第36話 僕を呼ぶ声

急に突風が吹いた


その時に何か聞こえた気がした


「お?そろそろ近いかな?」


「???」


戸惑っているリンダルトの肩に手を置くバスクオムと手を握ってくる姉のルルアンと頭を撫でる母ラヴァーヌ


3人は念を込めてリンダルトに送り込んだ


するとリンダルトの身体が光に包まれていく


遠くから声が聞こえる


「「団長!」」

アーノルドとレックスの声だ


「「「「リンダルト」」」」

陛下と父上とマリエルとムウだな


「「リンダルト殿」」

レイロウとナーガの声だ


「リンちゃん」

ナジュラだな


「リン」

セリスか?久しぶりにそう呼ばれたな


そして一際耳に響いた鈴なような声が聞こえた


「リンダルト様…目を覚まして…」


涙声のディーナ姫の声はリンダルトの胸を揺さぶった



「ほら…アンタが目を覚ますのを心待ちにしている仲間がいるじゃ無い…」


ルルアンはそう言って虹の橋を背にリンダルトに向き合った


「リンダ…エルドラン様にまだこっちに来るのは早いから急ぐ事ないって伝えてね」


ラヴァーヌが笑顔でそう言う


そしてバスクオムもルルアンとラヴァーヌの隣に立ってこう言った


「ここでお別れだ!さっさと仲間の元に帰って安心させろ!」


「え?!何で…迎えに来たんじゃなかったのか?」


「俺はここまでだよ…充分生きたし悔いは無い…最後にリンちゃんを助けられて良かった」


するとリンダルトの後方に光が現れてリンダルトはその光に引っ張られていく


虹の橋の前で3人はリンダルトにこう言った


「「「次に会う時は天命を全うした時だから…懸命に生きるんだ!それまで…待ってるからな…幸せになってくれ」」」



リンダルトは光に吸い込まれて意識を失った



どれくらいの時間が経っただろうか



自分の名前を呼ぶ声が聞こえる


「…長…団長!」


目を覚ますとベッドの上に寝かされていた


ベッドの周りには黄昏騎士団のメンバーが勢揃いしていた


「ようやくお目覚めか…気分はどうだ?」


アーノルドがそう聞いてきた


「まだ夢の中みたいだよ」


「身体の調子はどうですか?」


レックスがそう聞いてきた


「まだ痺れてる感覚があるな…」


「それならまだ無理はしないのね…ゆっくり療養するのよ」


セリスがリンダルトの腕に手を当ててそう言った


「リンダルト殿〜良かった…なかなか目を覚さないので心配しましたよ」


レイロウがホッとした顔でそう言う


「何とか間に合って良かった…本当に効くとは思わなんだ」


ナーガが少し驚いた様子でそう言った


「???何かしたのか?」


「俺の血を薬に混ぜて飲ませたんだ…龍人族の血には毒素を浄化する作用があるのを思い出してな」


「ああ…それでドラゴンや龍人族には毒が効きにくかったのか…」


納得しているリンダルトにナジュラが拳を差し出した


「心配させやがって…姫様を守るためとは言えもう少し後先考えろよな」


リンダルトはナジュラと拳を合わせて笑い合った


そして…


「リンダルト様…良かった…このまま死んでしまわれるのでは無いかと思いましたわ…皆様のお陰で助けられました…私からもお礼を申しますわ…本当にありがとうございます!」


ディーナ姫が深々と頭を下げた


「何を言ってるのですか…俺達は団長が大好きだから当然の事をしたまでですよ」


「そうそう…アンタが死んだら胸糞悪くて仕方ないし…それに団長が出来るのはリンダルトだけだもの…みんなアンタを信頼してるからこそよ」


マリエルが照れくさそうにそう言った


「まだしばらくは薬を飲みながら療養が必要ですね…それまでは大人しくしてるんですよ?」


ムウが心配そうに言った


「分かってる…治るまでは無理はしないさ…それよりもディーナ姫にお願いがあります」


「何ですか?私に出来る事なら何でもしますわ」


「ならば…」


リンダルトは意を決してこう告げた


「これからもずっと僕の側に居てくれませんか?」




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