第22話 絶望的な出会いは突然に

「·····凄いわ、今までの客人で一番よ!」


「へっ?」


出されたテリーヌを食べていたら、イヴがキラキラした目で私を見つめる。


「所作が美しすぎるのよ。テーブルマナーも完璧だし」


「そうですの? 今まで気にしたことありませんわ」


といったが、当然嘘である。

滅茶苦茶目を輝かせてるとこ悪いんですが、超絶気にしまくりですわよ、こちとらクソ親父様に小さい頃から扱かれて、マナーに関しては完璧なんですわよ!

こんなん必要ねぇとか思ってたけど、バチくそ役に立って複雑な気持ちですわ。


「セイラ、ランチが終わったら講堂に行くわよ、会わせたい人がいるの」


「·····えぇ、承知致しましたわ」


って言わねーとダメですわよねぇ。


本当はシノンたんの所に戻りたいですけど、この私でも分かる、この女の機嫌を損ねたらやべーですわ。

いくら私達が勇者パーティーとはいえ、この国でしょっぴかれたら終わり!

あの女は気に食わねぇやつを断頭台に送るタイプ!!

コユキ皇帝達の後ろ盾があったとて、あの女は考えずに殺ってくる!

私の感がそう言ってますわ·····シノンたんとアシュラ(仕方なく)を守る為にも、私はあの女の言いなりになりますわ!


「失礼します、イヴ様いらっしゃいますか?」


コンコンとノックが聞こえ入ってきた、白髪のタキシードを着た美男子。


「あっ! ロンド! 丁度いいところに来たわね! 紹介するわセイラ! 彼はロンド・クラウン私専属の宮廷音楽家よ!」


イヴは彼の腕に抱きつきながら満足そうに私に紹介した。


「ねぇ! ロンド! セイラの為に曲を弾いてちょうだい!」


「弾くのは構わないのですが·····あの、イヴ様、国王様がお呼びです」


「はぁ!?何でよ!」


「お客様がくるから挨拶をと」


ちょっとお待ちなさい、あの国王馬鹿なんですの?

どーせまた酷い罵声を客に浴びせるんだから出さねー方がいいと思うのですが。

まじで臭いものに蓋する理論で隠しとけばいいんですわ、彼女は。


「しょーがないわね、ロンド!私がいない間、セイラをもてなしなさい! 行くわよみんな!」


そう言って彼女は従者を引き連れ国王の元へ向かった。


「はぁ·····まったくイヴ様は·····」


ため息を着くロンド。

彼も結構苦労人みたいですわね·····


「同感ですわ」


私は深く彼の意見に頷いた。


「ははは、えっと」


「セイラ・キヨテル。様とかそういうの要らんのでセイラでいいですわ」


「·····かしこまりました。じゃあ、俺もロンドと呼んでくれて構わないよ」


あら意外、彼一人称俺なんですわね。

気品ある彼みたいな系統は私か僕だと思ってましたわ·····

ギャップ萌えって奴ですわね。

まぁ私、男の子より女の子の方が好きなのですが。


「もてなすと言っても、俺は音楽を奏でる事しか出来ないんだよなぁ·····でも、セイラそんな気分じゃないだろ?」


「そうですわね·····、私ここには災厄の情報収集に来ましたのよねぇ·····あとぶっちゃけ仲間が心配ですわ」


シノンたんがアホのアシュラに手を出されてないか心配過ぎますわ!!

私が居ないのをいいことに絶対、あいつシノンたんに接近しますわよ!!!

私だって、シノンたんの仲を縮めたいのに!!

あのアホの好感度だけ上がるなんてマジで許しませんわ!!


「·····そうだよね、よしじゃあ。街へ行こう。俺がもてなしの為に街を案内したって事にすれば別にイヴ様にも怒られない」


「おおー、ロンドきゅんよくシゴデキって言われませんこと?」


「よく言われる」


「ドヤ顔すなですわ」


扉を開けて長い廊下を歩く私達。


「改めて見ると、この城も凄いですわね。クリスタルの城なんて見た事ありませんわ」


「あぁ、イヴ様が建設し直せっていって、5年前に立て替えたんだよね。もとは普通のお城だったよ」


「本当あの子すげぇやつですわね·····」


「ははは、この話をすると皆君みたいに目を細めて口を引き攣らせるよ」


『このドブネズミ共が!!!』


噂をすれば何とやら、聞き覚えのある罵声が近くの部屋から聞こえてきた。

あーあ、またお客様が·····


「なんて事いうのこいつら!! 処刑っ! 処刑して!!」


と思ったら、イヴの方が返り討ちにあっていた。


「イヴ様! どうされたんですか!」


「あっちょっ、ロンド?」


彼女の震える声が聞こえて、ロンドが謁見の間に走り出す。

うぉーい、待ってえぇ、気まずいところに私行きたくないんでけどぉ·····


「うえええん! ロンドぉ! この二人が! 酷いのよ!」


涙目でロンドに抱きつくイヴ。

ドア越しにちらりと除くと、彼女の前には黒髪の男と緑髪の男が立っていた。


「酷いって言われても、お前さんが俺達に酷いこと言ったんだろ! いい返されても文句言えないだろ!!」


「同感だ」


·····ぬぁーんか、嫌な予感がする声が聞こえてきたのですけれど。


「黙りなさい!! ドブネズミのくせに! ひっぐ!こっこれなら、セイラと一緒にいた女の方が勇者にふさわしいわ!!」


彼女の一言で空気が変わる。

おっ、おま! なんちゅうこと言ってくれますの!!

そっ、そいつら! もしかしたらもしかしますのよ!?


「·····何っ?」


「セイラがいるのか!?」


うーわ、反応してる、反応してますわこいつら。

もう確定じゃないですかやだー、·····はぁ、最初に聞きたくない声を聞いた時から分かってたじゃないですの私。

現実逃避の時間は終わりですわ、でも大丈夫。

私がここにいることはバレて·····


「いますよ、そこに」


ロンドてめええええええ!!!

指さすんじゃねーですわあああああ!!!


「セイラあああああああああ!!!」


最&悪。

マジで終わってますわこの展開。

なーんで元勇者がダッシュして私の目の前に現れるんですの。


「ひっ久しぶりだな! 会いたかったぜ! 俺のマイエンジェル!」


息を切らしながら反吐が出るようなセリフを吐く元勇者。

·····まったく、女神に中指立てたくなる展開ですわ!

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