第21話 いない人の話で盛り上がる事はよくある
「「どーもすみません!!」」
彼女が名乗った瞬間思い切り土下座した。
「ちょちょ! 謝んないでよ! ふたりが悪いことした訳じゃないじゃん! ほら! 頭上げて!」
そう言われてすぐに頭を上げて椅子に座る私達。
「私は別に怒ってないよ、ただちょっとからかっただけ。ごめんね」
ウインクをして手を合わせるデオンさん。
「ビビったァ·····本当に心臓に悪いぜ·····ブチギレられて戦いになるかと·····」
「あはは、私はしないよ、私はね」
「そっその言い方、怖いんですけど·····」
「あははーそれは置いといて、私達もあの後災厄を倒す旅にでたんだよね」
「そうなんですか?」
「うん、ちなみに2日前に環境破壊の災厄を封印しました!」
そう言って彼女は笑いながらピースする。
「へっ!? 聖剣がないのに!?」
「ねー不思議だよねー、聖剣がないのになんで戦えたんだろうねぇー、気になるだろうけど教えてあーげないっ! 一応私達の企業秘密ってやつ!」
「·····へぇ、そりゃすげえな」
「まぁ、うちらもそこそこ頑張ってるって訳」
飲み物を飲んで彼女は満足そうにそう言った。
「そういや、あんたはどうしてこの国に?」
「ん? あぁ、うちの博士がねこの国の偉い人と知り合いでさぁ、次の目的地に紹介してくれたの。だから今頃、うちの勇者と聖騎士君は姫様に貶されてる頃じゃないかな」
彼女はそう言って笑いながらポテトを摘んだ。
「私は城に挨拶するのは面倒だからこうして、食べ歩きしてるわけ、そしたら、私が気になってるシノンちゃんとアシュラくんに会えちゃったのだよ。本当はセイラにも会って一発ぶん殴りたかったけどね」
「えっ!?」
「当然、二人には怒ってないけどあのアホにはガチギレてるから。全く、私がどれだけ大変だったと思ってるのよ! 自分は可愛い好みの女の子仲間にして楽しそうに旅してさぁ! 聞いてくれる!? 私のパーティメンバーの愚痴!!」
テーブルをだんだんと叩くデオンさん。
向こうのパーティも大分大変なんだなぁ·····
「勇者のヤツがセイラ大好きだからさぁ!毎日セイラ、セイラ五月蝿いのよ! 『何で俺を見捨てた』とか『なんで俺じゃだめなんだ』とか!!」
「·····」
「それにさぁ、聖騎士ってのが昔セイラに彼女寝盗られててね、ことある事にセイラに対抗して面倒くさくって·····」
ちょっと待て、あの聖女やらかしすぎでは?
男共にダメージ負わせすぎて大変なことになってるよ!
というか、そっちのパーティーにうちの聖女いて本当に大丈夫だったの!?
「うーわ、あいつどんだけ男に傷負わせてんだ」
「君も気をつけなよ? 油断してたら好きな子取られちゃうから」
「肝に銘じとく」
引き攣った顔でアシュラはそう言った。
「はーぁ、私だってセイラが居たから賢者になったのにさ·····」
「デオンさん·····」
ポロッと出た自分の一言にびっくりして口を抑えるデオンさん。
「あっ!? やべっ、今のなし!! 聞かなかったことにして! べっ別に! セイラが居なくても私は賢者になれてたし! つーかあいつが居なきゃ私が聖女だったし!!うん、だから別にあの子が居なくても必然的に私は勇者パーティの一員だったから!うん!」
彼女は顔を真っ赤にしながら、手を横に振って否定した。
·····デオンさんもセイラに魅せられた一人だったんだなぁ·····
「·····あーコホン。あいつに困らされたらいつでも相談してね、シノンちゃん、アシュラくん」
「もう相談する気力も失せたわ」
「あはは·····いつもの事だからねー」
私達の反応を見てデオンさんは満足そうに笑う。
「あははっ、本当にいい仲間に巡り会ったなーセイラ。手のかかるバカだけど、力だけは頼りになるからこれからもあの子の事よろしくね」
穏やかな笑みを浮かべ彼女は席を立つ。
「マスターお会計、ついでにその子達のも」
「えっ!? いいんですか!?」
「いーよ、これでもお姉さんだからね。シノンちゃんまた何かあったらよろしくね」
硬貨を支払った彼女はひらりと手を振って店を出ていった。
「なんか、いい人だったね」
「だな、つーかあいつ、仲いい友達いたんだなぁ」
残ったものを食べて私達はそのまま指定された宿屋に向かった。
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