そしていつしか雨音は消え晴れが来る


「おはようございますオーナー」


渡良瀬の状況にピクっとコメカミが動くが何食わぬ顔で挨拶をするレイア


「おはよー」


あくびをし、頭をポリポリと搔きながら挨拶をする渡良瀬には付属品が付いていた


「アリスもおはようございます」


「おはよ」


ジっとアリスを見つめるレイアに対してツルテカな顔で渡良瀬の腕に抱き着いて

挨拶をするアリス


さぞ優しく抱いて貰ったのでしょうね、過去を上書きされる程大切にっと思うが口にはしないレイア

こちらは昨日の順番だった人にお願いして調整するのが大変だったのにっと思うが口にしない

実はお願いしたとかじゃなく昨日こそが自分の番だったのにっと口に・・・・

それにより自分の後の人の日にちが変わるのは事実だから間違いじゃないと口・・・


「ごめんてー」


「聞こえてる」


渡良瀬とアリスはレイアの駄々洩れの心の声を聴いてそう口にしたのであった


実は一昨日の空の日に抱いて貰っていたレイアはそれ程落ち込んではいなかったが

あえて拗ねる事で次回もラッキーが訪れる事を計算にいれて・・・






「んでアリス、これからどうする?まだ死ぬ気か?」


渡良瀬の言葉にフルフルと首を横に振るアリス


「大切」

大事な物のように抱いて貰ったと


「上書き」

レイアの先ほどの心の声から引用して

過去を忘れる程、自分は渡良瀬の物であると自覚するほど抱いて貰ったと


「好き」

もう忘れられない程抱いて貰ったと


「そっか・・・んじゃ家まで送るよ」


「・・・・・ここ、ダメ?」


「ここに住みたいのか?」


「うん」


「仕事は?」


「・・・・」


じっと見つめられ、はぁーとため息を付き


「わかった、ただし下の店な、んで親御さんにちゃんと伝えるんだぞ?」


ぱぁーっと目をキラキラさせて「うん!」と頷くアリスであった



ーーー


親を説得させて戻ってきたアリスは何故かオーバーオールを着せられていた


「それ制服な。んでここがアリスに働いてもらう店」


ビル1Fへ連れてこられたアリス

店の横の階段からビルに入ってはいたが、1Fは初めて見る

そこには看板にデカデカと異世界堂と書いてあった



中に入って周りを見渡せば本やらパソコンやら何やら色々置いてある

その棚になにやら怪しい影があるが誰も気づいていない

そしてその影は人が居る所へ移動して行き


「とー!」


「ごふ・・・」


股間に何かがぶつかって来て思わず声を上げてしまう渡良瀬


「アカリ・・・前にも言ったけど男の人にとってそこは大事な所だからぶつかってきちゃダメだぞ」


渡良瀬に抱き着き頭をぐりぐり股間に擦り付けているのはアカリと言う名の幼女であった


「だいじー?アカリのちぇみといっちょー?」


アカリにとっての宝物の一つにセミの抜け殻がある

セミがちぇみになってはいるが・・・


「ぷひゅ・・」

明後日の方向を向いて肩をぷるぷる震わすレイアは無視


「もっと大事かなー・・それと、とーじゃなくて徹な」


「あい!」

お返事だけは良いアカリであった


「あらあら、うふふ」


「おはよう、ユカリ」


「おはようございます徹さん」


奥から出てきたのは、おっとりしている風貌の美人ユカリ


「この子が今日から働くことになったアリスだ」


ペコリとお辞儀をするアリス

本当なら挨拶すべきだがその辺は昨日渡良瀬に聞いていたので

特に気にする様子はないユカリ


「ユカリもアカリにちゃんと言い聞かせてくれよー、じゃないと俺の股間がもたん」


「うふふ、大きくなったら徹さんがお嫁に貰ってもらうからいいですよー」


「いや、そうゆう事じゃなくて・・・」


「とーのおよめしゃんなりゅ!」


「大きくなったらな」


まだ抱き着いてるアカリを抱っこしてよしよしする渡良瀬

何やらなごんでいる雰囲気であるが

初めての場所でソワソワしているアリスは


「仕事」と、仕事は何?と渡良瀬に聞く


「ああ、ここは異世界に転移や転生してしまったら何が要るかっと

その時になって後悔しないような物を売る店だ」


「なるほど」


自分も死を常に考えていたので、生まれ変わりや転移して異世界にでも逃げたいと

常に思っていたので、この店のコンセプトがわかるアリスであった


「興味で来る客も居れば、そうゆう覚悟で来る客も居るって事さ」


そこで相談に乗れそうなお客さんを見つけるのかとアリスは納得した


スコップやナイフ、料理本に建築関係、ソーラー充電器と多岐にわたるアイテムがあり

もう死のうと思っていないアリスも興味深い店であった


「アリスは何が出来る?」


「パソコン」


「ふむ」


「ハッキング」


「ふむ・・・・え?」


「株」


「いやストップストップ・・・・えーっとIt関係って事かな?」


「うん」


「5歳」


「えーと5歳から色々勉強してきたって事かな?」


「うん」


突然飛び出した情報に一同がびっくりしている


「お金」


「ん?」


「増やす?」


「ああ、お金預けたら増やしてくれるって事?」


「倍々」


預けてくれたらどんどん増やすぞっと自身満々で

むふーっと胸を反らすアリス

抱っこされているアカリも同じくむふーと真似をしてぺったんこな胸を反らす

むしろおなかぽっこりなのでそちらの方が目立つ

というか落としてしまいそうで焦る渡良瀬

実にほほえましい光景に一同がなごむ

若干1名頬をパンパンに膨らませプルプル震えているが・・・

ちなみにアリスは普通にある

何がとは言わないが・・・


「んじゃこれ俺の口座。10億まで使っていいから」


「え?」


さらっと口座を教える渡良瀬

もちろん暗証番号も一緒に

いや、それよりも10億??とびっくりなアリス


「もうアリスは俺の物、だから俺の物もアリスの物って事

ああ、だからって全部だと資金がなくなるから10億な」


俺の物と物扱いな言われようでも

渡良瀬の物になった自覚があるアリスは

嬉しいやらびっくりやら責任重大やらで感情がジェットコースターになっている


「まあ、当面は接客出来ないだろうから、掃除や経理なんかの裏仕事頼むわ」


渡良瀬が何か言っているがまったく耳に入ってきていない

とりあえず色々な感情の大戦争は嬉しい陣営の大勝利で幕を下ろし

感情のままにアカリを抱っこしてる渡良瀬をしゃがませ頬にキスをする

あー!と言って反対側の頬にちゅーをするアカリ


いつからだろう、心にも景色にも雨が降っていた日々が

いつのまにかキラキラ輝いていたのは

昨日の夜からなんて野暮な事は思わない

ただ、これだけはわかる

胸の奥がぽかぽか暖かい事を実感したのはこの瞬間だと




外は快晴


「んじゃーまっ、今日も適当に過ごしますか」


んーーっと伸びをして、そう宣言する渡良瀬の一言で

異世界ビルと名付けられたこの場所の一日が始まるのであった












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