第12話 インフルエンサー炎上焼死事件
最初の被害者は、暴露系の人気配信者だった。
歯に衣着せぬ発言で人気が出て、有名になった彼だったが、調子に乗った彼はうっかり女性蔑視と取れる発言をし、炎上。
そこから元カノを名乗る人物からのリークが相次いで、DVだとか、三又していたとか……そんな噂が絶えずあった。
自宅マンションの一室で、焼死体として発見される。
この際発生した煙に火災探知機が反応し、住人たちは逃げたが、火災は起きていないという奇妙な現象が起きていた。
二人目は、美容系Yutuber。
プロデュースした保湿美容液に、保湿効果がまるでないことをうっかり酒の席で漏らした音声が流出し、大炎上。
すぐに事実を認め、謝罪動画を公開したが、その後、まったく反省せずにホストクラブで泥酔していたことが判明し、チャンネル閉鎖まで追い込まれていた。
こちらも自宅マンションの一室で、焼死体として発見。
火災報知器が反応したが、一人目と同じ状態だった。
三人目、四人目は人気双子イケメンモデル。
日本人離れした顔と高身長で、Instagramのフォロワーは二人合わせて300万人を超えていたのだが、高校生の頃に陰湿な虐めをしていたことが発覚。
被害にあった元同級生らの告発により、大炎上。
自宅がバレてアンチから迷惑行為が絶えなかったため、海外に高飛びしようとタクシーで空港まで移動中に突如兄の方が焼死。
タクシー運転手が通報し、この時、初めて焼死の瞬間が目撃される。
同情していた弟も、翌日に同じく逃げ込んだ友人宅で人体だけ焼死してた。
五人目は、手軽で簡単に美味しい料理レシピを紹介するショート動画が人気な料理研究家。
人気女優との交際が週刊誌にリークされ、炎上。
実は既婚者で子供もいることを隠していながら交際していたようで、多額の慰謝料を妻と女優の双方から要求されている最中だった。
自宅兼事務所で弁護士を交えて話し合いをしていたが、トイレに行こうと席を外した際、火災報知器が鳴る。
トイレの目の前で倒れている焼死体が見った。
六人目は、元大手芸能事務所に所属していたと公言していた元アイドルの配信者。
連日話題になっている事務所創設者による性被害に、自分もあったと暴露していたが、そもそも、事務所自体に所属していなかったことが発覚。
保証金目当ての行為であったことが判明し、今後どうして行くか提携している事務所とリモート会議中に突如焼死。
この時初めて、燃える瞬間が動画で残る。
七人目は、元教師の経歴を持つVtuber。
未成年のリスナーに、裸の写真や動画を送るよう要求したことがバレて大炎上。
警察が調査したところ、自宅PCから教師時代に児童たちを盗撮していたと思われる動画や写真が見つかり先日やっと逮捕されたのだが、連行される最中に突然焼死。
彼の背中を押して、パトカーに乗るよう促していた刑事に火傷などは一切なく、彼が燃えた瞬間も、熱を一切感じなかったらしい。
「————この他、まだ身元はわかっていないが一人、同じような焼死体が一昨日の朝、一体見つかっている。映画館の客席に座ったままな……」
これまでの調査によると、被害者の発言や過去の行動が炎上したのは、すべて今年の夏の出来事。
六月から八月の間だった。
「どれも、フォロワーが100万人以上いるインフルエンサーだ。おそらくこの映画館での八人目もその中の一人だ」
「なるほおどぉ……それで、次のターゲットがこの岡根望子さんの可能性が高いと……そういうワケっスね?」
「ああ、そうだ。お嬢様は今、一人暮らしをしていたマンションから、財務大臣のご自宅に戻ってきている。財務大臣自らSPを雇ってはいるが、昨夜……火の玉が飛んでいるのを見たそうだ」
その日は曇り空で、月明かりも星の輝きもない、真っ暗な空に突然、赤い火の玉が現れたらしい。
「なるほど、それは、確かに異能者の犯行っスね。ちなみに、その火の玉は何人目撃してます?」
「三人。SP二人と、お嬢様本人だ」
岡根望子は、ネット上ではモチコと名乗っていて、財務大臣の孫であることを公表していなかった。
しかし、今年八月、結成三周年の記念動画を撮影していた際、うっかり本名が書かれた紙に編集でモザイクをかけ忘れ、本名がバレしてしまう。
それが、まさかのリーダーはお金の苦労なんてしたことのない生粋のお嬢様。
軌道に乗るまでの序盤の登録者数の増加も、実は金で買っていたことが判明し、さらに大炎上。
特に、望子への誹謗中傷は今でも続いていて、現在は活動休止中だ。
数日前に複数のアカウントから『お前の家に火をつけて燃やしてやる』『今すぐ燃やしてやる』などと書かれた脅迫のメッセージが届き、実家に身を隠していたところで、実際に自分の方へ向かってくる火の玉を見ている。
その火の玉は望子が手に持っていたスマホに当たり、スマホのケースだけが一気に燃え上がり、丸焦げになったそうだ。
スマホ本体は、無傷だった。
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