第7話 モーニングティー
朝また早く目が覚めた。
リビングに出ると予想通り誰もいない。
今日は一番乗りかと洗面所に行くと、また彼女がいた。
「今日も一番乗りはとられたか」
「ダントツトップです」
声を弾ませて嬉しそうにする彼女に言った。
「ちゃんと寝れた?」
「睡眠時間が一番少ないって、先輩も知っているじゃないですか」
やっぱり彼女は黒い目で僕を見つめてそう言った。
ああ。そっけなく言うと、少し照れくさそうに彼女は視線を窓へと移した。
「今日は曇ってるのに蒸し暑くなくてすずしいですね」
「確かに、珍しいかも」
「紅茶でもどうです?ちょうどお菓子もあるので」
「最高の朝食だよ。デッキに行こう」
そう言って先にデッキに出て、海を眺めていた。
「先輩、できましたよ!」
ティーカップのスレスレまでホットティーを入れて、彼女が運んでくる。
危なっかしくて、すぐに両方受け取り、テーブルに置いた。
潮風と共に、紅茶の甘い香りが広がる。
「いい茶葉だね」
「先輩も紅茶好きなんですか?」
「コーヒーは苦いからさ」
冗談めかして言うも、彼女は私も苦くて無理ですと真面目に答えてきた。
そんな甘党な先輩にと、彼女はさっき言っていた菓子を渡してきた。
レモンケーキ。
懐かしい食べ物だ。
18個目。
これは明確に言える。
18個目のレモンケーキ。
どれも毎回紅茶と一緒に。
濃厚なバターの香り、爽やかなレモンが走り抜けていく。
潮風の香りがどんなに強くても、この食べ物の香りはわかる。
いつも通り楕円形をしたこの食べ物を見るとわかるものがある。
変わってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます