第11話 黄昏騎士団の結成秘話

「俺達が団長に出会ったのは今から6年くらい前だったよな〜」


「ええ…アレは衝撃的でしたね〜」



〜6年前〜



ファルディアン王国



賑やかな城下町に昼間は定食屋、夜は酒場として経営している店「リトルガーデン」



王宮騎士も通うその店でちょっとした騒動が起きていた



その頃はアーノルドもレックスも腕に覚えはあるもののどの騎士団にも所属せずにただ獲物を求めて日々フリーで魔物を討伐していた



その2人が「リトルガーデン」で言い争いを始めていた



「あん?なんて言ったよテメェ!」


「何度でも言ってやるよ!斧持って暴れ回るだけの脳筋のドワーフ風情が!」


「そう言うテメェだって肉体を武器にするしか脳がねぇじゃねぇかよ!」


2人とも酒癖は良い方ではなくならず者扱いされていた



「ちょいとアンタらこんな所で喧嘩しないでおくれよ〜店の備品壊さないで欲しいんだけど」



「んん?おっと…これはまずいな…ここで暴れたら店に迷惑かけちまう」


「そうですね…では店の外で続きをしましょう…ここの美味い料理や酒が飲めなくなるのは私にとっても死活問題ですので…」



アーノルドとレックスは町外れの広場で喧嘩の続きをする事にした



2人を追うようにフードを深く被った怪しい男が気づかれないように後を付けて行っていた



「さて…ここなら余計な邪魔は入らねぇな」


「そうですね…では素手での喧嘩をやりましょうか」



そして何処からか聞こえた破裂音を合図に2人は拳で戦いを始めた



アーノルドが右ストレートを繰り出すとカウンターを狙ってレックスも右拳を繰り出した


結果は相打ち


身長差があり筋肉の付き方も違う2人だが素手での戦い方は驚くほど類似していた


そのせいかなかなか決着が付きそうになかった



「なかなかやるじゃねぇか…」


「ええ君こそ…」



2人とも長期化する戦いに疲れが見え始めた



そこに割って入ったのが2人の様子を伺っていた怪しげなフードの男だった



「それまで!この戦い僕が預かりますよ」



「あん?なんだテメェは?邪魔する気か?」


アーノルドが拳を繰り出しフードの男に殴りかかろうとしたがするりと交わされてしまった



それを目の当たりにしたレックスもフードの男に攻撃しようとした



レックスの攻撃も簡単に交わされてしまう



「え?なんだこの男?私達の攻撃を交わした?信じられません!」



するとフードの男は不敵な笑みを浮かべるとこう言い放った



「悪い事は言わない…2人同時にかかって来なよ!まぁそれでも僕には傷1つつけられやしないだろうけどね」



その言葉に流石にカチンと来た2人は同時にフードの男に襲いかかった


攻撃は交わされてアーノルドとレックスは相打ちになってしまった



「イッテェ…テメェどこ見てやがる?」


「そう言う君こそ!え?アイツどこに行った?」



2人はフードの男を見失っていた



次の瞬間


アーノルドとレックスは背後から攻撃を喰らってしまった



「ぐあっ!」

「うわっ!」


フードの男の動きを捉えられず防戦一方になっていた



「はぁはぁはぁ…マジかよ?何だよコイツ」


「ううう…私達2人を相手にして息1つ乱してないなんて」



「まだやるかい?お2人さん?」



「いや…これ以上やってもアンタにゃ勝てないだろうな」


「同感です…これ以上は時間の無駄でしょうね」



圧倒的な実力の差を見せつけられた2人は更に驚きの声を上げる事になる


何故ならフードの男の正体が18歳の自分達より若い男だったからだ



そして次の瞬間更に驚きの言葉をかけられた



「思った通りだ…君達はその辺の王宮騎士よりも強いな…どうだろう…僕と一緒に騎士団を結成してくれないか?」



「は?騎士団だと?何でまた…」



「理由は深く聞かないでくれよ…君達のような実力者をただのならず者で居させるのは勿体無いと思ってね…どうだろう?」



「ここは申し出を受ける方が良いでしょうね…私達にとっても悪い話では無いみたいなので」



「確かにな…分かったよ、俺達でよけりゃ騎士団結成に協力してやるよ!但し…1つだけ条件がある」


「条件とは?」


アーノルドとレックスは顔を見合わせて頷くと口を揃えてこう告げた


「アンタ(君)が団長になってくれるなら引き受ける」


それを聞いたフードと男は笑顔を見せた



「ああ…改めまして宜しく。僕はリンダルトだよ」


「俺はアーノルドだ!宜しくな」


「私はレックスと言います。宜しくお願いします」



こうして騎士団を結成する事になった3人は騎士団結成を受理してもらう為に王宮へ向かうのだった



「なぁ騎士団の名前はどうするんだ?」


「確かに…決めておかないと不便ですよね」



リンダルトは空を見上げてこう告げた



「この黄昏の空の下で結成された騎士団だから『黄昏騎士団』で良いんじゃ無いかな?」



アーノルドとレックスにも異論は無く騎士団の名前は『黄昏騎士団』になったのだった



王宮へ向かう道中アーノルドとレックスは騎士団結成の為の条件が最低3人以上のメンバーが必要である事を知った



「こんな時間に城の中に入れるのかよ?」



アーノルドの疑問はすぐに払拭された



門番がリンダルトを見るや否やすぐさま客間に通されたからだ



「お前…王宮に顔パスなのか?」


「まぁね〜」


王宮の中に入ってもすれ違う人々がリンダルトに頭を下げて通って行くのを目の当たりにした



客間でもアーノルドとレックスは落ち着かない様子だったがリンダルトは出されたお茶と菓子を味わいながら慣れた様子だった



しばらくすると王の間に通された3人に国王から労いの言葉がかけられた



「おおリンダルトよ…其方の騎士団結成の願い喜んで受理しよう…更なる活躍を期待しておるぞ!」



その後ディーナ姫がやって来てリンダルトと親しげに話してるのを見たアーノルドとレックスはますます彼の事を凄い人物であると思ったようだ



「俺達は凄い奴の部下になったようだな」


「ええ…目眩がしそうですよ」



2人の会話を聞いたリンダルトはこう告げた



「何言ってるんだ!部下では無くて同じ騎士団の仲間だからな?忘れるなよ」



「は…はい団長!」



○○○○○○○



「へぇ〜兄様らしい話だね!」



「その後だよ、団長がオーガキラー(巨人殺し)って呼ばれてるって知ったのは!」



「その2年後に黄昏騎士団の活躍の噂を聞きつけたマリエルとムウが仲間に加わったんだよな」



「そうだったね〜始めて団長を見た時はこんな弱そうな男がオーガキラーなのかって驚いたけどね」


「でも私は団長のオーラを見て敵に回したく無いとは思いましたよ?」


「え?そうだったの?ムウったら何で言ってくれなかったのよ」


「だって私が言ってもなかなか信じてくれないからだよ〜自分の肌で感じないと納得しないからねマリエルは」



マリエルとムウは見た目よりもずっと歳上で30年ほど前に勇者の仲間として活躍していた頃もあるらしい



「なかなか興味深い話だな…正に能ある鷹は爪を隠す…だな」



そう言いながらナーガとセリスは納得している様子だった



















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