第32話 レイロウの想い

「里を出たお前が戻って来なかった理由がわかった気がするな」


才蔵が徐にそう呟いた


「ん?ああ…里を出たは良かったのだが何処に行けばわからなくなってた時にリンダルト殿に出逢ったのだ」


葉隠れの里を出て武者修行の旅をしようと決意していざ行動に移したものの行く道に迷っていたレイロウ


「勢いのまま出たのは間違いだったかなぁ…」


そう呟いていると魔物に遭遇した


必死に応戦するが決め手にかけて追い詰められてしまった


俺はここで死ぬのか?


と思っていた時に魔物が姿を消した


目を凝らすと魔物の後ろに何者かが立っていた


若いというか幼さが残った少年が剣を振り下ろしていた


戸惑うレイロウに彼は声をかけて来た


「危なかったですね?お怪我はありませんか?」


笑顔でそう言う少年にレイロウはただ頷くばかりだった


木陰に腰を下ろして話していると彼も武者修行の最中なのだそうだ


「若いのに偉いんだな…」


「父上から言いつけでね…強くなって手伝いをする為に旅に出ました…同年代の人では修行にならないからもありましたが…」


その言葉にレイロウは急に自分が置かれてる立場を恥ずかしく思った


「何故そんなに思えるんだ?」


目をぱちくりさせた少年はこう言った


「いつか王国の為に前線で戦える剣士になるのが夢なんです…そして父上を超える!まだまだ駆け出しですがね」


少年は照れ笑いしながら夢を語った


「そうか…俺はそこまで考えてなかった…ただ強くなって見返したいばかりで…」


「それも立派な目標じゃ無いですか!どうやら僕達は似たような立場みたいですね」


レイロウは驚いた


たったあれだけの言葉でそこまで見抜く思考能力に…


そして彼の事をもっと知りたいと思った


「なぁ…良かったら武者修行の旅に同行させてくれないか?」


レイロウは思い切ってそう切り出した


すると少年は満面の笑みで握手を求めて来た


「こちらからお願いしたかったくらいですよ!僕はリンダルトと言います宜しくお願いします」


「ああ俺はレイロウだ…宜しくリンダルト殿」


固く握手を交わした2人は武者修行の旅を続けた



話によると彼の父親は王国の王宮騎士団長らしく憧れの的なのだそうだ


レイロウの父親は葉隠れの里の代表でお頭と呼ばれる人物…服部半蔵であった


里には双子の妹椿と牡丹とライバルで親友の霧隠才蔵が居る


他にも猿飛佐助や弥七など数多くの仲間が鎬を削っていた


そんな中で服部半蔵の息子という立場にプレッシャーを感じたのは事実だ


期待されて忍術の修行を重ねる中でこのままで良いのかと自分自身に問いかけた


そんな彼を見ていた父に武者修行の旅に出るように言われて現在…こうしてリンダルトと出逢いを果たした


一緒に旅をしていく中で彼が幼い頃に母親を亡くし姉の無惨な死に様を目の当たりにして来た事を知った


そんな境遇に面しても前向きに純粋に生きているリンダルトが眩しく見えた


そして共に旅を続けていく中で次第にリンダルトの側で彼を支えたいと思うようになっていった


リンダルトと共に武者修行を終えてファルデアン王国へ足を踏み入れた


賑やかな町に心躍るのを必死に抑えてレイロウは今後の事をリンダルトに話した


「なら父上に紹介するよ!旅先で出逢った仲間だって」


こうしてレイロウはエルドランと対面する事になった


大きな屋敷に招かれて中に通されると執事や侍女達が忙しなくしているのを目にした


そんな中…奥から出て来たエルドランは正に王宮騎士団長の風格に溢れていた


緊張するレイロウを温かく出迎えてくれたエルドランから驚きの話を聞いた


「陛下が城の護衛の為に必要な人員を集めているのだ…どうだろう…君も志願しないか?」


「え?俺がですか?余所者なのに良いのですかね?」


「陛下は最近忍者に興味を持たれているようなのだ…そんな時に君が現れた…これは運命的では無いかな?」


こうしてエルドランの紹介で国王に謁見する事になった


国王は気さくな人物でレイロウを気に入ってくれたらしく早速王女様の護衛に抜擢されたのだった


そして今日に至るのだった



「へぇ…そんな事があったのか…だからお頭にあんな手紙を寄越したのか」


「ああ…」


「そう言う事なら仕方ないな…」


「だから何としてもリンダルト殿を助けなければならないのだ」


レイロウは決意を新たにリンダルトの解毒作業を進めるのだった

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