第31話 転校生は確信する?

 あっという間にお風呂のある5階に到着。

 それを待っていたかのように骸骨たちがお出迎えしてくれている。


「数が多いな…。鈴、今回は2人で――」


 空の言葉が終わる前に私は飛び出していた。


「どけどけー!!」


 剣を握りしめてスケルトンに向かってダッシュ!

 数は10体。

 完全に通路を塞ぐようにガチャガチャと音を立てて歩いてくる。


「おりゃあぁぁぁ!!」


 ど真ん中にいたスケルトンに一気に剣を振り下ろす!!

 それまでの魔物と全く同じように、何の手ごたえも無く剣はスケルトンを真っ二つ――にすることなく、やはり消滅した。

 もうこれはこういう仕様なんだと自分に言い聞かせるしかない。


 そしてそのまま右側にいたスケルトンに対して横なぎで剣を振り払う。

 またまた何の手ごたえも無くスケルトンは消滅する。


 後ろからスケルトンの手が伸びてきているのを感じる。

 私は身をかがめながら回転して足払い。

 まとめて3体のスケルトンが足を払われて転倒した。

 立ち上がると、倒れたうちの一体の頭蓋骨を足で踏みつぶし、そのまま後ろ側にいたスケルトンに対して再び剣を水平に振る。

 踏みつけたスケルトンと合わせて、一気に4体が消滅した。

 縦に斬るよりも横の方が効率が良いと感じた私は、後方を見ることなく後ろへ向かって剣を振る。

 私に向かってきていた2体が直撃を受けて消滅した。

 いや、やっぱり納得出来ん!!

 なんで私の時だけ斬れずに消えるんだ!!


 そんな鬱憤をぶつけるかのように剣を振り回し、残りの3体も一気に倒していく。


「つぎ―!!」


「おい!鈴!落ち着けって!!」


 空が何か叫んでいる。

 うるさいな。今はそれどころじゃないんだ!


 私の声に応えるかのように、通路の角から大きな狼が現れた。

 ハウンドドッグとかいう奴らしい。

 あ、じゃあ狼じゃなくて犬か。


――ワオォォォン!!


 遠吠えのような大きな声を上げて走ってくる。

 お前も前にお風呂入りに来た時に見た。


 もの凄いスピードで迫ってくるハウンドドッグ。

 でも――遅い!!


 今の私は更に速い。

 こちらもダッシュで正面からぶつかっていく。

 すれ違う瞬間――噛みつこうと鋭い牙の生えた口を私に向けてきたが、それに合わせて剣を縦一文字に振り下ろす。

 鋭い牙も、大きな爪も、私に届くことなくハウンドドッグは消滅した。


「おかわり!!」


 私は更なる敵を求めて通路の奥へ向かって叫ぶ。


「鈴ちゃんファイト―!!」


「おねえちゃんかっこいいー!!」


 今の私には天使の加護がついているんだぞー!!


 出番を待っていたかのように次に出てきたのは、一匹で通路を塞ぐほどのLサイズの兎。

 額に長く尖った角があり、兎なら赤いはずの眼が真っ黒だ。

こいつは初見だけど――


「お前じゃなーい!!」


 私が探しているのはこれじゃない!!

 でっかい蛙を出せー!!


「うさぎさんもおいしいですよー!!」


「いただきまーす!!」


 兎美味しいとかって歌もあるよね?

 違ったっけ?


 この日、初のドロップアイテムは【ユニコーンラビットの肉】だった。

 天使が喜んでるから、今日はこれくらいで勘弁してやる。




「お前……本当にわけわかんないわ」


 空が呆れたように私の顔を見ながら言った。

 何だ?喧嘩か?

 この家の中限定なら買うぞ?

 でも、外に出たら勘弁してください!!


「やっぱり鈴ちゃんの動きって普通じゃないよね!!」


「ああ…何なんだありゃ?お前いつからそんなこと出来るようになったんだよ……」


 感心している阿須奈と不満げな空。


「あんな動きって?それより私が突撃したことに呆れてたんじゃないの?」


 ほとんど素人が一人で暴れまくったんだから、そのことで文句があるんだと思ってたんだけど?


「まあ、あれも危ないから止めといて欲しかったけど、実際にあんな動き見せられたら文句も言えないわ」


 そんなに凄い事した?

 阿須奈だったらもっと凄い事出来るでしょう?


「私は正面から戦うしか出来ないから、鈴ちゃんの戦い方は真似できないよ」


「それは阿須奈が強すぎるから必要ないだけじゃない?私は全然弱いから、動き回ったり相手の動きを見て予測したりしないと勝てないから。あ、あと、この剣が凄すぎるから出来る事だよ?」


「お前……相手の動きを予測して動くってことがどれだけ凄い事か分かってないのか?武道の達人じゃないんだから」


 ん?大体勘で分かるじゃない?

 こういう時どう動いてくるとかさ。人間と同じだよ?

 目線の動きとか、体重移動とかでさ。


「前に購買で鈴ちゃんが人込みを抜けて行くのを見た時から凄いって思ってて、初めて家に来た時に確信したの!鈴ちゃんは天才だって!!」


「天災!?」


「そっちじゃないと思うぞ?いや、どっちだとしても……運痴のお前がねえ……」


 どっちだとしてもってどういう意味だ?

 天災なわけないだろうが。

 いや、天才でもないけども……。


「りんおねえちゃん、てんさい!!すごい!!」


「私のことはこれから天才美少女剣士リンと呼びなさい!!」


「それは過大広告で訴えられるからやめとけ」


 お前はどの部分が過大なのか明日までにレポート提出するように。



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