第十八回 君は今、何を思う その2

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第十八回ですが。

 前回の時点で、続くだろうと予測できていた人が大半かもしれませんね(その1って……)。


 なので、今回も引き続き「こけばしは書く時に何を考えているか」について綴っていきます。さらに焼き土下座で敗者復活! です!(利根川)。


 では、張り切ってお送りします!




■「~と○○は言った。」の語尾禁止で、デス・ゲームのはじまりだ!


 意外と基本的なことかもしれませんがー。


 文藝春秋文庫などから出版されていた海外スリラー・ミステリー物で育ったこけばしにありがちなこととしましては(結局は個人の感想なんですね……)、「~と○○は言った。」という語尾書いちゃいがち、ということです。


 要するに、ストレートに原文ママだと「Simon says」てなワケなのですけれど、


(脚注:「Simon says」(サイモン・セズ)は、英語圏の人であれば誰でも知っている子ども向けの遊び。三人以上で行い、ひとりがサイモン役となって、他の参加者は「サイモンの言ったとおり」にしなければならない。指示どおりにできなかったり、「Simon says…」ではじまらない指示に従ったりするとアウトとなる。同名映画や、各方面でネタにされることしばしば)


 この「~と○○は言った。」というフレーズ、ほぼラノベでは使われません(ホント!?)。


 と言いますのも、ラノベと言えば登場人物たちの会話文が主となりますから、必然的に「言った。」のは当たり前なんですね。というか、何度も繰り返し言ってるワケなのですよ。これを地の文として書いてしまうと、「言った」、「言う」、「言っていた」のオンパレードとなってしまいます。これはマズい……。これだと、非常につたない文章に見えてしまいますよね。



 もし身に覚えのある方は、この機会に語尾「言った」をやめましょう!


 すると、他の表現で地の文を書かなければならなくなりますから、表現の幅が嫌でも広がり、なおかつ語尾のバリエーションが一気に増えます。


 では、たとえば、の例を挙げてみましょう。



『「少し……時間をくれないか?」と、彼は言う。』

   ↓

『「少し……時間をくれないか?」と震える彼の声に焦りが滲んでいる。』



『「だって……いつまで経っても変わらないんだもの」と彼女が言った。』

   ↓

『「だって……いつまで経っても変わらないんだもの」と彼女はぷうと頬をふくらませた。』



 どうでしょう?


 極めて簡単なことなのですけれど、同じような文章でも、地の文で状況を補足するカタチになったので、より情景が浮かびやすくなりましたよね。どちらも三点リードでセリフに間が空いた似たような文章でしたけれど、違いもハッキリします。っておびえているのと、れてねているの。ああ、いかん! 漢字で書くとまた違いが分からなくなるううう!(←馬鹿)。



「あぁん!? そんなの、できらぁ!!」


 うんうん。

 ですよねー。でも、きっと知らない方もいらっしゃると思うのですよ。



「そんないちいち地の文なんていれねーし!」


 うんうん。

 確かに確かに。会話文だけでも成立しちゃいますもんねー。



 でも、そのパート、ホントに読み手側に、どのセリフが誰の発言なのか、きちんと伝わっている自信はありますか? 会話文だけのやりとりが、一〇も二〇も連続する作品を拝見したことがありますけれど、喋りに特徴のない登場人物五人の会話シーンなんて、もうカオスです!


 そう、次はそこ、いきましょうかー。



■キャラクターの個性を、視覚情報以外で表現することは可能か


 みなさんご存じのとおり、ラノベにはウツクシー挿絵が付き物ですよね。

 でも、それは書籍化後のお話。


 もちろんWEB連載時から挿絵アリの方だって少なからずいらっしゃいますけれども、それは文章のみならずお絵描きの才能にも恵まれた方だったり、クリエイター支援サイトなどを活用して依頼・発注したものだったりするワケです。あくまで例外。当たり前ではないのです。


 となると、どういうことが起こるかというとー。



『ひと目で高貴な身分であることが分かる少女。丁寧ていねいくしけずられたうねるような灰金色の髪の下で、むすり、とにらみつけてくる大きな空色の瞳は、いかにも不満げにすがめられている。こんな物のない時代であるにも関わらず、肌はきめ細かく雪のように白い。身にまとうドレスは――』



 と(即興で書きました)、冒頭でさんざ外見の描写を入れたところで、他の登場人物と似たようなセリフを話していては、結果的に個性はゼロ、ということなのです。


 もちろん、高い身分であることを示す、それなりの言葉遣いをさせることは可能です。


 が、舞台が宮廷でしたらいかがでしょうか? それも、貴族の子息子女だけを集めた寄宿舎では? あまり明確な違いを持たせられない可能性が、ますます高くなってしまいますよね。



 そこで登場するのが、「個性的な言葉づかいと語尾」です。



 これについて、「安直www」、「いまどき……」という否定的な意見があるのは、もちろんのこと存じ上げております。ですが、これはあくまで自身を勝手に「カクヨム中級者」だと思い込んでいる一モノカキの一意見なので、セーフ、なのです。


 こうする以外に素晴らしいアイディアをお持ちの方は、しばらく目をつむってあげて下さい。そして、こっそり「俺、こんな書き方してるけど……あれ? もしかして、またやっちゃいました?」とコメントで、勉強になるあなた自身の手で書かれた作品のリンクを貼って下さいね。



 もとい。



 この「個性的な言葉遣いと語尾」という奴は便利なもので、事前のルール決めをしっかりと行い、そのルールに則って書く限りは確実に、「キャラクターの個性を文章で表すことが可能となる」のです。スゲェ!


 たとえば、ですよ?



『「よろしくね、お兄ちゃん」

 「よろしくね、お兄ちゃん」

 「よろしくね、お兄ちゃん」

 「よろしくね、お兄ちゃん」


 突如四人の妹を持つことになった俺は、途方に暮れてしまい、頭を抱えるのだった。』



 まさにカオス。

 これでは、よほど頭を抱えたいのは作者と読み手の方ですよね。


 でも。

 こうして……こうじゃ!



『「よろしくね、お兄ちゃん♡」

 「よっ! よろしくなっ、兄貴っ!」

 「よ、よろしく……お願いします……お、お兄様……」

 「あたしはそんなセリフ、絶対言わないわよ! こんな奴がお兄ちゃんだなんて!」


 突如四人の妹を持つことになった俺は、途方に暮れてしまい、頭を抱えるのだった。』



 どうでしょう?


 まあ、平凡と言えば平凡、定番と言えばド定番かもしれませんけれど、順に「まあまあ好印象な妹」、「ボーイッシュでヤンチャな妹」、「引っ込み思案で地味な妹」、「絶対お前序盤で早々にデレるだろwwwのツンツン妹」の、四パターンの個性が表現できました。


 もちろん、セリフ文だけでなく、その設定に沿った行動を伴わないと効果は半減します。主人公「俺」の誕生日には、それぞれの個性を示すプレゼントがあってしかるべきですし、バレンタインデーのチョコや、その渡し方にも、四人の妹たちで明確な違いが生じるはずですよね。


 まさに、この「徹頭徹尾、ルールを守ること」が設定なのです。


 そしてそれが、読み手にとって「この子ならこうするはず」という共感を生む重要なポイントとなってくるのです。ここ大事。あくまでその一環での「特徴のある喋り方」なのです。




 おっと、そろそろお終いの時間ですね。


 ふふふ……今回もまた、終わらなかったよ……(絶望)。


 なので、次回もさらに引き続き、こけばしがどのようなことを考えて書き進めているか、そういった部分をお話ししますよー!(ガチィごめんて……)。



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