第24話 女の子の気持ちは分かりにくい

「ひとーり、ふたーり、またひとり♪」


「増えていくよどこまでも♪」


「ホントの君はどこへ行った♪」


宿屋に向かう途中、変な歌で遊んでる子供達とすれ違った。


「なんか変な歌だな」


「あははちょっと、不気味だよねー」


「「「変じゃないよ!!」」」


俺達の話を聞いた彼らは顔を膨らませながら反論してきた。


「これはね! ロンドの戯曲なんだよ!」


「最近流行のロンドのオペラ!」


「ノエル王国の都市伝説『複製人間』をモチーフにした最高傑作!」


きゃっきゃとはしゃぐ子供達。

と言われても、俺は興味無いしな·····

オペラとか言われてもなぁ、シノンはどうなんだか。


「へっ、へぇー! 複製人間かぁ·····」


なんかちょっと気になってるみたいだ。


「「「お姉さん興味ある!?」」」


子供達にキラキラした目で詰め寄られるシノン。

少し困ったような表情をしたが、すぐに笑顔を見せた。


「うん! 私オペラもオカルトもだーいすき!」


·····すげぇ、子供の期限を損ねない100点満点の答えだ。

シノンたんマジ聖女。

·····うーわ、あのアホみたいな事思っちゃったよ。


「それにぃ、複製人間は本当にいるんだぞー! いつの間にか君達の誰かも別人になってるかも·····」


「「「きゃー!」」」


悪巧みをするような顔で脅かすと、彼らは可愛い悲鳴を上げてわざとらしく逃げ帰っていく。

そんな彼らに手を振るシノン。

心做しかアホ毛もぴょこぴょこ動いてる。


可愛いなぁ·····


·····いや何言ってんだ俺は。

マジで最近アホ聖女の言動に犯されてる。

うん、そうだそうに違いない。

毎日のようにシノンを愛でて、褒めたたえて、俺を牽制して·····

時にはシノンにセクハラしそうになる自分を抑えて·····

·····まじでやべぇよ、聖女じゃなくて性女だろ。

というか神の教えはどうしたよ教えは。


「·····アシュラ?」


考え事をしていた俺の顔を覗き込むシノン。


「あーなんでもない! なんでも! ·····そうだシノン! 折角だしオペラ見に行くか?」


「へっ?」


·····やっべ、これしくった。

すっげー困った顔してる。


「いやっ、その、興味あるんだろ? 複製人間?」


慌ててそう言うと彼女は更に複雑そうな顔をして困った様に笑う。


「あはは·····そこまで興味ないかなー、あんま好きなテイストじゃないし」


それでよくあのテンションで接したな。

でも良かったー、俺と行くのが嫌とかじゃなくて。


「それよりさっ! 早く宿屋いこっ! もう足クタクタだよ~」


「そうだな」


王様に指定された宿屋に再び向かう俺とシノン。

暫く歩くと、豪華な洋館に着いた。

ドキドキしながら門を叩くと、ホテルマンの人が俺達を出迎えて客室まで案内してくれた。


「きゃー!!! すっごーい!!!」


客室の扉を開けた瞬間、目を輝かせてソファに座るシノン。


「当ホテル最高級スイートでございます」


·····いや、すげえけど、すげえけどさぁ。


「·····すみません、もう一部屋用意できます?」


「申し訳ございません、他の部屋は満室でございます。当ホテル1ヶ月以上予約で空いてない状況でして」


「すごーい! そんなホテルに泊まれるの!? 王様太っ腹ァ!」


·····まじ?

えっちょ待って、シノンたん君さ俺の事全然きにしてない感じ?

えっ、気にしてんの俺だけ!?


「それでは、失礼致します」


「ちょまっ!?」


案内が終わった彼はすぐにドアを閉めて出ていった。

えぇ·····嘘だろ?


「あっ、アシュラ! これ持ってて!」


ポンと腕に付けてた端末を俺に渡すシノン。


「もしかしたら、セイラから連絡来るかもしれないし預かってて! 私お風呂入る!」


「ちょっ!? シノンたん!?」


バタバタと楽しそうにするシノンとこの状況に焦る俺。


『ピコンピコン』


「げぇ!? まじかよ!」


そして、ついでに白い悪魔からの連絡まで来てしまった。


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