第2章 隣の席の転校生は超カワ華麗な配信者

第21話 転校生はくじけない?

「はーい!皆さんこんにちはー!カレンダーズのソラです!!」


「アスナです!!」


「リ…リン…です……」


「今回初めての動画になる私たちですが、これからたーくさんのダンジョン情報を伝えていけたらなあって思っていますので、私たちカレンダーズの応援をよろしくお願いします!!」


「お願いします!!」


「……まっす」


「今私たちがいるのは、日本のとあるところにあるダンジョンの入り口なんですけど、これからこのダンジョンを私たちが探索するところを皆さんにお届けしようと思います。では、さっそくぅぅぅー、れっつごー!!」


「ゴー!!」


「ごぉ……」



「うわあ、てんじょうにすらいむがいるぞぉー」


「皆さん!!早速魔物が出ました!!」


「みんな気を付けて!こいつはうちの生ごみ…じゃない、人間を溶かしてしまうわ!」


「うわあ、すらいむがおちてきたあ」


「おぞましい姿をしています!ぐにゃぐにゃと動きながら向かってきます!」


「ここは私に任せて!たあー!!」


「うわあ、すらいむがまっぷたつだー」


「アスナの一撃で凶悪なスライムが真っ二つになりました!!」


「私に斬れないものは無い!!」


「あすなかっこいー」


『ダンジョンに踏み込んだ途端に現れた恐ろしい魔物。これから先、いかなる恐怖が私たちを襲うというのだろうか?私たちはそれを想像すると体の震えが止まらなくなったが、それを勇気で必死で押し殺して、ダンジョンの更なる奥地へと進むのであった』




 撮影場所は小鳥遊さんの玄関ホールと、その横の廊下。

 動画時間は約5分。

 これが私たちの初めて投稿した動画だった。


 投稿から一夜明けた教室。


「駄目だー!全然伸びてねー!」


 朝一からぼやきまくりの空。

 うん、伸びてなくて結構。


「空ちゃん。今どれくらいの人が観てるの?」


 阿須奈はスマホを持っていない為、自分では確認出来ない。


 いや、今でもそのパカパカの携帯って使えるんだね。


「昨日の夜が3で――今も3。全然増えてない」


「でも、3人の人が観てくれてるんだね!」


「……鈴。あんたは観た?」


「一応、観たけど…」


「そう。私も観たよ…」


「あ、私もお父さんのスマホで家族みんなで外に出て観たよ!」


「はい、再生数3」


「あ……」


 阿須奈はその事に気付いていなかったようで、口をぽかんと開けて驚いている。


 よし!他には誰も観ていないぞ!

 途中はカメラマンだったとはいえ、オープニングでは映ってるからね。


 あとは、2人が飽きてしまうのを願うだけ。

 誰も観てなかったらすぐに飽きるはず。


「そっかぁ…そう簡単にはいかないよね…」


「うん。同じような動画上げてる人はめちゃめちゃいるから、後発組の私たちが初日から観てもらおうなんて事自体が甘かったんだよな…それに1階でスライム相手とか、大して見栄えしないしな…」


「3階で撮ろうとしてたのに、やっぱり最初は入るところからにしようって言ったのは空でしょ?」


「まあ…それはそうなんだけど…。実際に撮ったやつを見直してみると、別にこれを観なくても良いんじゃないかって思っちゃうよなあ」


「そうだね。動画や配信してる人はめちゃめちゃいっぱいいるから、今更私たちがやっても――」


「でも!続けていけばきっと観てくれる人が出てくるよね!」


「おお!そうだ!継続こそ力なりだ!!なあ鈴!」


「……かもねぇ」


 チッ!簡単には折れないか。


 まあ、今のところは誰にも気づかれてもいないんだし、次にやったとしても埋もれちゃうよね。


「じゃあ、今日は地下2階の撮影を頑張ろう!」


 頑張りたくはない。

 特にオープニングに映りたくない。


「あ、今日はお母さんがおやつに何か作るって言ってた」


「何!?おやつ!?」


 阿須奈のお母さんの作る料理はとても美味しい。

 材料が何か分からないのに、とにかく美味しい。

 撮影の時に作ってくれたお菓子は特に絶品だった!


 まあ、もう少しくらい付き合っても良いかな?とか思ったりもして。


「阿須奈のお母さんの作ってくれたパンケーキ、めちゃめちゃ美味しかったからなぁ」


 空もお気に召したようだ。


「じゃあ、今日も頑張ろう!!」


「阿比留さん。授業に気合いが入っているのは良いんですけど、席に着いてもらっても良いですか?」


 あ、立華先生……。


「もうホームルームのチャイムはとっくに鳴ってますよ?」


「はい……。すいません……」


 ごめんなさい……。


 そうしてその日の授業をいつものように流し――こなしていったのだったが、この時の私は、ネット社会の恐ろしさをまだ全然理解していなかったのだ。



『視聴数3 → 視聴数4』




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 国内某大手掲示板。

 その日、ダンジョンの話題をまとめた板に新しいスレッドが作られた。


【カレンダーズ応援】美少女探索者カレンダーズを愛でる Part.1【親衛隊】


▼0001 ダンジョン大好き名無しさん

ダンジョンアイドルに新星現る!!

超絶美少女3人組の探索者グループ「カレンダーズ」をみんなで応援しよう!!


動画↓

「はじめまして!!わたしたちが『カレンダーズ』です!!」

https://i.wearetube.com/××××××××××××


▼0002 ダンジョン大好き名無しさん

は?美少女?まじ?


▼0003 ダンジョン大好き名無しさん

>>2

まじだ

みてみろ


▼0004 ダンジョン大好き名無しさん

>>2

釣られるな

露骨な再生数稼ぎだぞ


▼0005 ダンジョン大好き名無しさん

>>4

そう思うがきになる


▼0006 ダンジョン大好き名無しさん

>>4

みてきた

帽子とマスクしてるけど、かなり美少女だと思う

高校生くらいに見えた

登録してきたわ


▼0007 ダンジョン大好き名無しさん

>>6

高校生!?

サンキュー

俺も見にいってくる


▼0008 ダンジョン大好き名無しさん

>>7

おちつけ

だまされるな


▼0009 ダンジョン大好き名無しさん

高校生がダンジョンに入ってるはずが無い


▼0010 ダンジョン大好き名無しさん

>>8 >>9

別に資格が必要なわけじゃないし

学校によっては校則もないんじゃね?

実際にやってるやついるしな


▼0011 ダンジョン大好き名無しさん

>>10

やってるのはみんな男だろ?

女は聞いたことないぞ


▼0012 ダンジョン大好き名無しさん

>>8

俺も見てきた

高校生かどうかは分からんが、そう言われても信じそうな感じの3人組だった

とくに長髪の女の子がめちゃめちゃ可愛らしい感じ

登録したわ


▼0013 ダンジョン大好き名無しさん

>>8

見てみたけど、あの子は絶対に美少女だと思う

他の2人も結構なレベル

動画はつまんなかったけどな


▼0014 ダンジョン大好き名無しさん

>>13

ただ撮ったのを切って繋いだだけの編集だったな

ナレーションが最後にあったくらいか

だが、それも彼女たちの可愛らしさを引き立てている!

好きだ!!


▼0015 ダンジョン大好き名無しさん

>>14

もうガチ恋がいるぞ


▼0016 ダンジョン大好き名無しさん

>>15

いいからお前も見てみろ

古参になるチャンスだぞ


▼0017 ダンジョン大好き名無しさん

>>16

おい

視聴数と登録者がどんどん増えてるぞ

いそげ


▼0018 ダンジョン大好き名無しさん

>>17

ま?


▼0019 ダンジョン大好き名無しさん

>>18

スレ主だけど

他のSNSでも拡散してるからな

早く見てきて仲間になろうぜ


▼0020 ダンジョン大好き名無しさん

>>20

わかった




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