第33話 マリエルとムウとの出逢い

「そういやマリエルは昔は勇者のパーティにいた事があるそうだな?」


徐にアーノルドが聞いてきた


「ええ…彼女と一緒に居た時間は私にとって特別だわね」


「え?勇者って女だったのか?」


「そうよ…男勝りで勝気で危なっかしい子だったわ」


「あれから何年経ったのかしら…あの子の子孫が何処かにいるかもしれないわね」


「子孫どころか彼女もある村で健在だと聞いたわ」


ムウがそう口を挟んできた


「何だよ…ムウも勇者の事知ってるのか?」


「まぁね…とは言えマリエルのように旅に同行していた訳では無いの」


話によるとムウの一家は旅をしながら薬を売り歩く行商人のような事をしていたらしい


旅先で勇者とマリエルの居るパーティに度々遭遇しては物を売っていたのだ


「うちのパパが勇者ちゃんの事がお気に入りでかなりサービスしてたっけ」


「そうだったわね!私達は何とか邪神ガルバランダを封印出来たんだけどそれは完全じゃ無かったのね…」


その言葉に一同はゾッとした


「封印が解けた邪神ガルバランダが今猛威を振るっているのか?」


「ええ…ガルダ教なんて邪気に満ちた人間を取り込んで勢力を拡大しつつあるわ」


「なら何で勇者は黙って黙認してるんだよ?!」


マリエルとムウの顔色が一気に暗くなって事情を話し始めた


「彼女は呪いによって戦えなくなったのよ…剣を持てば体が鉛のように重くなってね」


「じゃあ俺達はこれからも奴等の脅威に怯えて生きていかなければいけないってのか?」


マリエルが首を横に張るとある可能性を示した


「あの後彼女は結婚して子供を儲けたみたいなの…その子供が勇者の資質を受け継いでいればあるいは…」


僅かな希望だが彼等には充分勇気が湧く朗報であった


「僅かでは無いな…新たな勇者は存在している」


レイロウがそう力強く言い放った


「マジかよ?」


「間違いない…旅先で俺とリンダルト殿はその少年に出逢ったのだから…そしてしばらく共に行動していた」


「うおおおっ!お前達凄えな!勇者サマとも知り合いなのかよ〜」


アーノルドが興奮気味に鼻を鳴らした


レックスがレイロウにある事を聞いてみた


「で…彼は今何処に?」


「おそらく仲間と共に魔物討伐の旅をしていると思われる…いつかまた逢えると良いと思っているのだ」


アーノルドはレックスとレイロウの肩を抱くと気合を込めた


「それなら尚更…団長を復活させて活躍して貰わないとな!」


「復活じゃなくて回復な!まだ死んで無いし」


世界を平和に導く勇者の存在を確認した一同はリンダルトの回復を急ぐのだった


その様子を静かにディーナ姫が見守っていた


そしてこう願うのだった


リンダルト様が回復して勇者サマと再び逢えますように…私の元に戻ってくる事を…

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