第011話 環境改善
「ふぅ…なんとか今日中に張り終えたな…」
僕は額の汗を拭いながらリビング一面に張り終えたフローリングシートを見る。普通のフローリングシートであるが、傾いた夕日が差し込み値段以上に綺麗に見える。
ステラのバーベキューで焦がした床をちゃんと直すには大工さんを呼んで工事しなけば、ならないところであるが、ホームセンターで買ってきたフローリングシートを使えば、一日でこの通り、新築の床のようになる。
しかも、元々のフローリングよりも明るめの色を買って来たので、明りが点いていないこの部屋が明るく見える。
「あっ、明りと言えば、電気はもう通っているかな?」
昼間、電力会社に契約の再開を連絡すると、今日中に通電してくれるという事だったので、リビングの明りのスイッチを押してみる。
パッ!
「おっ! 点いた! ちゃんと電気が通ってる!」
パッと部屋のシーリングライトが点灯して部屋を明るく照らす。
「あっ! 電気通ってるっ!」
ステラの部屋の明りに気が付き声を上げる。
「これってもしかして、いけるかな!?」
ステラは続けてそう言うと、ダイニングキッチンのカウンターに置いていた携帯ゲーム機を取りに行き、リビングのコンセントに電源アダプターを突き刺す。
「おぉぉっ!! 充電できてるぅ~!! これで好きな時に家で充電できるぅ~!!」
そう言って携帯ゲーム機を掲げて喜ぶ。
「ステラ、携帯ゲーム機の充電に喜ぶのは良いけど、家の中の家電が動きっぱなしになってないかどうか調べて来てくれないか? 僕はテラスに出していた家具を入れていくから」
「わかったぁ~!! すぐ行ってくる!」
ステラは聞き分けよく、すぐに家の家電を調べ始める。恐らく、面倒な事はさっさと終わらせてゲームに集中したいのであろう。
しかし、あの携帯ゲーム機… 最初に見つけた時はちゃんと充電されていて電気が入っていた… ここの家の電気はもっと前に止めたはずなのに、なんで電池が持ち続けていたのだろう…謎だ…
僕はそんな事を考えながら家具を運び込む。ステラの方は一階の家電のチェックが終わったのか、今度は階段を使って二階に駆け上がっていく。
その間、家具を運び終えた僕は、同じくホームセンターで買ってきた電気ポットをリビングのテーブルの上に取り出し、ミネラルウォーターを入れてお湯を沸かし夕食の準備を始める。
水道もお昼に電話してみたが、開通は明日の朝になるようだ。また、ガスに関しても明日の昼ぐらいに新しいボンベを持って切れくれるとのことで、明日中に普通に暮らす分のインフラは整う事になる。
ただ、ネット回線については、設備業者の予定を調べてからのことだったので、暫くかかりそうだ。仕事にも連絡にも使うので早く開通してくれれば良いのだが…
「二階の電気、見て来たよぉ~ 廊下の明りがついていた以外はちゃんと消えてた… えっ!? それカップラーメン!?」
ステラは報告の途中で、僕が準備しているカップラーメンを見て目を丸くする。
「朝も昼も冷めたお弁当だったからね、夕食は温かい物を食べたいなって思って、一応、おにぎりもあるけど、ステラはカップラーメンは苦手かい?」
「うんうん、嫌いじゃない、逆に好きな方っ! たまに食べた事があったけど、ジョージが塩分高いのは苦手だったから、あまり食べた事がなかったのっ!」
子供と老人では食の好みが違うから、ステラは祖父に合わせていたんだろうな…
「そうか、大丈夫か、それじゃあ、醤油とカレーとシーフードとトムヤムクン、ステラはどれがいい?」
「カレー! カレーがいい!」
ステラは即決でカレーに決める。
「それじゃあ、僕はシーフードにしようかな、おにぎりも好きなの選んでいいよ」
そう言って、コンビニ袋を見せて好きなおにぎりを選ばせる。
「うーん…こんなにあるとまよっちゃうな…あっ!これこれ! 唐揚げマヨとツナがいい!」
ステラは瞳を輝かせておにぎりを取り出す。
「じゃあ、僕は梅にしようかな、おっとお湯がわいたようだね、カップラーメンの準備をしようか」
そう言って、二人でそれぞれのカップラーメンの包装フィルムを剥がし、蓋を開ける。
「じゃあ、お湯を注ぐよ、火傷しないように手を離していて」
ステラの分と僕の分にお湯を注ぎ終わると、僕はスマホで三分のタイマーをつける。
「じゃあ、先におにぎりを食べようか、頂きます!」
「頂きますっ!」
二人で手を合わせて頂きますをすると、ステラは早速唐揚げマヨのおにぎりに齧り付く。
「うーんっ! 美味しいっ! 唐揚げはサイコーっ! あとマヨネーズはやっぱり何かと合わせて食べた方が美味しいっ!」
少し不穏な言葉が聞こえたが、コンビニおにぎりを喜んでくれている様だ。僕も梅おにぎりに齧り付く。久々の梅干しの味に感動する。
「ステラは唐揚げが好きな頭だけど、揚げ物が全般が好きなのかい?」
「うんっ! ジョージが良く白身魚のフライを作ってくれていたから、よく食べてたよ~ ジョージはビネガー派だったけど、私はタルタルソース派だった」
「白身魚のフライというとフィッシュアンドチップスか…イギリスの定番料理だな」
「後、他にも茹で卵のフライとか、パイとかも良く作ってくれたよ、私は牛肉の入ったのか好きだった、でもニシンのはちょっと苦手…」
茹で卵のフライはスコッチエッグだな、ニシンの方は…あぁ、あれか…ジブリ映画でも出てきた奴か…
「あれ…目が合うと食べづらい…」
「ん?…ジブリの方じゃなくて、本場のスターゲイジーパイの方か…確かにあれは見た目がね…」
映画の方ではニシンは全てパイの中に納まっていたが、スターゲイジーパイの方は何匹のニシンの顔がパイの外に飛び出していて、日本人の感覚からすると少し気持ち悪い…
ピピピッ!ピピピッ!
スマホのアラームが三分を告げる。
「カップラーメンが出来たみたいだよ、こっちも頂こうか」
「わーい! カップラーメン! しかもカレー! カレー食べるの久しぶりっ!」
そう言ってステラはさっさと蓋を捲ると一気にカレーの香りが広がり、ステラは満面の笑みでカレーヌードルとずるずると啜り出す。
「美味しいっ! 本当に美味しいっ!」
ずるずると上手に麺をすするステラは仕草は日本人その物である。外国人は麺をすする事がなれていない人もいるが、問題は音を立てながら啜る事である。なので、今のステラのように満面の笑みで音を立てながら麺を啜るのは日本かぶれの人ぐらいだろう。
向こうの友人のスティーブも最初は音を立てて、麺を啜る事に忌避感を持っていたが、アニメを見てからはようやく音を立てて麺を啜るようになっていた。
「はぁ~ お腹いっぱいっ! 御馳走様でした~ しあわせ~♪」
そう言ってステラはカップラーメンとおにぎりを完食して満足な顔をする
「はい、ごちそうさまでした」
食べ終わった僕も、残ったゴミを袋に詰める。
「さて、ステラ…」
ゴミの片づけを終えた僕は改まってステラに向き直る。
「なに? 八雲?」
キョトンとした目で僕を見る。
「ちょっと… 色々、話をきいていいかな?」
僕はそう切り出した。
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