第9話 聖女怒りの聖剣
「ひいいっ!! 気持ち悪っ! 害虫害虫悪霊退散!!」
セイラは胸元で十字を切って嫌そうな顔を変化した災厄に向ける。
「なんなんですの! こんなクソでけぇ芋虫いましたっけ!? 私虫が嫌いなんですの! きめぇし潰すと変な液体でるし! あれ?そういえば災厄どこ行きましたの? シノンたんとアシュラもいないし·····もしかして、倒しちゃった感じですの!? きゃー!流石私のシノンたん! 後でギュッとハグでもしてやろうかしら!」
1人で騒いで周りを見渡すセイラ。
「·····嘆かわしいこんなアホが聖女なんて」
そんな彼女を見て彼は怒りを通り過ぎて呆れてしまった。
「あっ? 害虫のくせに喋れるんですの?」
「この惨状を見て、私の姿にしか目がいかないとはな·····勇者が可哀想だ」
「·····お前何を言って」
災厄の言葉に首を傾げたセイラだったが、彼の体の後ろに水色の髪とボロボロになったターバンを見つけると目の色を変える。
「·····」
彼女は声をあげずに、杖を強く握り直した。
「聖女、本当にお前馬鹿なんだな。あの勇者が私を倒せるとでも? 自分が弱いくせに一丁前に勇者の剣を抜いて調子に乗ったあの女が強いとでも!? 笑わせてくれる! あんなのに私は倒されない!!」
芋虫は煙を身体中から『ふしゅーふしゅー』と音を立て放出しながらそう言った。
「貴様がよこした役立ずな盗賊も勇者と一緒に葬り去ったわ! ちょいと私の毒を体内に入れただけで、二人とも殺虫剤を掛けられた虫のようにもがいていたぞ!?」
握り直した杖の下を強く地面に打ち付けて彼女は災厄を睨みつける。
「·····ぶち殺すぞ災厄!」
ど怒り。
普段の彼女からは想像がつかない本気の怒り。
杖で再度地面を二回突き魔法陣を描く。
彼女から溢れ出す力。
眩い光を放つ魔法陣。
「ははっ! 聖女に何が出来る!! 勇者は死んだ! もう聖剣を使える人間はいない! お前は私を倒せないんだよ! ご自慢の魔法は私には効果がない! 無意味なんだよ!」
「·····何をほざいてるんですの」
『スティール』
魔法を唱えると彼女の手の中には聖剣が。
「がぁっ!? ·····やっぱりいてぇですわ」
聖剣は勇者以外のものが触れると、血管が焼けるような痛みに襲われる。
『女神の加護、聖女の奇跡、戦乙女の加護』
聖剣のデバフを消すために彼女は自分に支援魔法をかける。
回復力上昇、痛覚遮断及び気力上昇、攻撃力上昇。
『穢れの浄化、風神の加護、堕天使の愛』
毒耐性上昇及び外気の浄化、機動力上昇、魔法攻撃態勢上昇。
「·····はぁ」
触れただけで力を持っていかれる聖剣を彼女はドーピングだけで何とか使えるように押さえ込んだ。
こんな芸当は彼女にしかできない。
邪魔になった杖をそこら辺に捨てて聖剣を構え災厄に向けるセイラ。
「そうくるか、聖女」
「災厄、全身全霊で私がお相手いたしますわ」
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