第15話 約束された勝利の酒
ゆらり揺られて、シロガネ城に戻る私とアシュラ。
「セイラ大丈夫かな·····」
「大丈夫だろ、さっき担架の上で暴れてたし」
「うぇっ!? やっぱりさっきの声セイラだったの!? というか教えてよ!」
そう言うとアシュラは少し複雑そうな顔をして目を逸らした。
「まっ、まぁそれより、シノン城帰ったら·····」
アシュラがが何か言いかけた瞬間、端末からサイレンの様な音が鳴り響く。
『陛下及び全兵士に緊急連絡! 聖女セイラ様が脱走しました!』
「「·····はっ?」」
※※※
「ドンペリ入りまーす!」
「きゃー! セイラ様ぁ!」
両脇に美女、テーブルには美味い酒、なんて素晴らしいんだ!
みろ! 他のVIP達が私を凄い目で見ているぞ!
「あとここからここまで、高い酒じゃんじゃん持ってきて下さる?」
「えー!? セイラ様いいの?」
「構いませんわ! 災厄祓ったお祝いですのよ!! みんな飲むがいいですわ!!」
くぅー!パチンコの負けなんかどうでも良くなりますわ!
勝利の美酒うめー!
「セイラ様本当に災厄倒したの?」
「そうですわよ、ミユキちゃん。私達の見事なコンビネーションで倒しちゃいましたわ」
覚醒シノンたんまじ激アツでしたわ~
くぅー! いい所で寝落ちしちまったのが悔やまれますわ。
「すごーい!!」
「その時の話聞きたーい!」
「いいですわよー!」
手に持っていたグラスを飲み干して、私は災厄との戦いを語り始めた。
「まず、災厄を誘き寄せるために、鎌を振り回しましたわ」
「うんうん」
「それでそれで!?」
「セイラ様武器扱えるのすごーい!」
なんか綺麗な子にこういう反応されると、沢山話したくなっちゃいますわね~。
「そしたら災厄が出てきて私達を倒すために、使い魔を送り込んできて、それを私が一撃で倒しましたわ!」
「「「セイラ様かっこいいー!!」」」
はい気持ちいい。
脳汁プシャー。
パチンコより脳汁出ますわこれ。
「まぁその後は勇者と災厄とのバトル。第1形態を倒した勇者は一瞬災厄の攻撃でダウン、そして勇者が生き返るあいだ私が聖剣使って時間稼ぎ、復活した勇者は仲間の盗賊と一緒に災厄を打ち滅ぼしましたわ」
「「「·····え?」」」
しんとなる空間。
ん? 私何か変なこといいました?
「ふざけるな!! 黙って聞いてれば! 嘘をいうな!」
「そうだぞ! 尼! ここが夢の国だからって嘘ばっか言いやがって!!」
「女のくせにちょーしのってんじゃねーよ!」
「俺たちの女の子返せ! 指名してんのにまだ来ねぇんだけど!?」
話を聞いたVIPのおっさん達が急に私に絡んできた。
「なんなんですの、中年男性の皆様。VIPの皆様には1人ずつ女の子がついてるでしょうに」
「俺の本指はミユキちゃんだ!」
「リンカちゃんだ!」
「ライムちゃんだ!」
「左に同じだ!」
·····あら、ちょうど私についてる子達ですわ。
人気の子達だったみたいですわねぇ·····でもここは、金が使うやつが正義の弱肉強食の世界。
私に負けたのが悔しいのならお金をもっと使いなさいな。
「私より面白くて金払いが良ければそちらの席に行くのでは? なんせ私聖剣つかった聖女ですし、災厄払ってますし」
「何言ってんだよ! 聖剣が勇者以外に使えるか!」
「魔力を凄く使って、ドーピングさえすれば勇者以外にも何とか使えますわよ? ただ真の力は発揮出来ず滅茶苦茶魔力回路がボロボロになりますが」
実際使った人間が言うのだから間違いない。
デメリットしかないからもうゼッテー使わんですわあの剣。
まったく体張った私を褒めて欲しいですわ。
「「「嘘つけ!!」」」
「はいはい、信じなくてもけっこーですわよ、それよりリンカちゃん? あの天使のお酒頼んでもらっても?」
「うっ、うん! エンジェルお願いしまーす!」
気分が悪いので高い酒を頼んで再び優越感に浸る。
「ねっねぇセイラ様、マジで凄すぎない? そんなこと出来るの?」
「最強過ぎない!?しかもめっちゃ稼いでるし!!」
「まぁ! 最強の聖女様なんで! 余裕すぎちゃいますわ!」
『オーッホッホッホ』と高笑をすると、更に男どもの顔が歪む。
「くそぅ!なんだあの女! ボーイ君!1番高いボトル!」
「それ2本!」
「3本!」
「5本!」
私に負けじとそれぞれ、高い酒を頼むが無駄ですわ。
「ねぇ、このシャンパンタワーっての1番デカいの作れます?もちろん注ぐのは1番高い酒で」
「ごめんなさい、セイラ様シャンパンタワーは予約してなきゃ·····」
「これでもダメですの·····?」
ジャラジャラと金貨の袋を懐から3つ取り出す。
これは私のちゃんと聖女やってた時の全財産!
世界救えばこれより高い金が入るからもうどうでもいいですわ!
私に暴言を吐きやがったこのジジイ共に目にもの見せてやりますの!
「ちょっ、ちょっと待っててください! しっ、支配人!!」
そう言うと女の子は走って偉い人の所に行った。
暫くするとニコニコしながら、偉い人と女の子が戻ってきた。
「えぇー聖女様、系列店から持ってきますので暫しお待ちくださいませ」
「オブコぉぉおおおす!!!」
勝利を確信し私は一時の喜びを噛み締めてる男どもを見て、静かに笑った。
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