ってますか?(だいぶ不安)


 ライトノベルに限らず、普段皆さまが書店に出かけて、どの本が面白そうかな……とチョイスにお悩みの時、指標とするものはなんでしょうか。



「書店員さん手作りのポップっしょ」

「ニヨニヨする表紙絵買い一択!」

「ぱらりとめくった最初の数ページ」

「巻末の作者のあとがきで判断します」

「裏表紙に書かれたあらすじじゃね?」


 うんうん。

 いろんな動機、きっかけがありますよね。



 このなかでも、こけばし個人的に一番有力なのは、最後に挙げた「裏表紙のあらすじ」だったりします。一部の出版社から出ている文庫本では、当該記載のないものもあったりするのですけれど、やっぱりどんな内容なのかを推察するには、「あらすじ」を読むのが一番手っ取り早いと思うんです。


 どんな世界観と設定で、どんな主人公が、どんな冒険・活躍をするのか。そして、ジャンルとしてはどれに該当するのか。多少の違いはあれども、大体このような文章が裏表紙(自費出版などでは「表4」と呼ばれます)に書かれていますよね。これで読者は、おおまかな「物語」の概要を把握することができます。なーほーねー、ちょっと面白そうじゃない! みたいに。


 その「進化形」というか「発展形」が、いわゆる「長文タイトル」だと思うんです。



■Web小説ならではの事情


 これを、Web小説に置き換えて考えてみると、かなり状況が変わってきます。



 そもそも「裏表紙」がありません。

 カクヨムに限って言えば、ひと目で心動かされる「表紙絵」もなかったりします。


「あらすじ」は、辛うじてジャンルトップなどの第二階層まで行けば読めますが、それもわずか最初の八十五文字程度、カクヨムトップに至っては一文字たりとも表示されません。あるのは三十五文字の、渾身の「キャッチコピー」だけです。



 となった時に、きっと大半の作者の皆さまは悩むことでしょう。

 どうやったら読者の興味を惹くことができるだろうか、他との差別化を図れるだろうか、と。


 そこで、どこかの天才がひらめいたワケです。

 あらすじがなければ、タイトルをあらすじにすればいいじゃない、と。


(脚注:本文とは関係ありませんが、仏王妃・マリー・アントワネットが発言したとされている「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」は、さまざまな点で誤りがあります。まず、ここで言う「お菓子」とは「ブリオッシュ」のこと。通常のフランス・パンの原料に、バターと卵を加えることから「お菓子」扱いをされていただけなのです(「クロワッサン」、「ケーキ」と表記されることもあり)。そしてそもそも、この名セリフは、アントワネットの発言ではなく、ルソーの『告白』の中に登場するセリフが原典である、という説が有力です)


 たしかにこの方法は、大多数のWeb小説投稿サイトにおいて有効でした。


 一時期はそれこそ、どこまで長くできるものかを競うようにして、次々と長文タイトルが生み出され、さまざまなWeb小説投稿サイトのランキングを賑わせました。


 タイトルそのものがシンプルに長いものはもちろんのこと、タイトルそのものは完結に済ませ、その後の「~(波ダッシュ)」からはじまるサブタイトルの方を「あらすじ化」するパターンも派生形として生まれます。やはり特に顕著だったのはWeb小説投稿サイト「小説家になろう」で、「長文タイトル・イコール・なろう系」という定説まで生み出されたほどです。



■では、こけばしの場合


 かくして、タイトルのみで勝負せざるを得ない、というマイナス要素を逆転の発想でプラスに変えた「長文タイトル」ではありますが、こけばし個人としてはちょっとニガテです……。


 と言いますのもー。



・タイトルを読んだだけでほぼあらすじと展開が読めるので、それ以上食指が動かない

・なかにはタイトル以上の内容、展開がないものもあったため

・タイトルに書かれていても、本文にまったく生かされていないものも多い

・タイトルが長すぎて、SNSなどで情報発信する際に非常に困る(文字数の制限)

・逆に長文タイトルが増え過ぎたために、没個性化してしまって埋もれてしまう



 などなどの理由があったためです。


 ひとつめ、ふたつめのケースに関しては、読者側(この場合はこけばしですが)の「期待」を上回るものではなかったことが原因です。もちろんすべてがすべてではないと思いますが、たまたま拝見したものがこのパターンばかりでした。で? ここからどうするの? という「その先の展開」が一向に見出せなかったからなのですね。であれば、ただのネタバレです。


 みっつめは、おそらく長文タイトルブームに便乗し、新規読者を獲得しようと流行りのキーワードを組み合わせたタイトルにされたのでしょうけれど、おおよそその内容が本文に反映されていないものばかりでした。これは読者側の期待を裏切ったことに原因がありますよね。このケースでは相当露骨なモノも多く、「~で、ついでに言えば俺はVチューバー」などと、とってつけたようなタイトルになっていたことが多かったです。あ、そうそう、みたいな。


 よっつめは書き手側の視点からの意見ですけれど、かなり致命的でした。皆さまご存知のX(Twitter)の文字数制限は、二八〇文字(全角一四〇文字)しかありません。ヘタをすれば、自作品のタイトルすら書ききれないのです。さすがにそれじゃあ集客力に欠けるよね、と思ってしまうこけばしです。


 そして、最後のいつつめはもうすでに、現在進行形ではじまっているムーブメントだと思います。さすがに一五〇文字を平気で超えるタイトルだけでトップページが埋め尽くされていれば、読者だって食傷気味にもなります。しかも、長文タイトルであることがマジョリティな状況になってしまったら、むしろ端的な短いタイトルの方がかえって目立ちます。



 たしかに、センスある簡潔なタイトルというのは、本文を考えるよりも頭を悩ませるモノです。けれど、こけばし個人としては、短いタイトルの方が自分の「想像力」や「妄想力」をフル回転させて、そのタイトルの裏に隠された物語をイメージすることができるので好きです。


 長文タイトルとは、ある意味、読者の「想像力」や「妄想力」を奪うことにも繋がる恐れがあるのだ、と思ったりもするのです。


 ですので皆さま、ご利用にあたっては用法・用量をお守りいただき、適切な運用を心がけてくださいませ……。




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。


 次回は別のテーマにて。

 お楽しみに!


 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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