第20話 カウンターで隣に座られたら少し焦る

「あーもう! 腹立つ!」


「同感だ!!」


お城から追い出された私達は、近くの冒険者ギルドでご飯を食べながら、怒りをぶちまけていた。


「なんなのあの女! ムカつく! 誰が汚物よ! 芋娘よ!! 」


「まじで、あの女許さねぇ! 滅びろ! つーか甘すぎなんだよ国王!」


カウンターでハンバーガーを食い散らかしながら文句を言ってたら、正面にいた親父さんが皿を拭きながらこちらを見て笑う。


「かぁーっはっは! お嬢さん達、あの我儘姫にやられたのかい?」


「そうですけど何か?」


「この国では客品にあんなクソみたいな態度取るのが普通なのか?」


親父さんは刺々しい私達の態度を見て、苦笑いをしながらコップにドリンクを注ぐ。


「すまんな、お客人。うちの姫は世間知らずのクソガキなんだ生まれた時から甘やかされてあんな奴になっちまったんだよ、ほれサービス」


「「どーも」」


注がれたブドウジュースを飲んで一息を着く私達。


「それで? お嬢さん達は何者なんだい? お城に客として呼ばれるって事は大物なんだろ?」


「一応勇者よ」


「その仲間だ」


「はっ?」


それを聞いて彼は拭いていたお皿を落として割った。


「お前さんら勇者パーティ!? もっもしかして、シロガネ帝国の災厄を倒したって言う·····」


「そう」


口をあんぐり開ける親父さん。


「おいおい、勇者をぞんざいに扱うなんてどういう神経してんだあのガキは·····」


「旦那もそう思うよな。俺達世界救ってんのにボロくそ言われたんだぜ?」


「うんうん、マジで傷ついた。しかも仲間の聖女は気に入られて、拉致しちゃうしさぁ」


はぁ····やんなるよもう。

セイラは大丈夫かな·····


「うっわー、大変じゃんお嬢ちゃん。大丈夫そ?」


近くにいた金髪ショートボブのお姉さんがそう言って私の隣に座ってきた。


「可哀想に·····結構重要なポジにいるから聖女居ないと大変だよねぇ·····分かる分かるお姉さんもさー知り合いの聖女が勝手な行動するヤツでさぁ」


「あはは·····えっと、あのーお姉さんは·····」


「あぁ、急に話に入ってきちゃってごめんね。私デオンよろしくね 」


グラスをチンとぶつけて挨拶をするデオンさん。


「私はシノンです」


「うん知ってる、でそっちがアシュラ君でしょ?」


「あっああ、そうだけど·····なんで知ってんだ?」


「そりゃ、シロガネ帝国から支援されてる勇者パーティだからよ、顔は知らなくても名前は知ってるわ。んで、さっきの会話チラッと聞こえたから、何となく誰が誰かは分かるわよ」


ニコニコと笑いながら彼女はそう答えた。

そっ、そっか、コユキ様達が私達を支援するって言ったから認知されてて当然か·····


「まじかよ、俺ら結構な有名人じゃん」


「そうだね·····めちゃビビるよ」


「あはは、シノンちゃんはともかく、アシュラ君は結構有名だったじゃん」


「そうか?」


「暁の盗賊団のアシュラ・ホッパー、聖剣強奪及び誘拐の件で指名手配されてたじゃないの」


ニヤリと笑ってグラスを傾けるデオンさん。


「·····おっ、おい、お前なんで、それも知ってんだよ!」


「そりゃ、アホ聖女が雅人くんから聖剣奪って逃げ出した時の報告聞いてたからね」


「「·····えっ?」」


彼女の一言を聞いて私達の時は止まった。


「いやぁーセイラのやつが自分好みの勇者見つけて旅に出るとか、あん時は本当にブチ切れそうになったなぁ·····」


さらりと当事者でしか知りえない情報を喋る彼女。

もっ、もしかして、いっいや、確実にこの人は!


「あっ、アシュラぁ、こっこの人、もっもしかして·····」


「あっあぁ·····絶対、元勇者パーティの人だよなぁ!?」


ヒソヒソと青い顔して話す私とアシュラ。


「御明答。そう、私勇者パーティ吉田雅人ご一行の賢者、デオン・エリザベートです以後お見知り置きを」


彼女の一言で私達の青い顔がらさらに汗がタラタラと吹き出した。

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