第8話 第二のカラクリを暴け
エイナードは勝ち誇った顔で、同席している皆の顔を見渡す。そしてまた鼻を膨らませ、話を続け出す。
「あ、それとクルスさん? でしたっけ? あなたは必要以上に私の力をインチキだのトリックだの言ってましたが、私は本物です。見えるのですよ、人の運命が」
エイナードは両手を広げ、天を仰ぐ。自分に酔いしれているこのバカに一発食らわせたい、俺はそう思い、拳を握り締める。エイナードはそんな俺を横目に、サーロットに再び話し掛ける。
「では、私の力をもう少し見せましょう。サーロットさん、あなたのオーラから猫の姿が見えます。猫を飼ってらっしゃいますか?」
「えぇ、飼ってるわ」
「猫の名前はブタノスケですね」
エイナードの言葉により、またサーロットお嬢様の顔が引きつる。
「……当たってるわ。何で、何で分かるの? あなた、ホントに何でも見通せるの?」
「はい。天から与えられた私の力です。そして、私の力は皆さんを幸せにする為にあるのです」
エイナードは止まらない。俺は成す術なく、呆然と二人を見ている。て言うか、猫の名前にブタノスケはないだろと、今さら心の中で突っ込む。
隣のクルスがうつむいて、考え事をしている。コイツだけが頼りだ。俺はクルスに期待を込めた熱い視線を送る。
「そうか、そういう事か……。でも、それだともっと難しい問題になる……」
クルスが一人でブツブツ言っている。何か分かったんなら、早く言え。俺はイライラしながら、相棒の答えを待つ。
「エイナードさん、謎が解けました。いや、一つの謎は解けたのですが、新たな謎が増えましたけど。あなた、ホットリーディングを使ってますね」
クルスは自信満々の表情でエイナードを指差す。エイナードの眉が動く。明らかにその言葉に反応している。俺はまた分からない言葉が出たので、首を傾げる。
「ホットリーディング。つまり、コールドリーディングの様に会話や表情で相手の心を読み取って行くのではなく、あらかじめ相手の情報を調べておいて、あたかも言い当てた様に見せる技術の事です」
「なにぃ、メチャクチャ詐欺じゃないか。そりゃ、知ってりゃ当たるよぉ」
俺はかなり大げさにビックリする。今はそれ以外に存在をアピール出来ない。俺はモテたいのだ。とにかく目立っておかなければならない。
エイナードがあごに手を当て、考え込んでいる。余裕の笑みも消えている。今回初めて追い詰められた、そんな顔をしている。
「でも、問題が一つ。誰かがエイナードさんに情報提供をした方がいます。つまり、内通者です。じゃないと、猫の名前まで分かりませんから」
自分の力をもっと誇示しようとして焦り過ぎて、自ら墓穴を掘ったな。たかが猫の名前だったが、大きな収穫を得たぞ。俺はウンウンとクルスの働きに満足する。
「で、クルス君。内通者って誰なの?」
俺の頭の中で謎になってる事をクルスに質問する。
「分かりません。実は僕の予想では、この中の誰かが内通者なのではと睨んでいるんですが、誰かまでは特定出来ていません」
クルスの言葉で一同は互いの顔を見回す。この中に占い師とつながっている奴がいる。占い師以外は全員疑心暗鬼に陥る。
「皆さん、犯人探しみたいな事、止めませんか? せっかくの楽しい場が台無しになります。もっと仲良くしませんか?」
大人しい感じのミレが声を上げる。この子はカワイイだけじゃなくて、すごく協調的で優しい子だ。俺はそんな彼女に見とれてしまう。
「そうですね。ミレ様の言う通りです。皆さん、仲良くしましょうよ」
メイドのカルネもミレに続く。ここはミレの意見に賛成してた方が彼女の好感度が上がるな。俺は打算的な事を考え、占い師への追及を一時止めにする。
こうして、いつもの合コンの様に、男女の何気ない会話の時間が訪れる。
クルスはうつむき、ずっと一人で考え事をしている。内通者が誰なのか推理しているのだろうか。しばらく俺はクルスに時間を与え、お目当てのミレさんとの会話に専念する。
エイナードはサーロットお嬢様とユリンと話をしている。二人とも彼に熱心に話をしている。真剣な悩み相談をしているみたいだ。ボンバが隙を見て、サーロットとエイナードの会話に割り込もうとしている。そして、サーロットに邪魔者扱いとして、かなり怒鳴られている。カルネは至ってサーロットの様子を陰で見ている様な感じだ。
サーロットとユリンは完全に占い師に落とされたのか。俺はあちらの様子も気になり、時折確認する。もちろん大事なのは美しいミレさんと仲良くなる事、そして彼女になってもらう事なのだ。
今回の合コンの流れを俺は整理する。占い師がいて、特殊なものになったが、基本は同じだ。カワイイ女の子と仲良くなる、ただそれだけだ。ユリンさんはエイナードがいる限り手を出すのは無理だろう。サーロットとカルネは対象外だ。という事で、俺はミレさんの一点狙いという事になる。
ミレさんとの会話を俺は盛り上げる。彼女も笑ってくれている。時折、俺がミレさんとエロい事をしている妄想の世界に入ると、彼女に嫌な顔をされる。その辺が気になる所であったが、上手くいっている。
今回はイケるかもしれない。俺はウキウキしながら、トイレへと向かった。
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