第6話 謁見シロガネ皇帝

「おぉーうちの城より豪華じゃん、流石シロガネ帝国」


「気に入って頂けて何よりです、聖女セイラ」


キョロキョロと城を見渡すセイラを笑顔で見つめるシロガネ皇帝。

シロガネ城に案内された私達は、謁見の間に通されお茶を出されている。


「あっ、あの皇帝陛下、わっ私達はこの国で悪さをする訳じゃなくてその、災厄を払いに」


「そっそうです! 別にあんたの国を落とそうとかそんなんじゃなくて! 敵意はないんです!!」


「えぇ、分かっていますよ」


弁解するアシュラと私を見ても疑わずに笑顔を向ける皇帝陛下。


「新勇者とその仲間達。シロン王国から連絡がきてましたから、こちらに指名手配犯が勇者パーティを自称して逃げてくるから捕まえてくれとね」


「「ひいっ! やっぱり」」


「いえ、捕まえませんよ?」


あっさりと横に手を振るシロガネ皇帝。


「災厄払ってくれるのでしょう? 勇者パーティを捕まえるなんて事する訳ないじゃないですか」


ティーカップを傾けながら優雅に彼女はそう言った。


「話が分かりますわね、シロガネ皇帝」


「ちょっセイラ! 無礼だよ!」


「ふふっ、気にしないでください。勇者シノン。こう見えて私彼女と同い年ですので」


すっ、凄いずっとニコニコしてる。

というかこの二人と同い年!? 全然見えない·····

若いのに皇帝·····本当に凄い人がいるんだな·····


「ほえー陛下は私と同い年、全然見えねーですわ何故でしょう?」


「あぁ、貫禄というかオーラというか、俺達と違うよな」


·····多分二人より精神年齢が上なんだと思うよ。


「コホン·····さて本題に入りましょうか」


苦笑いしながら話題を変える陛下。


「災厄ですが、この国の東側の結界に封じ込めています。貴方にはそこで災厄麻薬ドープを倒して欲してください」


初めて見る彼女の険しい顔に思わず私は唾を飲んだ。


「ドープ·····ってことは麻薬の化け物ってことか?」


「えぇその通りです盗人アシュラ」


「ぬっ、盗人·····?」


「その·····盗賊だと語呂が悪かったので·····」


「話の腰をおるんじゃねーですわアシュラ。それで麻薬ってことは中毒になる物質でも出してくるんですの?」


「物質·····というかガスですね、吸うと幻覚症状または毒状態、とにかくヤバい煙を出してくるんです」


「そいつは厄介ですわね·····」


手を顎に当ててうーんと唸るセイラ。


「あれが復活した時は大変だったらしくて、その代の皇帝が被害を防ぐ為に結界に封じ込めて現在に至ります。ちなみに結界は皇帝に代々解き方と維持の仕方を受け継がれていますので、戦う時は結界前までついて行きますのでよろしくお願いしますね」


「あっ、はい! お願い致します!!」


「すげー皇帝自ら出向いてくれんのか」


アシュラはシロガネ皇帝に関心して目を丸くしている。


「えぇ、私にしか結界は解けませんもの。それに皆さんが入ったら直ぐに締めなきゃいけないですしね」


「「·····えっ!?」」


「そっそしたらどーすんだよ! 俺たち! 災厄倒すまで帰れねぇのか!?」


「てっ、撤退できないの!?」


「なあに騒いてるんですの、当然でしょうに。結界内部には災厄の使い魔がわんさかいますわ。それが国に出てきたらどうなるかわかっているんですの?」


·····あっ、そっか。


「ごめんなさい、ずっと開けておきたいのはやまやまなんですが·····撤退時の為にこの携帯端末をお渡しします、何かあればそれで助けを求めてください」


腕時計のような端末を受け取り私達は手首につける。


「ありがてーですわ、皇帝陛下」


「私達も出来るだけの協力はいたします。何かあれば仰ってください」


「そんじゃ、カバンにいっぱいのポーションを頼みますわ、私達3人分、1番高くて効能良いやつを!」


キメ顔でバキュンとセイラは彼女に指を指した。


「そっそれだけでいいのか!? もっと装備とか!」


「弱気になんなアシュラ、装備なんて邪魔なだけですわ、いつもの服装で私がバフかけりゃいいんですわよ」


·····今の一言多くの冒険者から批判を買いそう


「それでは明日は頼みますね」


「はっ、はい!!」


「シノンたん、ビクビクしないでどしっと構えなさいな、この国は勇者の私が救うとか言っちゃってもいーんですのよ?」


「あはは、いや、そのー·····」


少し弱気な私をジーッと細い目で見つめてくるセイラ。

うっ、うぅ、私まだそこまで自信ないんだけど·····ええぃ! ままよ!


「よーし!! 明日は私達がこの国を救っちゃいますから! この最強チームでパーフェクトにミッションコンプリート!」


「それでこそ私の勇者ですわー!!!」


調子に乗りすぎた発言を聞いてセイラは私に抱きついた。


「ふふっ、ありがとうございます勇者シノン。頑張ってくださいね」


皇帝からの激励を貰い私達は部屋を後にした。

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