第24話 猟銃男VSジャージ女
立てこもり犯、猟銃男こと、
「ど、どうなってんだ……くそ!!」
撃ち込んだ弾丸が、自分と同じく異能者である刑事によって臭い水に変えられているのだが、彼は、まだ異能に目覚めて日が浅い。
まさかそんな奇怪な異能があるなんて知らないし、異能についてそこまで深く知っているわけでもなかった。
だからこそ、意味がわからず乱射したが、何一つ当たらなかった。
そして、まだ小手崎本人も感覚的にしか把握していないのだが、異能には一日に打ち込める弾には限界がある。
このままでは弾無しになってしまうと、小手崎は人質の子供を殺すと脅しをかけようと振り返った。
しかし、その瞬間、すでに突入していたSITの隊員とジャージ姿の若い女の手によって人質は無事に保護され、四人ともそこにはいない。
「だ、誰だお前!?」
「ケーサツっス。見てわかんないっスか?」
どう見ても、高校生にしか見えなかったが、ジャージ女はガムをくちゃくちゃと噛みながら、右手に持っている警察手帳を見せる。
そして、あっという間に手品のようにそれが一瞬で消えて、右の手のひらから日本刀が出現した。
「お、お前も、異能者か!?」
「警視庁《異能》犯罪対策室の鳥町っス。もう人質はいないっスよ? 観念してお縄につきなさい」
「はっ? ふざけんな!! そんな刀で俺の銃に勝てるわけないだろう!? 向こうにいるやつらといい、警察にはバカしかいねぇみてーだな!!」
小手崎は銃口をジャージ女に向け、発砲。
しかしその瞬間、ジャージ女の前にはPOLICEと書かれた透明な防護盾が現れる。
「な……な、何!?」
ジャージ女は盾を持ったまま突進すると、小手崎に体当たり。
猟銃になっていた彼の左腕の肘から下を日本刀で綺麗に切り落とした。
「うああっ!!」
「ああ、もう一丁の方も止めておきますね。はーい、ズボンおろしまーす!」
「えっ……ちょっと……待て————!! そっちは……!!」
左腕を切り落とされた痛みに悶えている暇もなく、無理やり脱がされてたズボンとパンツ。
露わになるとても小さな拳銃。
「や、や、やめろ!! やめてくれ!! 切らないでくれ!!」
「…………あらまぁ、本当に小さい。かわいそうに」
ジャージ女はその小さな銃口に噛んでいたガムを突っ込んだ。
*
「あれは流石にやりすぎだろ……」
「え? どっちっスか? 左腕? それとも、股間の方っスか?」
「どっちもだ……!!」
一部始終を向かいのベランダから見ていた兜森は、救急車に乗って連行されていく小手崎の姿を見送っていた鳥町を睨みつけた。
「つーか、その日本刀!! 昨日も持ってたけど、岡根大臣の家にあったやつだろう!? なんで勝手に使ってんだ!!」
「いやだなぁ、返しに行く暇なんてなかったじゃないっスか。あのクソガキの取り調べが終わって、帰って来たの今朝っスよ? 取り調べが終わったらちゃんと返しに行くっスよ。ああ、その前に扇風機っスね。夕方から撮影で使うそうなんで、その前に返すように言われてんスよ」
鳥町はそういいながら防護盾をSITの隊員に返すと、日本刀はまた異空間に収納されて消え、代わりにさっき頼んだカレーとスプーンが出現する。
事件現場でカレーライスを立ち食いし始めた。
「おい!! こんなところで食うな!!」
「いいじゃないっスかぁ……あーしだって、何も食べてないんすよぉ」
(本当に、こいつは……!!)
自由すぎて、ついていけない。
兜森はもうツッコむのが面倒で仕方がない。
「テレビ局に扇風機返したら、すぐ警察病院行くんで、兜森さん先に行ってください。あ、そういえば、室長にも連絡しないとっスよね? お子さん生まれたばっかで、大変なのに、あーしの心配して兜森さんに様子見に行くよう言ってくれてたんでしょ?」
「……それは、俺の方から連絡しておく。とにかく、テレビ局に行くんだったらその前に、その返り血まみれのジャージは着替えろよ」
(こんな血だらけの女がテレビ局に行ったら、パニックになるな……)
「え? ああ、そうっスね。このジャージ動きやすくてお気にの部屋着だったのに、ばあやに洗濯してもらわなきゃ……」
そういいながら、またカレーを頬張って、しかもこぼした。
血とカレーの染みがついたジャージは、美田園が後日綺麗に洗って、アイロンまでかけてくれたらしい。
それを知った兜森が、新品のように綺麗になっていたジャージを見て美田園も異能者なのかと誤解するのは、もう少し先の話である。
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