第010話 同居の提案
「ん… んあ… ふぇ?」
丁度、僕がホームセンターでの色々な買出しを終えて、荷物を運び終えた時、ソファーで眠っていたステラが目を覚ます。
「あっ、ステラ、起きたのかい?」
「ん? えっ? なに!?」
ステラは家に運び込まれた様々な荷物や、目の前に置かれている新しいお弁当に驚き、目を丸くして、荷物やお弁当をキョロキョロと見て、最終的には目の前のお弁当に視線を向ける。
「とりあえず、お昼になったし、ご飯を食べながら色々と話そうか」
僕はステラの前のソファーに座りながら、そう告げる。
僕自身はステラと話した後、この家に住む覚悟を決めて、この家を再び人が住めるようにする為に、とりあえず、片付けや掃除をする為の道具を買ってきて一仕事終えた所だが、ステラは朝食を食べて、話をして泣いて眠った後に今起きた所なので、感覚的には朝食をたべてすぐ昼食になるじょうたいであるが、涎でもたらしそうな顔をして物欲しそうな目でコンビニ弁当を見ている。恐らく、今までよっぽどお腹を空かせた生活をしていたのであろう。
「じゃあ、早速食べようか」
ステラをいつまでも待て状態に犬のようにしておくのは気の毒なので、そう声を掛ける。
「うん、食べたいっ!」
「じゃあ、頂きます」
「頂きますっ!」
二人で頂きますをして早速弁当を食べ始める。しかし、ステラは本当に嬉しそうにお弁当を食べる。
「ところで、ステラ、大事な話があるんだけど…」
「なに?」
ステラは僕の方を見ず、愛しそうに眺めていた唐揚げをパクリと口の中に放り込む。
「…僕はこれから、この家で住もうと考えているんだけど…いいかい?」
僕がそう告げると、ステラは吃驚した顔を上げ、ゴクリと唐揚げを飲み込んだ後、じっと僕の顔を見る。
「その前に…今更だけど…貴方は誰?」
キョトンとした顔で聞いてくる。
「あぁ、そう言えばステラの事は色々と聞いたけど、僕の事を話すのがまだだったよね、僕は、ファイン・八雲… いやステラには八雲・ファインと言った方がいいかな?ここに住んで居たジョージ・ファインの孫に当たる人間だよ。僕の事は八雲って読んでくれたいいよ」
「えっ? 八雲? あなた、ジョージの孫なの!?」
ステラは吃驚した顔で僕を見る。
「そうだよ、今まで日本から離れたアメリカに住んで居たんだどね」
するとステラは難しそうな緊張したような顔をして口を開く。
「へ、へろぅ…」
「いや、日本語分かるよ、今までだって日本語話していただろ?」
僕は笑いそうになるのを堪えてそう返す。
「あっ! そうだった!」
「それで、ジョージの孫である僕がここでステラと一緒に暮らしてもいいかい?」
僕は改めてステラに尋ねる。するとステラはちょっと考え込んで、躊躇いがちに口を開く。
「…今のように…ちゃんと食べ物を用意してくれる?」
難しそうな顔をしていたので、どんな事を言われるか覚悟していたが、それがご飯を食べさせてくれとか、予想外の引き換え条件に僕は笑ってしまいそうになる。
「大丈夫だよ、それぐらいの事、まぁ、暫くは自炊ではなく買って来たものになるけどね」
「あぁ~ よかったぁ~ 私の分だけの食べ物取るのも大変だったのに、八雲の分まで取らないといけないのかと思ってびっくりしたぁ~」
ステラはそう言って安堵する。僕がちゃんとステラの分まで食べ物を用意することを言っていたのではなく、ステラが僕の分の食べ物を用意しなければならないのかと、心配していたのだ。
仮に僕がステラに食べ物を用意してもらう事になっても…ザリガニは勘弁してもらいたいな…
っていうか、ステラは祖父がいない時に、食べ物でかなり苦労した様子だった、その時の話も聞いてみたいけど、今は家を生活できるようにする事が先決だ。
「食べ物は僕がちゃんとステラの分まで用意するから安心して、それよりも、これからこの家をちゃんとした生活が出来るように整えていくから、ステラも手伝ってくれるかい?」
「うん! いいよぉ~」
ステラは快く快諾する。
「じゃあ、先ずはこのリビングの床をフローリングシートに張り変えようと思うから、僕は荷物をテラスに運び出すから、ステラはホウキで掃除をしてくれるかな?」
「えっ!?」
「えっ?」
ステラが驚きの声を上げるので、僕も何か言い間違えたのかと思い驚く。
「掃除って… るんちゃんの仕事だよね…?」
「るんちゃんって…なに?」
知らない新しい人物が出て来たので、ステラに尋ねる。
「るんちゃんって、これぐらいの丸い形をした子で、いつも決まった時間にリビングのお掃除をしてくれていたの、私のお掃除のお仕事はそのるんちゃんの通り道の物をどけるのが仕事」
ステラの仕草や言葉の内容から、るんちゃんとやらは人間の事ではなく、どうやらお掃除ロボットの事らしい…しかもステラの中では掃除の仕事はほうきで掃く事でも掃除機を使う事でもなく、お掃除ロボットの通り道を確保する事のようだ。
「…でも、そのるんちゃんも死んじゃったの…ある日突然いつもの時間に動かなくなって… それで庭に埋めて上げたの…」
ステラは遠い目をしながらそう語る。
うん、祖父が病院から出れない事が分かった時、電気の契約を解除したから、電気がなくて動かなくなったんだと思う… 一応、敷地内に埋めたという話だけど、不法投棄には変わりないので、あとでるんちゃんとやらを掘り返しに行こう…
「そうか…じゃあ、るんちゃんはもういないから、ステラがほうきを使って掃除をしてくれるかな? 今日中にリビングを張り変えてしまいたいし…」
そう言って、ステラをソファーから追い立ててほうきを持たせて掃除をさせる。その間、僕はリビングの家具をテラスに運び出し、リビングに何もない状態にしていく。
「これで、全部っと… ステラー 掃除は終わったかい?」
全ての家具を運び終えた僕はテラスからリビングに戻ると、全く掃除が進んでないリビングに困惑するステラの姿があった。
「えっと…全然、終わってないようにみえるけど…」
「わ、わたしには掃除のスキルも熟練度もないから…荷が重すぎる…」
「スキル? 熟練度? ステラ…君は一体何を言ってるんだ…」
ゴミは埃を飛び散らせてばかりで、ちゃんと掃き掃除ができない自分にステラは困惑しているが、僕もステラの言い訳に困惑する。
「もう、後は僕が掃き掃除をしておくから、ステラはそこを水ぶきしておいてくれるか?」
そう言って、バーベキューセットがあった場所を指差す。ここは本人に責任をとって掃除してもらおう。
「わかった!」
ステラは元気よく答えると、買ってきたバケツを持って玄関の方へ駆け出す。
「えっ? 玄関? そう言えば、忘れてたけど、今水道とまっているんだったな… ステラはどこへ水を汲みに行ったのであろう?」
そんな事を考えていると、ステラが水の入ったバケツを持って返ってくる。
「はい! バケツにお水汲んで来たよっ!」
「ありがとう、ところでどこで水を汲んできたんだい?」
「外の用水路」
僕はその言葉にバケツの中を覗く。都会の用水路とは違って、透き通った綺麗な水が入っていた。これなら拭き掃除に使うなら大丈夫だろう。
「じゃあ、その水を使って雑巾でそこを拭いてもらえるかな?」
「えっ!?」
再びステラは声を上げて驚いた顔をする。
「えっ? ステラに取って拭き掃除ってどんなことをしていたの?」
「ジョージがモップで拭いていくから、私がお水を汲んでくる役目」
うーん、どうやら祖父は孫のように幼いステラが可愛くて、ちゃんと家事手伝いを教える事が出来なかったみたいだな… これは色々と大変な事になりそうだ…
「じゃあ、僕がやり方を見せるから一緒に掃除をしていこうか…」
そうして、一人でした方が早いのだが、僕はステラに教えながら掃除をしていくことになった。
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