第三十三回 人工知能ALICEは電気白ウサギの夢を見るか? その二羽
はじめての方はよろしくお願いします。
お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。
さて第三十三回ですが、前回に引き続き「人工知能の活用、そして、それが生んだ新たな問題・課題」について綴っていきたいと思います。
では、早速お送りします。
■怒ってないよ
ポプテピピックかよ。
いや、怒ってるから!
「見ろ、この騒動を。ここはベトナムじゃない、アメリカだ。戦争は終わったんだ!」
「なにも終わっちゃいない! なにも終わっちゃいないんだ!! アタイにとって戦争は続いたままなんだ! 自分で書いた渾身の一作をAIレイプされている! レビューと★入れて、最高でした、素晴らしい! と手放しに言いやがる! あいつ、なんなんだ! 本人は一文字も読んでないくせに!!!」
「……めぐりあわせが悪かったんだ」
花澤香菜はジャスティス。
じゃなくて。
便利なAIも、使い方を誤れば凶器にも狂気にもなります。
さまざまな使い方があり、その汎用性は素晴らしく高いです。しかし、悪用しようと思えばいくらでもできてしまう、それがAIの現状での問題点だと思っています。
■されど「AIイコール悪」ではない?
AI自身は、善悪の区別を持っていません。問いかけられた質問に対し、ベターな回答を最速で行う、ただそれだけ。そこに論理性、倫理観は存在していません。
こけばしの所属していたかつての会社では、掲示板やSNSへ投稿される内容の中に不適切な用語があるかどうかのチェックを行う、言語解析システムを提供していました。文節、文脈を理解し、その上でNGワードが含まれているかどうかのチェックを行い、運用業務をサポートする、というものでした。
ただそれも、システム自身には善悪を区別する能力はありません。あらかじめ登録された語句が含まれているか否かをチェックしているに過ぎないのです。最終的なジャッジは、運営者、つまり人間に依存します。
「倫理観」をプログラム化することは、いくら技術が進歩しても、当面実現することはないでしょう。
むしろ、そこだけは人間が行わなければならない最後の一線だと思っています。スカイネット、マザー、ヴィキ、HAL9000、ウルトロン、M3GAN、カイロン5…etc.後半になるに従い、なんだか変な羅列になっておりますが(全部分かる人なんていないからオッケー)、空想家、妄想家でも容易に、「独自の倫理観」を持たせたAIはまっさきに人間を抹殺するでしょ、と考えている様子。うん、無理ないね。
そもそも人間がいなければ、SDGsだー、地球保護だー、戦争反対だーなどという「永遠のテーマ」そのものが消え失せ、最大の要因が排除されて、徐々に長い年月をかけて浄化されていくんでしょうから。「地球クリーン作戦」なんて必要なくなっちゃいます。
まあ、これだけが原因ではないにしろ、「AI研究なんて身の破滅」という極論をお持ちの方もごく稀にしばしばお見かけします(だからどっち)。
そこまで行かずとも、一旦現在の「第四次ブーム」にブレーキをかけようとする動きもあるのは事実です。その趣旨とは、「研究過程における規制と倫理観を欠いた状態では、人類に多大なるリスクと損失をもたらす」から。二〇二三年三月にアメリカで署名活動が行われ、かのイーロン・マスク氏も賛同しています。偽情報の氾濫、著作権の無法化、それらの問題が深刻な事態となっているからでしょう。
(脚注:ただし、イーロン・マスク氏の場合は、「ChatGPTの独走許すまじ」という隠れた真意もあると推測されますので、一概に善意・良心から出た賛同とは思えませんけれど)
極論派の一部では「従来人間が行ってきたことをAIに一任すれば、人間は堕落する」という論旨をお持ちの方もいるようですが、それは間違いだと思います。過去の歴史がそれを証明していますので。「産業革命」が起こった後、人間は堕落したでしょうか。そうは思いません。
まだ現時点では、「AIイコール道具」に過ぎません。
シンギュラリティは二〇四五年。
その時にはなにかが大きく変化するのかもしれませんね。
■問われる「倫理観」と鍛えるべき「観察眼」
前述までのとおりAIはさまざまなことを実現可能とし、また実現してしまったことによって諸問題を生んでいます。
問題を回避するためには、それこそP・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(映画『ブレードランナー』の原作)に登場した「フォークト=カンプフ感情移入度測定法」ではありませんけれど、それが「人間の思考の結果で生み出されたもの」なのか「AIの処理した演算結果」なのかを見分ける術が必要になってきます。
実際、ある程度学習過程を踏めば、AIはあなたの代わりに小説を書くことだってできます。
でも、マジョリティの作家様たちはやらない。
そう、その行為に意味なんてないから、です。
ただ「事実」として、カクヨムの中でもAIを利用した作品を掲載しているユーザーは存在しています。「利用」としてしまうと当てはまる人の範囲が無闇に増えてしまうのでよろしくないのですけれど(アイディア出し、シノプシス案生成、プロット案出し、辞書代わり、と大手を振って「利用」(活用?)できる部分もたくさんありますから)、ここでいう悪例とは「その執筆作業の大部分をAIに頼っている」作品という意味です。
個人的には「なんの意味があるんやろ……?」と不思議でなりません。
ワンチャン興味を惹きそうなタイトルの作品を驚異的なスピードと
情報系番組やバラエティでの「AI生成小説(笑)」のイメージが強いせいか、かなり抜けているという印象をお持ちの方が多いと思いますが、その違和感は「学習」によってある程度軽減させる(消せる、ワケではありません)ことができます。
とはいえ、正直脅威に思えるレベルにまでは達していない、というのがこけばしの感想です。
単純な回答としては、まだAIには「空想力」と「想像力」、「妄想力」がないからです。
今すでにある「事実」を「事実」として提示することはできても、今この世にない「仮定」、「もしも」を生み出すことはできません。AIが、チェスや囲碁で人間を凌駕できるのも、過去にあった無数の「事実」を瞬時に精査して、その中で最善の「事実」を提示しているに過ぎないのです。それは「可能性」ではなく純粋な「確率」です。「確率」は感情を一切排した「結果」ですが、「可能性」には「希望」や「願い」、「賭け」が込められています。
今までできなかったことができる――そこにAIの素晴らしさを見出す人もいるのでしょう。
しかしだからといって、どうか自分の「空想力」と「想像力」、「妄想力」を具現化させるための「道具」を、「違法なモノ」と社会認知させるような誤った行為だけはしないで下さい。
絵師はそのひと筆ひと筆、作家はそのひと文字ひと文字に、文字どおり命を注いでいます。血肉を捧げ、骨身を削り、その作品を顕現させようと必死に努力し続けています。
それをどうか愚かしめるような行為だけはしないで下さい。
おっと、そろそろお終いの時間ですね。
次回は別のテーマにて。
お楽しみに!
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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