聖女が強奪した聖剣は新たな勇者を生み出しました

第11話 覚醒のシノン

あーこれ、死んだ。

多分これ死んでるんだ。

だって私、災厄の毒直撃してんだよ？

絶対死んでるよ。

これ絶対みんな死んでるよ。

私が勇者になったばっかりに·····これなら、私がアシュラに連れられて奴隷になった方がましだったか。

あはは、いやー面目ない！ 一面で死んだわ！ ほんとごめん旧勇者！

つーか第2形態あるとか知らねーよ！ 可愛い女の子が芋虫！？ふざけてる！！

あーあ、なんか、だるいよ、おかーさんまだ寝てていい？

あっそうだ死んだから永遠の眠りについたんだ！いやー·····ってまて、死んだのになんで、寝起きのイヤイヤ期みたいになってるんだ？

·····もしかして私、生きてる？

「シノン！ シノン！ 起きろ！」

体を揺さぶりながらボロボロになったアシュラが私を呼びかける。

「·····あっ、アシュラ·····？」

「よかった！ 生きてた！」

目に涙を溜めながら彼はそう言った。

「なっなんで·····私、だって！」

「セイラだ、セイラが俺達を助けてくれたんだよ！」

·····ほっ、本当に凄いよセイラ。

「って！ セイラは！？ 災厄もいないし！」

「·····多分今1人で戦ってる」

「うっ、嘘でしょ·····！？」

私達を回復しながら、敵と戦ってるって！？

·····どんだけ魔力あるんだよ·····ってそうじゃない！

「やっ、やばい！早く行かなきゃ！」

私が立ち上がると、私達を覆っていたバリアと下にあった魔法陣が消える。

「ちょっ、ちょっと待てシノン！ ·····なんか聞こえないか？」

その瞬間皇帝から貰っていた携帯端末が急に光る。

聞こえてくるのは、何者かが争う音。

耳をすませるとカラカラと何かを引きずる音も聞こえてくる。

「·····後お前、聖剣どこやった？」

「ほっ！ほんとだ！？ どこいったんだろ！？·····あれっ！？ 腰のポーションも無い！」

『主よ·····ばっ、バカな！·····アイツと同じ！·····』

端末から聞こえた、女の声と野太い声。

それを聞いて私は全てを察した。

·····まじで、もう·····想像の斜めを行くなぁセイラは·····

本当に貴方が勇者になれば良かったのに。

あの剣は抜けちゃえば勇者以外でも使えるじゃん。

多分デバフをものともしないバフを自分に盛りまくって使えるようにしたんだろうなぁ·····

先代勇者と同じって·····凄いよ本当に·····

·····ごめんね、セイラ私何も出来なかった·····貴方に残念な思いをさせて本当にごめんなさい。

そしてお疲れ様、帰ったらあの剣返すね

「·····シノン、行くぞ！」

放心状態の私の腕を引きアシュラは急に走り出した。

『ブリーズ・ステップ』

彼の支援魔法により足が早くなる。

「どっ、どうしたのアシュラ！ もう戦いは終わるんだよ！？」

「バカ何言ってんだ！ アイツが俺達復活させた意味が無いだろ！！」

「えっ？」

「くそ前が見えねぇ！ 『ホーク・アイ』！」

走りながらアシュラは支援魔法を使う。

「ねぇ！ アシュラ！ 災厄が先代勇者と同じって言ってたよ！ めっちゃ焦ってたじゃん！ 倒されるんじゃないの！？」

「バカかシノン！上のあれが見えねえのかよ！！」

空を見ると眩い光を放つ物凄い大きな魔法陣。

「あいつが、災厄に効かねえ必殺技撃つか！？」

「たっ、確かに·····」

「それとよぉ！ アイツだけで何とかなるなら俺達蘇生すんの戦いの後でよくねぇか！」

「·····！」

「シノン！ 聖女様は勇者が助けに来るのを一人で健気に待ってんだ！ あのアホが懸命に体張ってんだ！ だからよぉ！ アイツが作ってくれた見せ場ちゃんと決めろ！！」

『ホープウィル・ブレッシング！！』

端末から声が聞こえると魔法陣が奇跡の光を放つ。

すると穢れた空気は浄化され澄み渡った情景が見えてくる。

「あっ！ いたっ！セイラ！」

すぐ先に見えた黒い怪物と気持ち悪い腕に捕まれた彼女。

今すぐ彼女を助けたいけど聖剣が·····！

『スティール・ウィップ！』

落ちた聖剣を鞭で掴みこちらに手繰り寄せるアシュラ。

「いてぇっ！？」

「アシュラ大丈夫！？」

慌てて彼から聖剣を受け渡してもらった。

「·····びっくりした、本当にシノンじゃなきゃダメなんだな」

「うん」

·····やっぱり私剣に認められてるんだ。

·····うん、もう弱気に考えるのはやめにしよう。

「·····アシュラ、サポートお願い」

「当たり前だぜ勇者様」

聖剣をぎゅっと握り私の力を流し込む。

跳躍をつけて、災厄の後ろに移動したならその剣を巨大化して思いっきり振るう。

『ヴァルキュリア・スラッシュ！！』

その衝撃で吹っ飛んで仰向けになる災厄。

·····まじか、結構力込めたのに真っ二つにできなかった·····

ううっ、やばい、くらっとする·····

『キラーチェーン！』

アシュラが放つ魔法で災厄はその身を封じられる。

「ナイス、アシュラ！」

「そのままやれ！シノン！！」

「うん！」

·····大丈夫、次で決める。

せっかくアシュラがアイツを縛ってくれたんだもん。

これで決めなきゃ笑われるよ。

「シノン！！ 後は任せましたわああああああ！！！」

「·····ありがとうセイラ」

聞こえたよ最高のエール。

私達を信じてくれてありがとう。

私を導いてくれてありがとう。

ねぇ、お願い聖剣さん、信じてくれた仲間の為にもこの災厄私に祓わせて。

その願いに反応した聖剣は淡い青白い炎を纏う。

「聖剣抜錨！」

新たな希望の剣は私の願いを聞き届け真の力を発揮する。

これは全ての闇を葬る聖なる光。

さぁ、人類の敵よ恐れ戦くがいい！！

「喰らえ！『 サントゥクス・レクイエム』！！」

剣を喰らった災厄は青い炎に包まれて灰になる。

絶望を振りまいた彼の最後は呆気ないものだった。

夕焼けの空に吸い込まれた灰はあっという間に消えていく。

そんな最後は気に求めず私は彼女の元に駆け寄った。

「アシュラ！ お願い手伝って！」

「おう、おーい皇帝さん聞こえてる？ 勇者様がやりましたよー」

アシュラが端末に話しかけると結界がすっと消えていく。

セイラを抱えて私達は元来た道を戻った。