第26話 王都襲撃と死闘

黄昏騎士団のメンバーはそれぞれのやり方でガルダ教の信者と対峙していた


力で押さえつける者


魔法で目眩しして翻弄する者


殺さない程度に痛めつけてから捕獲する者



そして陰で密かにその手伝いをしている者達も居た


サキュバスやインキュバスと呼ばれる夢魔達である


彼等が得意とするものは人間の精神に入り込み中から正気を吸い取り動けなくする事だった


こうして王都の中は次第に邪教の信者達の進行は食い止められていった



「どうやらバスクオムには後で礼を言わなければいけないようだな」



王宮の中ではエルドラン率いる王宮騎士達が奮闘していた


「間違えても殺すで無いぞ!峰打ちにして捕えるのだ!」


そのお陰か騎士達にも邪教の信者達にも犠牲者は今のところ出ていない



「王は無事か?私は上に行ってくる…後を頼むぞ」


エルドランは王の無事を確かめるべく王の間へ急いだ



その間にリンダルトは水路を通って王宮を目指していた


城の方からだろうか…鼠や猫などの小動物がこちらに向かって逃げてくるでは無いか



「なるほど…向こうが王宮のようだな…こんな事で方向が分かるとは…」



小動物をかき分けながら先に進むと登り階段が現れた


上から蓋がしてあるようだが、リンダルトはそれを破壊して地上へと登った



彼が目にしたのは王宮騎士が邪教の信者を峰打ちにして捕らえている姿だった



「父上らしい命令だな…姫の部屋はどの方向だったかな?」


そんな事を呟きながらリンダルトは先を急いだ



時折襲いかかってくる邪教の信者を薙ぎ倒しながら目的の部屋を目指す



勢いよく扉を開けると武装したディーナ姫が侍女と共に居た


「リンダルト様!来てくださったのですね」


ディーナ姫はリンダルトに駆け寄ると抱きついて来た


しかし…妙な違和感を感じたリンダルトはディーナ姫を引き離した


「お前は誰だ?」


そう問いただした



引き離されたディーナ姫の様子が変わっていく


「流石はリンダルトだ…私の変装に気づくとは…」



その姿は…ローブを身に纏った初老の女性だ



「ダイナレア!姫をどうしたんだ!返答によっては斬り捨てる!」



ダイナレアとはリンダルトの継母の名だ


「あはははは…そんなに姫が大事か?ならば私を倒してみるんだな」


そう言うと何やら薬を口に含み飲み込んだ


すると姿がおどろおどろしい魔物へと変貌した



「やはり邪神ガルバランダに支配されていたか…ならば容赦しない!貴様を倒して姫の居所を吐かせる!」


リンダルトは持っていた武器を構えると元継母である魔物へ斬り込んだ


鈍い音が鳴り響く


硬い鱗に包まれた肉体は傷つく事なく僅かに削れただけだった


「そんななまくらで私が傷つく訳が無いわ!少し削れたのはお前にそれだけ力があるという事だけど…甘い!」


尻尾で薙ぎ倒されたリンダルトだが何度も立ち上がり攻撃を続けた


「無駄よ!何度やっても無駄なんだから〜諦めの悪い男ね!本当に父親そっくりだわ」


「何?」


「冥土の土産に教えてあげるわ…ラヴァーヌを殺した事を問いただされた時にエルドランも私に切り掛かって来たのよ!だけど返り討ちにしてやったわ!」


「その後にインキュバスに襲われるとは思わなかったけど…」


リンダルトはそれを聞いてこう怒鳴った


「それは父上がお前を油断させる為だ!伯父上の攻撃が本命だよ!」


そう言われて思い出したようにため息をついた


「そのようね…でも私をあの時に殺さなかったのは間違いだわ〜今こうしてあんたが窮地に追い込まれているんですもの!」


そう言われながらもリンダルトの目は輝きを失って無かった


そして…


ズドン!


剣が突き刺さる音が響いた


「え?何これ…どういう事よ…なんで私の身体になまくら剣が突き刺ささってるのよ〜!」


リンダルトはニヤリと笑みを浮かべるとカラクリを説明した


「どんなに硬くても少しずつ削れば鱗の下に到達するんだ…そして皮膚に達した時に力を込めて突き刺したんだよ!」


そして更に力を込めて剣を深く突き刺し貫いた


ギャアアアアアアア!


断末魔と共にダイナレアは人間の姿に戻った


「さぁ…ディーナ姫は何処だ?」


「ふふふふふ…行ってもお前は何も出来ないわ…姫なら王の間に居るわ…今頃は…」


リンダルトはダイナレアにトドメを刺すと王の間に向かって走り出した














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