第6話:母親への告白。
さて・・・梨紅の家にお邪魔したから、今度は僕の家に梨紅を招待
しなきゃって思った。
その前にワンクッション置いとかないと・・・。
僕の母親に梨紅のことを言っておかないと、いきなりじゃ・・・驚く前に
戸惑っちゃうだろ?
母親がどういう反応を示すかは話してみないと分からないことだった。
僕は台所で夕食の支度をしてる母親に梨紅のことを話した。
「母さん・・・ちょっと話があるんだけど」
「ん?、なに?話って」
「あのさ、言ってなかったんだけど、僕さ付き合ってる子がいるんだ 」
「え???本当?・・・まあ、なにも言わないから」
「そうよかったじゃない・・・
「前の学校の時は、彼女のかの字もなかったもんね」
「そうなんだけどね・・・驚かないで聞いてほしんだけど」
「その付き合ってる彼女って、実は性同一性障害の子なんだ」
「え?・・・性同一性?・・・って男性なのに自分のこと女性って思ってる
子のこと?」
「最近よく耳にするジェンダーって人のことよね」
「まあ、その逆の子もいるけど・・・そういうことなんだ・・・」
「ああ・・・・・そう」
母親はそこでちょっと考えた。
「宇宙はそのこと知ってて付き合いはじめたの?」
「最初は女の子だと思ってた・・・だってどこからどう見たって女性だし
「で、付き合い始めてそうだって知ったんだ」
「でも僕は彼女が当事者だからって、付き合うことに抵抗はないんだ」
「だから、今もずっと付き合ってる・・・」
「母さんはどう思うか知らないけど、このことは知っておいて欲しかったんだ」
「だから話した・・・」
「そうなのね、そりゃまあショックじゃないかって聞かれたら違うとは
言えないけど・・・」
「でもたとえ私が反対しても、その子と別れるつもりはないんでしょ?」
「そうだね・・・」
「じゃ〜、しかたないわね」
「宇宙が決めた人生だもの・・・私が反対したら宇宙もその子も悲しいでしょ」
「大丈夫だよ宇宙・・・その子、お名前は?」
「
「梨紅さんね、今度連れてらっしゃい・・・宇宙が好きになる子だから、
きっといい子なんだと思うよ」
「いいの?、連れてきても?」
「いいも悪いも、人を好きになるのに性別なんて関係ないでしょ」
母親は僕が梨紅に言ったことと同じことを言った。
僕はホッとした・・・母親に認めてもらうことができた。
実のところ僕に兄弟姉妹がいなくてよかったと思った。
いたらそれだけリスクを背負うことになるからね。
兄弟のうちの誰かが梨紅を受け入れなかったら、解決しなきゃいけない問題が
ひとつ増えることになる。
揉め事はなるだけ少ないほうがいい。
ってことで僕は梨紅を僕の家に連れて行くことにした。
放課後・・・帰り道、僕たちは緑地帯のベンチにいた。
で、また、ふたり仲良くたこ焼きを食べていた。
「
「え?、ほんと?なんだか、ドキドキする」
「いいのかな・・
「うん、分かってくれたみたい・・・僕の母親くらいの人は世代的にまだオープンな考えのほうだから、明治時代や大正時代の人なんかと違って、頭が固くなくて
順応性に長けてるから偏見とか持たないんだと思う・・・ 」
「梨紅を連れておいでって・・・」
「梨紅・・・クチの下にたこ焼きの端くれがついてるよ」
「え?」
「ここ・・・ここ・・・」
そう言って僕は梨紅のクチの下についた、たこ焼きの端くれを僕のクチで取って
やった 。
で、そのままの流れで梨紅のクチビルに・・・ブチューってした。
うん、たこ焼きの味がした。
ってことで、その週末、土曜日、母親も仕事が休みなので僕は梨紅を家に連れて
行った。
僕の家の向かうあぜ道を歩きながら梨紅が言った。
「ねえ、ねえ、緊張するんだけど・・・」
「大丈夫だよ・・・親父は出張でいないし家に母さん以外誰もいないからさ」
「それより今日はスカート長いんだね」
「いつだって短いスカート履いてるわけじゃないからね」
「普段はジャージだって言ったでしょ」
「それとも短いほうがよかったの?」
「でも、お母さんにパンツ見せても意味ないでしょ 」
「この前、短いスカート履いてたのはちゃんと意味があったからだよ」
「たしかに・・・いい目の保養させてもらったでござる・・・」
「宇宙って照れ隠しする時って時代劇口調になるんだね」
「あ、ほら、僕の家あれ・・・見えるだろ」
「無視した?」
「緊張と緩和だよ・・・」
「なにそれ?」
「説明、難しい・・・ってかもうすぐ着くからね・・・」
僕たち家族が借りてるマンションは二個建てのマンションで、親父は今、
出張でいなかった。
僕はできるだけ親に負担をかけたくなかったので早く高校を卒業したかった。
「はじめまして・・・
そう言うと梨紅はほどよくお辞儀した。
母親は梨紅を見て、固まっていた。
「母さん、梨紅が挨拶してるよ」
「あ、はじめまして、いらっしゃい・・・宇宙の母の、幸です」
「さ、梨紅、中に入って・・・」
「お邪魔します」
梨紅は僕に言われるままに家の中に入って行った。
「なんで梨紅を見て固まったの?、失礼だよ」
「いや〜、固まったって言うか・・・普通に女の子だから」
「どんなの連れてくるって想像してたんだよ」
「ガニ股のマッチョで無精髭生やした男でも連れてくると思った?」
「僕だって、さすがにそのまんま男だったら、付き合ってないよ」
「梨紅、美人だろ?」
僕の彼女くんは母親が固まるくらい美人なんだ。
つづく。
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