第二十八回 異なるジャンルの作品を複数同時に書く! その3

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第二十八回ですが、今回も前回、前々回に引き続き「異なるジャンルの作品を複数同時に書く」というテーマについて綴っていきます。すまんかった。


 では、張り切ってお送りしまーす!




■二度目の挑戦から得たこと


 結論から申しますと、「あの人」のようになりたくて再度挑んだ「複数作品同時並行執筆更新」は、半分成功、半分失敗となりました。アチャー。


 やはり、均等に、平等に、それぞれの読者が十分満足できるようなペースで更新し続けることは、とても常人には真似のできない超人的な「神の御業みわざ」であることを思い知りました。


 しかし、前回の後半で書いたように、



・疲労やマンネリを感じた時には、別の物語の執筆に切り替えることでリフレッシュできる

・異なるジャンルの物語を並行運用することで、広い読者層と接点を持てる

・人気のあるジャンル・テーマと、そうでないものの反応の差を実感できる

・どれかしらの更新を実施できれば、投稿サイト上での露出を増やすことができる

・(書いている自分が)楽しい!



 というメリット、効果・効能があることが知れたのは、大いなる発見だったのです。



「複数タイトル同時にスタートさせるとかコンテストの常識だろ」

「いつもやってることですがなにか?」

「いまさら、凄い発見! みたいに言われても……」


 うんうん。

 そうかもしれません。



 ただ、こけばしの見る限り、すべてを平等に書いて、等しくゴール、完結まで続けようとする作者様は、残念ながら存じ上げません。



 恐らくパンツァー型の執筆スタイル(第十二回および十三回を参照のこと)をお持ちの作者様で、流行りの要素を組み合わせたタイトルと初期発想をもとに、えいや、と同時スタートさせ、反応の良かった作品だけを書き進めていらっしゃる、そういう方はたくさんいるようです。


 しかし、それはあくまでマーケティング的な執筆方法だと思うんですよね。


 それが間違いだと言うつもりはありませんし、批判するつもりもないです。どうせ書くのであれば、たくさんの方に見ていただき(→PV数の増減)、ポジティブなコメントを頂戴したりして(→読者の共感と傾向把握)、最終的にどれを書くべきかを選別して絞り込む、それもまた、Web小説ならではの戦略である、と言えるでしょう。


 事実、こけばしの場合も、反応が良かった作品を優先的に執筆していたことは否めません。


「人情モノ」、「一風変わった異世界転移モノ」、「SFスリラー」と三作品並べてみてはじめて、それぞれお読みいただけた読者さまの層が明らかに違うことが顕著に現れました。また、それぞれに興味を持たれた読者さまの、想定潜在数もなんとなく掴めたように思います。



■マーケティング的な執筆方法は「エタる」?


 ですが、そもそもこけばしが「物語を書く」という根源に抱えているものは、「思いついたモノを誰も書いてくれないから読めない・楽しめない」というリビドーです。こんなのあったら面白そうなのになー、というニーズにこたえて自分を満たすには、自分で供給するしかないのです。


 あるコンテストの二次選考通過の際に、編集者の方からこのような評価をいただきました。



「着想は非常に素晴らしいのですが、これ、はたしてあなたが書く必要、あるのでしょうか?」



 これを拝見して、確かに! とはならなかったのですよね。むしろ、うーん……違うと思うんですけど……、というもやもやだけが残ったのを今でも覚えています。もう理由はお分かりだと思いますけれど、誰も書いてくれないから書いているのです。書かなければならなかったのです。そういう意味においては、こけばしが書く理由は確かにそこに存在しているのです。



 市場の「流行はやり・すたり」を繊細に読み取って、今読者に求められているモノを書く、これはマーケティング的執筆方法を実行されている方がお持ちであろう素晴らしい技術だと思います。


「俺TUEEE」「ざまあ」、「没落貴族」、「悪役令嬢」、「ゲーム配信」、「VR」、「メタバース」……ひと口に「異世界転生・転移モノ」と言っても、目まぐるしく流行は変化し、読者さまの興味も移りゆきます。その最先端を常に追いかけてとらえ、はたまた全部盛りにして書いていく、というのは大変な作業であり、フットワークの軽さが要求されます。



 ただその一方で、未完のまま放置されてしまったり、連載が止まってしまう、いわゆる「エタる」パターンも少なくありません。このエッセイをお読みの方であればもちろんご存知かと思いますけれど、「エタる」とは、「エターナル(ETERNAL=永遠)」をもじって生み出された造語です。


 物語が「エタる」要因はさまざまあると思いますが、



・続きが思うように書けなくなってしまった

・書き進むうちに「面白くない」と感じてしまった

・予想していた反応が読者から得られなかった

・他に書きたい作品ができてしまった

・批判や中傷が多くてメンタルが低下してしまった

・本業が忙しくて書く余裕・時間がなくなってしまった



 その理由はこういった内容だろうと想像できます。


 ただ、このうち最初のふたつ、「続きが書けなくなった」と「書き進むうちに『面白くない』と感じた」については、準備不足であったり、シノプシスやプロットの不備または未整備だったりだと思うのです。このふたつがあれば、ゴールまでの道のりはできているはずですので、途中で進むべき道が分からなくなってしまうことはないでしょうし、あらかじめどんな物語になるのかの想定はできていたはずだからです。


 次のふたつ、「予想していた反応が得られなかった」と「他に書きたい作品ができた」については、マーケティング型執筆法における戦略の失敗のように思います。後者には別の要因も考えられそうですけれど、少なくとも「コレジャナイ感」を覚えたきっかけは、新たな流行の波の存在であったり、こっちの方が(読者の反応として)面白くなりそう、と思ったりしたからではないでしょうか。


 最後のふたつ、「批判や中傷によるメンタル低下」と「私生活の都合で余裕・時間がない」に関しては、これはもう同情するよりありません。ただ「批判や中傷」に関しては、よほど作者本人の行動に問題がない限り、そういう人もいると思って気にしない、それしかありませんよね。そう簡単に割り切れないのも実情なのですけれど……。「時間がない」という問題については、残念ながら皆さまは現実世界の生活が最優先ですから、いつかまた帰ってこられるよう、執筆に対する意欲を失わないようにしつつ、目の前の課題に取り組んでくださいね。



 いずれにせよ、読者にとって「エタる」ことは、とても悲しいことです。


 こけばし自身、生活の環境が変わったことや、体調の不安定さ、メンタルの浮き沈みによって思うようなペースで執筆できないこともあって、せっかく興味をもっていただいた読者さまのご期待を裏切ってしまうこともあります。



 ただひとつ、自分のエゴで物語を「エタ」らせることだけはしないように、といつも自戒しつつ、この先ももっと面白い物語をお届けしていかなければ、と決意を新たに頑張ります!




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。


 なんというか、テーマに沿った内容になっていたのか少し不安ですけれど、次回からはまた新たなテーマを掲げて綴っていけたらと思います。


 どうぞ、よろしくお願いいたします。



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