第18話 さよならシロガネ帝国
「「我々シロガネ帝国は勇者モリカワ・シノン、そしてその仲間セイラ・キヨテル、アシュラ・ホッパーを支持します」」
その声明が発表されたのは私達が疲れて寝ていた午前11時。
世界中に向けてシロガネ公営放送から発信された。
「ちゅーわけじゃから、アイツら捕まえたらシロガネ帝国には一切足を踏み入れさせんぞ。もちろん、この放送魔力電波も打ち切りじゃ!」
シロガネ帝国の発達した技術の恩恵を得る事が出来なるとしり、多くの国は私達を捕まえることをやめた。
「なにぃ!! あの3人災厄を討ち滅ぼしただってぇ!?どっどうするんじゃ!」
「どうするって陛下! 私達も認めないとシロガネ帝国のアニメが見られなくなりますよ!」
「そんなのはどうでもいい! えぇい! 仕方ない! アイツらも勇者! 彼らも勇者! それでいいじゃろ!」
私達の知らないところで、母国が圧力に負けて私達を勇者と認めていた。
「はぁ!? 嘘だろ!! 災厄を倒しただって!?」
「しかも可愛い女の子だってさ、そりゃセイラもついてくわなー」
「にわかに信じ難い話だ」
「っざけんなよ! なんで俺がダメでこの女がセイラに認められてんだ!! 名前からしてこいつも俺と同じ転生者だろ!! 絶対許さねぇ! こいつに会ったら剣を奪ってやる!!」
「まぁまぁ、そんなかっかしないでって雅人くん。私達もさぁー、一応勇者パーティなんだから。ちゃっちゃとお仕事こなしちゃおうよ」
それは当然旧勇者パーティーの耳に届いていた。
「ふぁーおはよー」
そんな事とはつゆ知らず、おやつの時間に目覚めた私。
「ぐっもーにん!シノンたん!おそようからの宴ですわよ!!」
先に起きて談話室にいたセイラに抱きつきかけられたので、サッと避けた。
「ちょっと! 避けるなんて酷いですわ! もー! 昨日頑張ったんだからちょっとくらい甘えさせて下さらない!?」
「·····その分迷惑かけてんだよおめーはよ」
後から来た眠たそうなアシュラに痛いところをつかれて、顔をしかめるセイラ。
「きぃー! 分かってますわ! だっだけど、私超絶頑張ったんだからご褒美くらい貰ったってよくない!? ぶっちゃけどんな女の子よりシノンたんの優しい包容が一番私のハートにぶっ刺さりますわ!!」
「すっげぇ元気になってやんの、これならシノンがお説教しても大丈夫だな」
「最高むしろご褒美ですわ」
顔が引き攣る私とアシュラ。
もうダメだこの聖女。
「·····セイラ、キャバクラ禁止ね·····あと旅の資金ちゃんと稼ごうね」
「オブコース! もちろんですわシノンたん! あはーんあんな事したのに、それだけで許してもらえるんですの!? 大好きー! シノンたんけっこ·····」
セイラが何か言いかけた瞬間アシュラが有無も言わずに近くにあった新聞紙を丸めて彼女の頭をスコーンと叩いた。
「反省しろバカ」
鬼のような形相のアシュラに震えるセイラ。
「ひぃっ·····まじで阿修羅ってかんじぃ·····もうふざけませんわ。許してください申し訳ございませんこの通りですわ」
さっきまでの彼女はどこへ行ったのやら。
綺麗な形の土下座を見せるセイラ。
「·····はい、次から気をつけようね」
そんな彼女の頭をよしよしとすると、セイラは顔を上げてぱぁっと明るい笑を見せる。
「ようやく起きたか、三人衆」
「おはようこざいます、皆さん」
私達の話し声に気づいて、部屋にやってきたカゲツ様とコユキ様。
「起きたとこ悪いが、移動じゃ。宴に主役が遅刻するのはあれじゃからのう」
「ごめんねー、旧ツクヨミ町で宴を行うことになったんだー、ここから馬車で1時間くらいだから、もう出なきゃ」
そんな訳で馬車に乗って旧ツクヨミ町へ。
私達が会場に着くと、そこには多くの参加者が。
「おぉー!! 勇者たちが来たぞー!!」
「ありがとー!!」
馬車を開けて降りた途端、大勢の人々が私達に向ける笑顔と感謝の言葉。
「·····すっげ、なんか照れるなこれ」
「うん、でも」
「サイコーですわね」
思わず顔を見合ってニヤける私達。
この光景を見れた事が嬉しすぎて、今までやってきたことが報われた気がした。
「ほらほら、みんなどいてどいて!」
「主役の席にわしらがエスコートするんじゃから!」
二人の王に連れられて私達は宴会の席に着く。
美しく着飾った街のど真ん中にあるヤグラの特別席。
テーブルの上には美味しそうなジュースが入ったグラスが置いてある。
「さぁ! 皆さん! グラスは持ちましたか!?」
「災厄を取り戻し、わしらの土地を取り戻してくれたこの3人に感謝を込めて! せーの!」
「「「「かんぱーい!!」」」」
ガラスが重なり合う音が聞こえたら、みんなの楽しそうな声が聞こえてくる。
「·····なんか、勇者になって良かったって思えたよ」
「そう思うことがこれから沢山ありますわ」
満足そうにグラスを傾けながらセイラはそう言った。
「ありがと、セイラ。私と出会ってくれて」
隣にいたセイラは私の言葉を聞いた瞬間、目を潤ませて口を手で抑えた。
「しっ、シノン·····、わっわたくしも·····」
「なっなぁ! このエビ美味すぎじゃねぇか!? 俺こんなに美味いもん初めて食ったよ!」
キラキラした顔でフォークで刺したエビを持ってこっちに話しかけてきたアシュラ。
「空気の読めねーやつですわね! シノンたんがいい感じのこと言ってたのに! おめーは飯の事しか頭にねーんですの!?」
セイラの貴重な顔も直ぐにいつものキレ顔に。
「うるせー! だってよぉ! 俺、こんなにいい思いするなんて思ってなかったんだぜ!? この前まで雑草くって凌いでたヤツがちょっといい事しただけでこれだぜ!? 幸せすぎて脳汁とろけるわ!」
「めっちゃ分かるー!! だよねぇ!! 幸せすぎて頭バグりそうそうになるよねー!!」
同じような事思ってたアシュラに共感したせいで頭の悪い会話が飛び出してきた。
「あぁ! あっシノンこれ食ったか!? ほれ、あーん」
「どさくさに紛れてイチャつこうとしてんじゃねーですわ! シノンたーん! 私のお肉あげますわ! はい、あーん!」
「じゃかしい! 飯の時くらい喧嘩すんな!」
「まぁまぁ、カゲツちゃんもあーん」
端にいるあの二人も楽しそう。
「ところで、シノン達は次はどこへ?」
「セイラなんか予定立ててるの?」
「んー、特にねぇですわね。なんせ、災厄の情報がここくらいしなかったものですから」
「ノープランなんすか、セイラ先生」
「イエス、旅して災厄の情報探して解決! 的なこと考えてましたわ」
「それ何年旅すんだよ」
呆れたように目を細めるアシュラ。
「るせーですわね、しゃあないでしょうに。災厄の行動は私らじゃ把握できねーんですもの。いつも見つけるのは事件の後。しかも人間に化けてるときた、見つけんのまじベリーハードですわ」
ため息をついて鶏肉をほぐすセイラ。
「目的地を決めておらぬなら、『ノエル王国』なんでどうじゃ? あそこの姫とは知り合いでのう、話つけておいてやるぞ」
「じゃあそこにしますか」
「「判断が軽いなー」」
暫く話したあと、帝国民と交流しこの日はそこでお開きとなった。
お城に帰って1泊して、旅の支度を整えたら荷物をしょって次のまちへ。
「さぁ、出発ですわよ!」
「うん!」
「あぁ!」
「皆さんお気をつけて~」
「ありがとなー! 頑張るんじゃぞ!」
皇帝達に見送られ私達は次の目的地へと向かった。
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