第6話 砂浜

「遅いぞ、肉全部食う寸前だからな」

「悪い悪い。別に焼いててくれてもよかったんだけどな」

「遅れてきてそれはないぜ。明日はもっと早く片付けてろよ」

当然何があったかなど知っているのに、何もなかったかのようにテルは言う。

「お前昔そんな感じだったか?」

突然の質問に戸惑った。

なんせもう6年も知っているんだ。

だが昔を語るほど付き合いは長くない。

「掃除は昔から好きだよ」

「そうか」


大抵のものは全て食べ終わり、ビールもそこを尽きてきたころ、部長が海からスイカを引っ張ってきた。

毎年恒例のスイカ割りだ。

海で冷やされたスイカはちょうどいい温度で、心なしか程よくしょっぱい。それがまた甘さを引き立たせる。

透き通った瞳が、漆黒の瞳を際立たせるように。

スイカ割りのトップバッターは毎回掃除当番の二人組だ。

彼女に先を譲ると、絶対割れないですよ。と言いながらも引き受けてくれた。


目隠しをされる寸前、彼女の瞳は確かに僕を見ていた。


午後はずっと遊び、夕食も酒ばっかりで大して食べず、皆疲れていた。


午後11時、太陽は沈み、ヴィラは海と共に揺れ動く。

どこか行くには遅い時間だが、なにもしないには早い時間だ。

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