第2章 旧勇者と賢者と聖騎士と

第19話 ノエル王国にて

美しく光り輝く宝石の城。

楽しげな音楽が鳴り響く、芸術の街。


「すっごーい! 夢の国に居るみたい!」


ここはノエル王国。

愛と芸術の聖なる国である。


「シノンたん元気ですわねぇ·····セイラお姉さんは疲れてクタクタですわ」


シロガネ帝国を出発して5日。

私たちは次なる目的地ノエル王国に到着した。


「とりあえず、5日ぶりのふかふかのベットに寝てーですわ」


「同感、早く城に挨拶しに行こうぜ。観光は後だ」


という訳でノエル城に。


「ようこそいらっしゃいました。私はノエル王国、国王エオフ・ノエルです」


謁見の間に通されると、ふくよかな白髪の王様が私達を快く出迎えてくれた。


「シロガネ皇帝とカゲツ嬢からお話は聞いております。私共も貴方々に協力致します」


ほっほっほと笑う国王。

なんだか、赤い帽子と赤い服が似合いそうだなぁ·····


「ご協力感謝致しますわ、国王陛下。あのー出来ることならお城に泊まらせて頂けると助かるのですが·····」


「あぁ、勿論客間を·····」


「それはダメよ!」


国王の話に割って入ってきたのは桃色のツインテールの女の子。

扉を強く開けて従者を引き連れて入ってきた。


「おっ、おぉ、イヴ。どっどうしたんじゃ」


「どうもこうもないわ! お父様! お城に気品のない者をし引き入れてどういうつもりよ!!」


白いのドレスを着た気の強そうなお姫様。

なぜだか私達を汚物を見るような目で見つめる。

うっわーこわっ、何このお姫様。

これがカゲツ様の知り合い? 明らかに私達のこと歓迎してないじゃん。

というかすっごく失礼なんですけど。


「なんだよこの失礼なやつ」


「可愛いじゃありませんの、分からせがいがありますわ」


私が心の中で思った言葉を発するアシュラと腕を組んで獲物を狙う目で見るセイラ。


「パパぁ!! なんでお城に貧乏人を招いてるのよ!! ここは私の城よ! 身分の低い人間を入れるなんてどうかしてるわ!」


明らかに差別発言をするこの王族。

この国煌びやかに見えてレイシストが支配する闇深な国なのかな·····


「いっ、イヴちゃん。何を言っておるんじゃ、この方達はシロガネ帝国のしえ·····」


娘の発言に対してオロオロする王様。


「うるさいパパ! 黙ってて!」


「はっはい!」


おいおい、娘のいいなりですか王様·····

しかも私達のこと汚物を見るような目で見下してくるし·····

すっごく怖いんだけど、なんか品定めしてるみたいにジロジロ見てくるよ、この女。


「はぁ·····くっさい、まじで下品な匂いがプンプンしますわ。そこの芋臭い女と貧乏臭い男、お前達のせいでこの城が汚染されていますわ!」


「んなっ!?」


「はぁ!?」


今度は口が勝手に動いてた。

ジロジロ見たと思ったらなにとんでもないこと言ってんだこの女!!


「ざけんな! 小娘が!!」


「あんたねぇ! 姫だからって言っていいことと悪いことってあるでしょーが!!」


ブチ切れた私達を冷たい目で見て鼻で笑うイヴ。


「この城は、高貴な者の為の高貴な城!! 勇者だかなんだか知りませんが貧乏臭いバンピーはお断り!! 選ばれた一流な人間しかこの城には相応しくありませんわ!!」


「「はぁ!!?」」


「こちとら勇者ぞ!?」


「そうだ! シノンは聖剣に選ばれてんぞ!?」


反論すると彼女はさらに目を細める。


「·····はぁ、カゲツ様が認めたと言うからどんな奴かと思ってみれば、ドブ臭いバンピー、聖剣に認められた? それがなんですの、力があろうと身分が低ければアウトですわ!」


「「なんだとクソ尼あああ!!!」」


「イっ、イヴちゃん、そんな事言わないで、シロガネ帝国から反感を·····」


堪忍袋の緒が切れた私とアシュラを見て、王様は慌てて娘を止めようとする。


「別に支援をしなかったら、罰を与えるとは言ってなかったでしょ?」


「そっそれはそうだけど·····」


パパ頑張れ! 我儘な娘になんか負けるな! このメスガキをちゃんとした道に導け!!


「とにかく出ていきなさい! この城に汚物はいら·····」


私とアシュラを舐め回すように見ていた彼女だったが、セイラを見た瞬間、急に青ざめる。


「なっ、何よ!! この高貴なオーラは!!!」


「「「はっ?」」」


珍しく三人の意見が一致した。

たっ確かに、さっきからセイラに触れられてなかったけど·····

絡まれるの面倒くさくて空気になってるだけだと思ったのに、普通に彼女のセンサーに引っかからなかったの!?


「ヤバい超絶神々しい、えっちょ、まって、この輝き女神級なんですけど!? なんでよ! どうしてこんなに高貴なオーラを出してるの!?」


セイラが心做しかピカピカ輝いて見える。

そっそうか、セイラは聖女!

教会生まれだし、普段の行いで忘れがちだけど、彼女は結構いい位のお嬢様だ!


「ピュアで可憐なプリンセス。如何なさいましたか?」


自分の置かれてる立場に瞬時に気づいた彼女は、王子様のように振舞った。

さっ、流石セイラ! 頭の回転が早い!

すっ凄い、セイラがイケメン過ぎて後ろにバラが咲いて見える!


「ひゃああああ!! 眩しっ! 」


よっしゃ! そのオーラにあの女も怯んでる!


「·····失礼、貴方は《・・・》高貴な方のようですね·····名前は?」


「セイラ・キヨテル。一応女神教の聖女ですわ」


「せっ、聖女!? 通りでこのオーラなわけだわ·····! セイラ! 貴方は私がおもてなし致します! 皆彼女を客間へ!」


パンパンと彼女が手を叩くと後ろにいた使用人達がセイラを囲い客間に運ぶ。


「へっちょっ!? なっあびゃあああ!! シノンたーん! ごめんですわああ!!!」


あっという間に運ばれてセイラの叫び声が遠くなる。


「それじゃ、パパ後よろしく」


ついでに失礼な女も出ていった。


「ふぉ·····申し訳ない·····」


凄い疲れた顔で謝る王様。


「·····宿代はこちらで負担しますので、今日のところはお引き取りください·····また明日、娘が居ない時にお話しましょう·····」


王様にそう言われて私達は城を後にした。

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