第11話 ニューフェイス
平成三十五年十月十三日金曜日、《異能》犯罪対策室に捜査一課から
「おお、新顔だねぇ、ニューフェイスだねぇ」
伊振警部は異能者に事件の可能性がある事件を持って来る責任者だ。
通常の捜査で答えを出せなかった不可解な事件、事象等は異能者による犯罪の可能性が高いため、こうして捜査一課の
しかし、この日はいつも伊振の腰巾着のようにいつも一緒にくる刑事ではなく、とても若い茶木を連れて来ていた。
「彼は、昨日から
「茶木真人巡査長です。よろしくお願いいたします!!」
大きな声でハキハキと喋り、ビシッと敬礼をする茶木。
千はニコニコと微笑みながら、うまい棒チーズ味を差し出した。
「元気だねぇ。いいことだ。まぁ、とりあえずそこに座りなよ。これでも食べながら話を聞こうじゃないか」
「は、はい。いただきます!!」
茶木は突然のうまい棒に驚いたが、すぐに受け取って言われた通り椅子に座りうまい棒のパッケージを開ける。
「おい、食べる前に資料を置け」
「す、すみません……」
伊振に怒られて、ビビりながら茶木は捜査資料をテーブルの上に置いた。
「おっ? 新しい事件スか?」
そこへ、トイレから戻って来た鳥町が楽しそうにひょっこり現れて、千の右隣に座る。
びしゃびしゃの手をハンカチで拭きながら、鳥町は捜査資料に顔を近づけた。
一方、兜森はデスクの上でSwitchを持ったまま動かない。
全国爆破予告事件解決から約二週間、特に捜査する事件もなく、暇を持て余し、出勤しても、朝から定時まで強制的にスマブラやスプラ3に参加させられ、まるで小中学生の溜まり場のようになっていた。
子供のようにはしゃぎながら、ゲームを楽しんでいる鳥町と千に若干引きつつ、職務怠慢が過ぎると思っていた兜森。
しかし、二週間もあれば人は変わるもので、彼は伊振たちが来たことにも気づかないほど、スイカ作りに集中していた。
「兜森くん、君もおいで、仕事だよ」
「え……!? ああ、はい」
千に声をかけられて、ようやく状況を理解した兜森は、千の左隣に座る。
「彼、兜森くん。ウチのニューフェイス、よろしくね。こちら、捜査一課の伊振くんと茶木くんね」
「兜森です。どうも……」
「知ってる。爆弾処理班から異能に目覚めたんだろう? 君も災難だな。異能なんておかしなものに突然目覚めてしまって……」
伊振は、異能者を嫌っている。
異能に目覚めていない者にとって、異能者とはとても厄介な存在だ。
これまでの常識を超えた行動を平気でするし、何より、理解できないからこそ気持ちが悪い。
刑事としても、異能者が起こした事件は立証が難しいため、心底嫌っている。
捜査一課の先輩である千が室長を勤めているからこそ、仕事としてここに来ているが、本当は異能者である鳥町や兜森には関わりたくないのが本音だった。
だからこそ、常に不機嫌な表情をしている。
「まぁ、挨拶はほどほどにして……それで、今回はどんな事件なんスか? 捜査一課が絡んでるってことは、殺しっすか?」
「そうだ。おそらくな。自殺とは考えられない」
茶木は伊振の話をサポートするように、絶妙なタイミングで捜査資料をめくる。
そこに書かれていたのは、この約二週間の間に起こった、八体の焼死事件の状況が書かれていた。
「被害者はどれも、インフルエンサー……それも、ネット上で炎上した人物だ。これまでに八人、焼死して丸焦げになってる。体だけ、焼かれてな」
「体だけっスか? 放火による火事とかじゃなくて……?」
「そうだ。普通の火事による焼死とはわけが違う。死体の着衣、被害者の周りにあるカーペットや床、シーツの類には引火もせず、綺麗なままだ。被害者の体だけが黒焦げになっている。こんな芸当、普通の人間にできるはずがない」
資料にある現場写真には、確かに黒焦げなのは体だけ。
パーカーやTシャツ、帽子、ピアスなど全く燃えずにそのまま綺麗に残っている。
「どうやって発火したのか、どういう仕組みで人体のみしか燃えないのか、全くわかっていない。こんな不可解な事件、異能者の仕業に決まってるだろう? そして、問題なのは、次のターゲットになりそうな人物がいてな……実際に犯人からと思われる脅迫メールが大量に届いている」
脅迫メールを送られたのは、
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