第六回 アイディアを膨らませていくためにすべきこと

 はじめての方はよろしくお願いします。

 お馴染みの方はようこそ懲りずにお越しいただきました、虚仮橋陣屋(こけばしじんや)でございます。


 さて第六回ですが、前回の「物語のアイディア」が浮かんだところで、さあ、書くぞ! と言っても、なかなか難しいですよね……。なぜなら、その「世界観」や「設定」、細かい制約事項(いわゆる「お約束」)もついては、何ひとつ決まっていないからです。


 ということで、あくまでこけばしの場合に限りますけれど、「物語のアイディア」が決まったところで、次に何をしないといけないのかについて、ざっくりとまとめてみます!




■アイディアを膨らませて、「世界観」を考えてみよう。


 尾崎世界観ではありません(定期)。

 その物語が展開される「世界」とはどのようなものなのかを考える、ということですね。


 そんなモンいるの? という声も聴こえてきそうですけれど、こけばしは割と重視しています。たとえば転生ファンタジー物なら、主人公が元いた世界とどこが違うのか、逆にどこが似ているのか、(価値観や名前、使い方が)同じ物はあるのか、そういったポイントです。


 これは空想世界に限らず、現代が舞台でも同じことが言えると思います。


 例を挙げると、学園ラブコメ物だったとして、主人公の通う学校は、その地域・地区ではどの程度のレベルなのか。秀才たちばかり揃う進学校、良家のお嬢様しか通うことを許されない名門女子高だとか、ライバル校はあるのか、その関係は良好なのかだとか。より具体的には、作者の馴染み深い町が舞台にされることが多いかもしれません。


 ただ、こういったモデルやイメージがあったとしても、地名などはまだ良いとしても、学校名までまったく同じにすることは避けた方が良いでしょう。どんなイベントが出てくるにせよ、実際に起きた事件・イベントと結び付けられて考えられてしまうと、厄介なことにも繋がりかねませんから。


 すべて空想の上にしか存在しない世界、というのは、最初はなかなかハードルが高いです。書きはじめる前にすっかり固まっていればいいのですけれど、決まっていない事柄が発生するたびに、ここはどうしようと時間を浪費し、挙句あげく、後付けのようなカタチですでに書いてある部分の辻褄つじつまを合わせなければならなくなる、という事態にまで発展してしまいます。


 また、不要な説明パートに、その分ページを多く割かなければならなくもなりますよね。これは次項で綴るとしましょう。



■ぼんやりイメージできた「世界観」に「設定」を追加してみる。


 ホントは別の言い方の方が適切なのかもしれませんけれど。


 ざっくりとした「世界観」のディティール(細部)をブラッシュアップして、よりリアルに見せるためのものが「設定」である、とこけばしは考えています。



 異世界ファンタジーでよくありがちなのが、ずばり「貨幣価値」ですね。


 もう、出てこない作品はない! ってくらいのお約束ごとになっている気さえします。主人公はもちろんそうですけれど、それを読んでいる読者にとっても、突然「兄ちゃん、それは100ギルだぜ。買うかい?」と言われたところで、それが高いか安いか、ピンときませんよね。


 この場合は、ストレートに天の声に翻訳してもらうか、読者にも比較的馴染みのある物(たとえばコンビニおにぎり二個)と同じ価値だ、とすることで「ああ、四〇〇円くらいねー」と理解してもらうことができます。


 このように、先程出来上がった「世界観」の中での「常識」を決めていくのが「設定」だと思っています。


 一般的な市民のライフスタイル、給与・物価で見る経済観念、信仰されている宗教と死生観、男女の地位格差と社会における役割分担、司法・立法・行政の仕組み、種族・業種によって構成されるヒエラルキー、インフラの整備状況……などなど。細かく挙げていけばキリがありませんけれど、あらかじめ決めておけば、途中で迷うことはなくなります。


 この作業を、耐えがたい苦痛、と考えるか、時間が溶けるくらい楽しい瞬間、と考えるか。


 なお、こけばしはこのパート、大好きです!(←聞かれてない)



■膨らませた「世界観」の限界値を決めるのが「お約束」


 唐突ですが。

 こけばしは、いわゆるジャンプの王道系長期連載マンガが、あまり好きではありません。


 なぜならば、どうしても「作者の意図とは裏腹に」(ここ、特に大事です!)少しでも流行を維持するためと称して、当初のプロットを大幅に水増しし、設定をねじ曲げてまで、連載を続けさせられてしまうパターンを何度も見てきたためです。


 もっと具体的に、それがどういう結果を招くかと言うと――。



「ひゃー! おっそろしくつえー奴だったなー!」

「ふふふ……奴は所詮しょせん、地球で一番強かったに過ぎない……」

「誰だぁ!? オメーは!」

「わたしは宇宙一強い者だー!」



 これです(わかんねえよ)。


 要するに、いわゆるパワーインフレ。

 ソシャゲでも、もっとも嫌われるアレです(実感)。


 あれだけ感情移入して、主人公のギリギリの戦いに心躍らせて、勝利の瞬間ガッツポーズをした読者は、その挙げた拳をこっそり降ろさなければならなくなります。羞恥プレイ。



 このケースで駄目だったのは「最初に決めたルール『お約束』を破ってしまったこと」です。


 とかく某サイトでは「チート」やら「無自覚最強」やら「俺TUEEE!」やらがもてはやされていますけれど、限界点がない強さ、というのは面白みに欠けると、こけばしは思います。


 だって、いくらでも後出しできるじゃん。


 それが繰り返されれば「あー、どうせ不思議なチカラで勝つんでしょ」というマンネリ化に繋がります。展開が容易に読めてしまう。となると、読者は飽きてしまうと思うのですよね。


 最初の強敵、って、結局雑魚ざこだったの?

 これじゃあ、どれだけバトルシーンの描写が素晴らしくても台無しです。


「何ができるか」を決めるより、「何ができないか」を決める方が大事で難しいんです。




 おっと、そろそろお終いの時間です。


 今回で大まかにイメージしていただけの「書くモノ」が少しずつ血肉を得て、より「物語」らしくなってきましたね(そうだと言って)。でも、まだ書くのは早いとこけばしは思います。


 次はさらに「書くモノ」を魅力的に魅せるポイントについて書き綴っていければと思います。



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