第23話 ストーカー勇者にご用心

「あぁ! 麗しのセイラたん! 久しぶりに見たけど、圧倒的美少女·····まるで女神!!」


気持ち悪い賛辞が私に降り注ぐ。

知ってますわ、私が圧倒的超絶美少女ってことくらい自覚してますのよ!!

いや、そうじゃなくてなんでおめぇがここにいるんですのよ!

吉田雅人!!!


「おい、その女に話しかけるな。こいつが何をしたか忘れたのか?」


雅人が私のことを褒め散らかすのを、緑髪の男が怖い顔で止める。


「シリウス·····忘れてないけど、怒りもあるけどそれ以上に喜びが勝っちまうんだよ!」


「はぁ、馬鹿だ·····この悪魔のどこがいいんだか」


おいおい、なんで仲間のシリウス・エスカベッシュまでいるんですのよ。

私こいつにいい思い出一つもないから、苦手なんですわ!


「よぉ、クソ聖女、元気だったか?」


ほぉら、私に喧嘩腰で来る!

聖騎士なのになんで、聖女に優しくできねぇんですのこのチンピラ!


「俺らはよぉ、お前が剣を盗んだせいで大変だったんだぜ? 一発殴らせろ!!!」


拳を掲げて私を殴ろうとするシリウス。

おいおい、こいついかれてるんですの!?

国の王様がいる場所でバトルするとか、有り得ませんわ!

くっそー、いつもなら煽り散らして返り討ちにしてやりますが、今回はそんなこともできませんし!


「きゃあっ! やめてええええ!!」


しょうがないので、普通の女の子らしく悲鳴をあげさせ頂きましたわ。


「·····は?」


そんな私を見て一瞬時が止まるシリウス。

私のわざと潤ませた瞳は彼の行動を鈍らせる。


「ロンド、アイツらを捕まえて!!」


「御意」


その隙に、イヴに命令されたロンドが物凄いスピードで、バカ2人を抑え込む。


『ペンタグラマ・レギュミット』


ロンドの魔法で五線譜の様な帯で縛られる雅人とシリウス。


「かのものを檻へ!!」


イヴの号令で、使用人たちは彼らを担ぎ部屋の外へと消えていく。


「ざけんなクソアマあああああ!!」


「うええっ!? 俺もおおおお!?」


連れていかれた二人から聞こえてくる可哀想な叫び声。

本当に馬鹿ですわねアイツら·····。

それにしても、ロンドきゅん中々やりますわね。


「大丈夫かいセイラ」


「えぇ、何とか」


「セイラ! 大丈夫!? 何なのあいつら!」


か弱い振りをしたおかげで、ロンドとイヴが物凄い心配してくれる。

やっべー、後でゴリゴリの武闘派ってバレるのが心配ですわ·····


「パパ! アイツら処刑よ!処刑!」


「·····あっうん、考えとくよ·····あはは」


これ、形式上捕らえて後で解放するパターンですわ。


「あー!! 本当に最悪な気分!! ロンド、セイラ! 音楽堂へ行くわよ!」


「御意、セイラ行くぞ」


「えっちょっ!?」


有無も言わさず私の腕を引っ張るロンド。

機嫌が悪いやつのストレス発散に付いてくなんてお断りなんですが·····!

なんで即答しやがりましたのこの男!


「ちょーっと、ロンド! 私災厄の事調べたいって言いましたわよね!? 少しくらい主に意見してくれても良くないですの!?」


ロンドに耳打ちすると彼は私に清々しいほど綺麗な笑顔を見せる。


「イヴ様の命令は絶対」


クソですわ!


「セイラ? どうかしたの?」


「なっなんでもありませんわ! イヴ様! ただ芸術の国のオペラが楽しみだって話しただけですのよ!おほほ!」


そう言うとイヴは機嫌よく私とロンドの腕に手を絡ませて飛び切り素敵な笑顔を見せる。


「ふふん! 絶対気にいると思うわ! 早く行くわよ!」


·····ううっ、全くなんでこんなことに。

隙を見てシノンたん達に合流しようと思いましたのに·····

これも全て、あの異世界人が悪いですわあああ!!!


イヴに引っ張られながら、私は旧勇者を呪った。

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