63話 黒幕の新たな標的

 王都ダングレイに存在する英雄ヒロの住む豪邸。

 英雄ヒロが職務を行う執務室。

 立派な鎧と豪華なマントを身にまとった長身で金髪の男、英雄ヒロが豪華な玉座のような椅子にどかりと座り込んでいた。


 英雄ヒロは部下の男から隣町であった事件の結果を聞き、動揺を隠しきれずにいた。


「リカラが……死んだだと!?」


 部下の男が渡した調査書には事の顛末が書かれていた。


「この俺の下した命令を失敗するだけならまだしも……

 配下の者や冒険者たちを引き連れ襲撃者と対峙するが全て返り討ちにされ、魔竜を召喚したあげく、配下の者も魔竜も全て屠られ、挙句の果てにはここに届けるはずだった秘宝を全て奪われただと!?

 この俺の顔に泥を塗るとは……あいつは一体なにをしていたのだ!!」


 英雄ヒロは怒りのあまり、大きなヒビが入る勢いで職務用の机に強く拳を打ち付けた。


「このまま舐められっぱなしでいられるか!この、復讐してやる……!」

「落ち着かれてください!

 現在町は魔物に占領されております。

 その数も規模も全く情報がつかめておりません。

 無闇に兵を動かしては返り討ちにされる危険性があります」

「くっ……!」


 部下の男が気を静めようと現状の状況を詳しく伝えると、英雄ヒロは拳を握りしめ震えながらも冷静さを取り戻し始めた。


 ヒロは椅子に座り直し、再び現状について問い始める。


「結局、前回魔法学園での計画を阻止した人間の正体は分かったのか!?」

「詳しいことは調査中ですが……リカラ様を殺害した人間と同一犯である可能性が高いと。そして……申し上げにくいのですが……」


 部下の男は話の途中でばつが悪そうな顔をして顔をそむける。


「かまわん、言え」

「リカラ様を殺害した者は、人間でありながら自らを魔王と名乗っているらしいです」

「魔王……だと!?」


 英雄ヒロはその単語を聞き衝撃のあまり思わず机を乗り上げる。


「まさか、魔王が復活したとでもいうのか!?

 早すぎる、魔王を討伐してまだ15年しか経っていないのだぞ!?」

「落ち着かれてください。あくまで噂です。

 それに、どこにも魔王が復活したという調査結果はありません。

ただの妄言という可能性もあります」

「だが、魔竜とリカラを屠ったほどの実力者ならば、魔王クラスの実力でもなければ到底不可能であることは間違いない。

 問題は、この俺の計画を止めておきながら、英雄ではなく魔王を自称していることだが……」


 英雄ヒロは立ち上がるとまで歩いていき、町を眺めながら顎に手を当て熟考した。


(まさか、この俺が偽の英雄だと知った上で、それを屠る存在として魔王を自称している……?この俺に対する遠回しの宣戦布告だとでもいうのか……!?)


 英雄ヒロは怒りのあまり今度は壁を左拳で強く打ち付ける。


「ここまでずっと順調だったというのに……どうしてこんなことが起こる?まさか、あの予言は本当なのか?」

「予言というのは、魔剣の国バルムンクで語り継がれているという、魔王を超える災厄が訪れるという予言のことですか?」


 部下がそう聞き返す。


「魔王を名乗る人間がこのタイミングで現れた、そして魔剣の国で語り継がれている予言の時期、これは一致している。そうだろう?」


 窓の方に歩いていき、しばらくの間考え込んだ英雄ヒロは部下の方に振り返る。


「魔法学園の次にリカラを狙ったということは、相手は明確にこの俺に対して敵意を持って動いているに違いない。

 そしてこの俺の戦力減退、及び評判を陥れることをするべく動いている」


 英雄ヒロは壁に貼られているこの国の地図に目線を向ける。

 そしてその国の東側に描かれている小さな国に目をやる。


「魔剣国バルムンクの魔城の件はどうなっている?

 あれさえ奪えば俺の計画に大きく近づける」

「既に多くの配下を送りこんでおります。

 ヒロ様のご命令通り、魔導士エウロナ様を始めとしたロキシス教団の幹部の方々に任務にあたってもらっています」

「そうか、奴らがいるのなら今度こそ失敗はないだろう。

 だが、油断するわけにはいかん。

 その魔王を名乗る人間は遠くない未来、この俺を狙うだろう。

 本気でこの俺を倒そうとしている奴がいるとすれば、戦いの備えをしなければならない。

 各地にいる我が配下たちに早急に王都に集まるように指示を出せ。

 そしてなにより、早急に例の計画を進めろ!そのためにも、より多くのスキル、魔導書、魔剣をかき集めろ!」

「了解しました。

 英雄ヒロ様の忠実なる僕である我々は貴方の手と足となり動きます。

 この世のスキル全てをその手中に収める、その崇高なる目的のために」


 部下たちは英雄ヒロの方にひざまずき、自身の忠誠を示した。

 そして部下たちはその命令を受け、静かに執務室を後にした。


「よくも俺の顔に泥を塗ったな……!この報いは必ず返してやる」


 英雄ヒロは報告書を握りつぶし、顔も名も知らぬ魔王に対して復讐を誓ったのだった。


****************


※作者コメント

二章 冒険者ギルドを乗っ取る編 は今回で終了となります!

ここまで読んでくださってありがとうございます!


もし面白いと思った方は評価の方よろしくお願いします!


二章に関してですが自分でも見返して描写不足や矛盾などを見つけたら修正していくつもりなのでもしかしたら展開の変更などもあるかもしれません(大規模な変更が行われた場合はそこも報告する予定です)


その他にも後で見返せるようにキャラクターリストなども追加予定です!


第3章 魔王城を手に入れる編 の更新日は未定ですが、

現在三分の二くらいまでは書けているので、更新の目途が立ち次第、近況ノートやTwitter(X)の方で連絡をさせていただきます!


あと何話かはおまけエピソードを投稿予定です。

そちらの方も楽しんでいただければ幸いです。

これからも「大虐殺魔王」をどうかよろしくおねがいします!!

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