第4話 ルックス査定システム発動

 次はいよいよ、お待ちかねの女性陣の自己紹介の番だ。俺は司会進行役をノリノリで続ける。


「それでは、そちらの白のドレスの方から自己紹介をお願い出来ますか?」


 俺から一番離れた席の女の子に声を掛ける。その女の子は少し照れた様な表情を見せて、小さく頷く。


「私の名前はユリンと言います。貴族をやっております。よろしくお願いします」


 貴族とは思えないくらいの丁寧な物腰だ。素敵だ、大好きだ。俺の男の本能が脳を活性化させる。


 次の瞬間、俺の脳内にあるルックス査定システム、通称“リトルサーク”が発動する。


 説明しよう。


 ルックス査定システム、“リトルサーク”とは、女の子のルックス、いわゆる見た目だけの良し悪しをランク付けするという、女の子に知られると怒られてしまうシステムの事なのである。


 このランク付けは、かなりの美女がAランク。美女がBランク。普通の見た目がCランク。やや劣るがDランク。かなり劣るがEランクなのである。


 もちろん、これは俺の独断と偏見で決められる。


 だから、女の子にこのランク付けの結果を知られる事は非常にまずいのだ。見た目だけを見て、中身を見ないなんて最低と言われてしまう。そうなると、俺は女の子達から嫌われる。それは、絶対に避けなければならない。なぜなら、俺は女の子にモテたいからだ。


 では、話を戻そう。


 この白のドレスのユリンと言う女の子の評価は、Bランクだ。正直、お付き合いしたいぜと言うレベルである。


 茶髪のセミロングヘアがとても似合っていて、活動的な感じがする。それに貴族であるのに、それを鼻に掛けない所が性格の良さを物語っている。この子と仲良くなりたいとチェックをしておく。


「では、次の隣の方、お願いします」


 俺はユリンの右隣の青のドレスの子に視線を移し、声を掛ける。一瞬、彼女は引きつった顔を見せる。


 この子もあまり合コンに慣れていないから、自己紹介が苦手なのか。俺はそう感じ、少し様子を見る。


「はい、スミマセン。こういう場にあまり慣れていないので、少し緊張しています。私の名前はミレと言います。私も貴族です。よろしくお願いします」


 大人しそうな彼女が丁寧に挨拶する。黒髪でロング、そしてスレンダーな体型がスゴくいい。かわいい系と言うより、むしろキレイ系と言った方がいいだろう。


 ミレと言う女の子の評価も、Bランクだ。彼女もスゴく魅力的だ。この女の子ともお付き合いがしたい。俺は妄想モードに突入し、エロい事を考えてしまう。


 すると、ミレの表情が苦笑いに変わる。あれ、まただ。俺がエロい事を考え始めると彼女はスゴく嫌な顔をする。


 また、ニヤけた顔になってしまったのか。俺は真顔になり、進行を続ける。


「それでは、次の方、お願いします」


 ミレの隣のピンクのドレスのお嬢様に俺は話し掛ける。何かとこの合コン、このお嬢様がお騒がせしてくれるよなとチラリと彼女の顔を見る。


「どいつもこいつも、ロクな挨拶をしないわね。ちっとも面白くないわ。私の名前はサーロット。この国の最高上級貴族のホウム家のサーロットよ。本来なら、こんな庶民の合コンなんて、お下劣なモノに参加しないんだけど。暇だから来て上げたのよ。感謝しなさい。だから、貴方達、しっかり私を楽しませなさい。分かったわね?」


 サーロットと言うお嬢様は立ち上がり、皆を見下ろしている。皆、視線を落とし、下を向いている。


 しかし、俺はサーロットお嬢様の顔をじっと見つめる。なぜなら、俺は彼女を査定しなければならないからだ。


 身分だの、貴族だの、お金だの、そんなの一切俺には関係ない。その女の子がカワイイかどうかが重要なのだ。臆する物など何もない。


 “リトルサーク”がサーロットお嬢様を分析する。彼女のルックス評価は、何とAランクだ。絶世の美女だ。顔もスタイルも最高だ。男なら誰もが彼女の美貌に見とれてしまうだろう。


 しかし、これまでの一連の行動が示す様に、彼女の性格は決して良くない。いや、ハッキリ言おう。かなり、性格の悪いお嬢様だ。


 俺は美女が好きだ。大好きだ。しかし、性格が歪んでいる女とは一緒にいたくない。あえて言おう。付き合いたくないのだ。


 Bランクの性格の良い女性が二人もいる。あえてイバラの道を進む事はない。今回は彼女は無しだなと俺は方向性を決める。


 フムフムと頷きながら、次のメイド服の女の子に自己紹介を促す。


「じゃ、最後ですけど、お願いします」


 俺が話を振るとメイド服の女の子はお辞儀をして、挨拶を始める。


「私はカルネと言います。サーロット様にお仕えしているメイドです。私など、同じこの場の席に居合わせて申し訳ないです。目障りなら早々に退席します」


 カルネと言うメイドは何度も深々と頭を下げている。今にも彼女は泣きそうな雰囲気だ。


「いいのよ。人数合わせの為に私が参加する様に命じたのだから。そこに居なさい」


 威圧のある声でサーロットがカルネに話す。場が静まり返る。スゴイ緊張感だ。


 おっと、危ない。場の空気に飲まれて、査定を危なく忘れそうになる所だった。


 カルネの評価はCランクだ。どこにでもいる様な普通の女の子だ。今回特別に狙う相手ではないかなと俺は分析する。


 


 


 








 

 


 




 

 


 


 










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