第39話 探索

翌朝…町で装備を整えて回復アイテムなどを購入したルーゼン達は町の側にある山に向かった


山の麓にポッカリと穴を開けた洞窟があった


「自然に出来た洞窟のようですね…魔物が潜むのにはうってつけですね」

アリストが冷静に分析し始めた


「魔物が出たら出会い頭にぶっ飛ばしてやるわ♪」

ナタリーは興奮気味にそう言い放つ


「相手の出方を見てからの方が効率良いだろ?ナタリーは無鉄砲過ぎるよ」

リヒタンが呆れた様子でそう言うとミリアムがこう言い始めた


「私の手下に出来る魔物を残してよね〜出来れば可愛くて強い子♡」


「「「「そんなの無理だろ」」」」


全員に激しくツッコミを入れられた



「行くぞみんな」


「「「「おう!」」」」



洞窟の中は外よりもひんやりしていてジメジメしている


「気持ち悪りぃな…」


「だよね〜この中で炎の魔法使ったら最悪だよ」


「そうだな…逃げ場を確保しないと蒸し焼きになってしまうな」


ドガン!


鈍い音がして壁が崩れた


どうやらナタリーが壁にパンチを入れて壊したらしい


「何やってんだよ!危ねぇな…」


「だってここだけ壁が薄かったからつい…」


ナタリーが壊した壁の奥に通路が現れた


「お手柄だよ!奥に続く階段がある!」



階段を下ると明らかに人の手が加わったような空間が広がっていた


「何だここは?!」


部屋をよく見回すと魔物の死骸が多数散らばっていた


ミリアムが死骸を調べ始めた


「酷い…これ誰かが魔物を使って実験していたみたいだよ」


「何だって?」


「まさか…ガルダ教の幹部か?!」



「おほほほほ!その通りですよ」


奥の方から何者かの声が響いた


そして姿を現したのは白衣に身を包んだ科学者で頬がこけて顔色が青白い男だった


「うわっ!臭っさい!どんだけ外にでてなかったのよ?!」


ナタリーが鼻をつまんで手を左右に振るそぶりを見せた


「急に押しかけてきたかと思えばなんて事言うのよ!」


「え?こいつオカマか?!」


「だったら何なのよ!失礼しちゃうわね」


「うっわ〜最悪」


「だなぁ…マッドサイエンティストってこんなのばっかだな…」



「言いたい放題ね!頭来ちゃったわ!ちょうど実験体が完成したから試してあげるわ!」



マッドサイエンティストの男もといオカマは奥から何かを呼び出した



グオオオオオオオン



現れたのは獅子の頭と山羊の頭、背中に蝙蝠のような翼と蛇の尻尾のある魔物だった


悍ましい見た目の魔物に命令をする


「さぁ私の可愛いキメラちゃん…あいつらをやっておしまい!」


キメラと呼ばれた魔物は獅子の頭から炎を吐いくと続け様に山羊の頭が雷を呼び寄せた


「うわー!」

「きゃあっ!」


一瞬で勇者達は大ダメージを受けてしまった


「アイツ強い…連続攻撃してくるとは厄介だな」


「防御を固めつつ少しづつ体力を削るしか無さそうだな」


アリストが回復しながら防御魔法を唱える


ミリアムが懐から鞭を取り出して振りかざす


「こんな奴の言う事聞いちゃ駄目…そんな姿にしたのもそいつなんでしょ?何で味方するの…」


ミリアムがキメラに話しかける


グルルルル…


キメラは戸惑っているのか動きが鈍くなった


「今だ!畳み掛けるぞ!」


リヒタンとナタリーが前に飛び出して武器で攻撃を加えた


ギャオーン!


キメラは悲鳴をあげて痛そうな表情を浮かべた


すかさずアリストが氷の魔法を放つとキメラが膝を付いた


「トドメだ!」


ルーゼンが剣を振りかぶって攻撃を加えようとするとミリアムがキメラの前に立ちはだかって阻止した


「駄目…この子は本当は戦いたく無いはずだよ…命令されて生きる為に仕方なくやってるだけだよ」


「どけ!ミリアムお前が危ないぞ」


その刹那…ミリアムはキメラに噛み付かれた


「「「「ミリアム」」」」


肩を噛みつかれて血が吹き出した


ミリアムは首を横に張るとキメラの方を向いて頭を撫で始めた


「駄目って言ったじゃ無い…悪い人の言う事聞いちゃ…」


するとキメラの様子が変わっていく


大人しくなりミリアムの傷を舐め始めた


「あれ?心配してくれてるの?やっぱり本当は優しい子なんだね」


キメラはミリアムに擦り寄って甘え始めた


その様子を見ていたマッドサイエンティストのオカマが激昂し始めた


「な…何ですって?私には決して懐かなかったキメラが最も簡単に懐くなんて!」


ミリアムはキメラに呪文を唱えて契約を結ぶ


キメラは光に包まれて身体の色が変化した


ドス黒い色だったのが虹のような華やかな色に変わったのだ


「これでこの子は私の友達になったわ…反撃開始するわ」


ミリアムはキメラに命令するとマッドサイエンティストのオカマに突進して爪で切り裂いた


「な…私が作ったキメラが…そんな…馬…鹿…な」


キメラは雷の魔法でマッドサイエンティストにトドメを刺した


「おおおおお…ガルバランダ様万歳…」



こうしてマッドサイエンティストを倒したルーゼン達はキメラをどうするか話し合った


「殺すしか無いじゃねぇの?」


「でも…禍々しさが無くなって神々しくなったよ?」


「随分とミリアムに懐いてるようですから殺すのは可哀想ですね」


「…わかった…ミリアムがキチンと面倒見るのなら仲間に加えても良いぞ」


「本当?ありがとうルーゼン!私この子の事可愛がるから!」


こうしてキメラを新たな仲間に加えた勇者達は次の町を目指して旅を続けるのだった





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